外国人技能実習制度|介護職の追加-平成29年11月1日

介護事業所での外国人技能実習制度

 

平成29年11月1日より外国人技能実習制度に介護職が加わる。

第一弾としてベトナムから数百人を受け入れる。このコラムでは外国人技能実習制度の概要と介護職の追加について解説する。

 

《目次》
1.外国人技能実習制度とは
2.介護職が外国人技能実習制度に追加された経緯
3.介護職技能実習制度の概要
4.まとめ

1.外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度は平成5年に始まった制度である。発展途上国への技術移転を目的として外国人を受け入れ技能習得を図る。平成28年末時点で23万人の外国人が実習生として技術習得に励んでいる。

一方で外国人実習生を安価な労働力として確保するという、本来の制度趣旨に反する受け入れが横行した。平成24年の法改正で労働法の適用範囲が厳格に定められたとはいえ、それまでは一部の地域で劣悪な労働環境から逃げ出す事例が多発した。今後は受け入れ先事業所に対する監視体制の強化が求められている。

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2.介護職が外国人技能実習制度に追加された経緯

厚労省の推計では2025年、全国の介護事業所で職員が38万人不足するという。高齢社会がピークを迎えるタイミングで日本は介護職不足という大問題を抱えているのである。

そこで平成29年11月より、外国人技能実習制度に「介護職」を加えることが決定した。同時に受け入れ先事業所に対する監視強化のために、「外国人技能実習機構」を設立し、労働問題や人権保護に当たる。

3.介護職技能実習制度の概要

介護職版、外国人技能実習制度の概要は次のとおりである。

①移転対象となる業務内容・範囲

・必須業務=身体介護(入浴、食事、排泄等の介助等)
・関連業務=身体介護以外の支援(掃除、洗濯、調理等)
・周辺業務=その他(お知らせなどの掲示物の管理等)

②必要なコミュニケーション能力

《1年目》 基本的日本語
《2年目》 日本語日常会話

③公的評価システム

《1年目》 指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践できる
《2年目》 指示の下であれば、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できる
《3年目》 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できる
《5年目》 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践できる

④実習実施機関

・介護福祉士国家試験の実務経験対象施設(訪問系サービスは除く)
・設立後3年を経過している機関

4.まとめ

労働力人口の減少に伴い、海外人材の確保は避けては通れない道である。その一方で介護分野ではサービスを利用者(高齢者・障害者)とのコミュニケーション、尊厳の確保という重要な問題が内在する。日本語だけでなく、日本古来の文化に外国人実習生が触れる事により、本件取り組みが成功することを願ってやまない。

 

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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