介護・障害福祉事業の事前協議-建物要件

デイサービス、就労継続支援A型B型、グループホームなど、いわゆる「施設系」と言われる介護・障害福祉事業の新規開業には、本申請の前段階で管轄自治体との「事前協議」が求められる。
このコラムでは事前協議の項目の中でも特に「建物要件」について、これから開業する方のために詳しく解説する。
《目次》
1.介護・障害福祉事業の事前協議は何のため?
2.事前協議が必要な事業
3.建築指導課との相談結果を明示
4.都市計画課との相談結果を明示
5.消防署との相談結果を明示
6.まとめ
1.介護・障害福祉事業の事前協議は何のため?
介護・障害福祉事業で求められる事前協議。本申請自体の期限は、指定(営業開始)月の約1か月半前で設定している自治体が多い。
事前協議は本申請の1カ月程度前までに済ませることが推奨されている。
事前協議なしに本申請を行うと、根本的な問題が原因で申請受付がなされず、賃貸契約や内装工事が無駄となる可能性がある。
事前協議は一種の「本申請の部分的な保証」であると言えるのだ。※指定(営業開始)の保証ではないことに注意
2.事前協議が必要な事業
事前協議が必要な事業としては主に次の通り。ご参照されたい。
【介護保険】通所介護、第1号通所事業
【障害福祉】生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型B型)、共同生活援助(グループホーム)
【障害児支援】児童発達支援、放課後等デイサービス
事前協議で最も留意すべき事項が、「建物要件」に関する項目だ。高齢者・障害者・障害児といったいわゆる災害弱者を受け入れる施設であるため、厳しい要件が設定されている。
ここからは主に「建物」についての留意事項を開設する。事前協議には次の部署との相談結果を明示する必要がある。
3.建築指導課との相談結果を明示
事前協議では建築確認済証と検査済証の有無が問われる。
建築確認済証は設計自体が建築基準法に準拠していることを証する書面だ。一方の検査済証は建物が合法的に建築されたことを証明する。
2つの書面があることで建物の合法性、耐震性能が証明される訳だが、この2つの書面がない場合でも、当事務所では事前協議と本申請を通すノウハウを保有している。お困りの方は一度ご相談を。
また建築基準法第6条1項の規定により、
用途変更後に特殊建築物(介護・障害福祉事業はこれに当たる)となり、その使用床面積が100㎡を超える場合
には、新たに建築確認(用途変更)が必要となる。この部分についての相談結果を事前協議で明示する必要があるのだ。ようやく探し当てた物件面積が仮に150㎡の場合、通常なら建築確認(用途変更)が必要となり、建築士に対する報酬と追加の期間が必要となる。
しかしこの場合でも、用途変更を不要とする合法的な対処方法は存在するため、一度当事務所にご相談されたい。
4.都市計画課との相談結果を明示
都市計画課との相談を必須としていない自治体もあるが、事業開始後のリスクヘッジを考えると、是非とも都市計画課との相談をお勧めする。
相談内容は、都市計画区域内の建物用途制限に引っかからないかどうかだ。各都道府県では、都市計画において開発対象地域を
①市街化区域
②市街化調整区域
に分けている。市街化調整区域は市街化を抑制すべき地域であるため、建物は原則として建築できない。
例外的に建物が建築されている場合はあるが、それを介護・障害福祉事業の施設に転用できる可能性は極めて低い。
一方の市街化区域は12の用途地域が定められる。
例)第一種低層住居専用地域、商業地域、工業地域 etc
この中で、「工業専用地域」はどの自治体でも開業することは不可能だと思われる。
その他11種の用途地域では各自治体の条例等の確認が必要となるため、都市計画課での相談をお勧めしている。
介護・障害福祉部署では問題なく指定(営業許可)が出ても、営業開始後に都市計画課から思わぬ指摘がなされる可能性があるためだ。
5.消防署との相談結果を明示
最後に管轄消防署での相談だ。消防署ではこれから開業しようとする事業者に対して、消防法上必要な設備設置の指導がなされる。
本申請までにその指導事項をクリアしつつ、「防火対象物使用開始届」を提出する必要がある。防火対象物使用開始届は、新たに建築物を使用する事業主を明確にするため、消防署への届出を行うものだ。
6.まとめ
以上のように、介護・障害福祉事業の事前協議の前段階で、建築指導課・都市計画課・消防署において諸問題を明確にしておく必要がある。整理すると各部署の役回りは次の通りだ。
介護・障害福祉担当部署・・・事前協議と指定(営業許可)
建築指導課・・・建物の合法性の確認
都市計画課・・・当該地域での建物建築、使用の合法性の確認
消防署・・・消防設備の確認
施設系開業の場合は、以上で説明した建物問題が最重要となるため、お困りの方は是非一度当事務所の無料開業相談のご利用をお勧めする。
(9~21時受付 0120-60-60-60)
【この記事の執筆・監修者】


- (いのうえ ごう)
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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