介護・障害者福祉事業の法人の設立形態を決定しよう

1.まずは消去法で法人の設立形態を絞り込もう

別稿でご紹介した、介護・障害者福祉事業所の7つの設立形態

この中でも設立可能性の低い4つの法人形態を消去法により、除外することを検討してみます。

2.合名会社を除外する

合名会社を一言で言うと、「ほとんど個人事業と同じ」。つまり、経営に関与する役員が全員無限責任を負います。

無限責任とは、事業で負債を負ったとき、個人財産を投げ打って弁済する責任のことです。

3.合資会社を除外する

合名会社との相違点は、

無限責任社員1名以上、有限責任社員1名以上

という複合形態で法人設立が出来ることにあります。

しかし、後述する合同会社の制度が出来たために、新たに合資会社を設立するメリットはほとんどないでしょう。

4.NPO法人を除外する

NPO法人が事業運営に適さない最大の理由は、法人の存在自体が行政の監督下に置かれる点です。つまり、

その他の法人・・・介護、障害者福祉事業の行政指定のみ

NPO、社会福祉法人・・・介護、障害者福祉事業の行政指定+法人の存在自体の行政認証

そのため、毎年の各行政庁への提出書類が膨大な数になります。非営利(ボラインティア)的に活動するならまだしも、収益ビジネスを目指す場合は大きなネックとなります。

5.社会福祉法人を除外する

7つの設立形態の中では、最も社会的信用度が高い社会福祉法人ですが、人的要件・財産的要件(例:資産1億円)のハードルが厳しく、脱サラ起業での設立はほぼ不可能でしょう。

また、社会福祉法人の運営も、NPO法人同様行政の監督下におかれるため、様々な制限が課せられます。

6.株式会社、合同会社、一般社団法人の3社択一

上記の通り、合名会社・合資会社・NPO法人・社会福祉法人の4つを消去法で除外すると、残るは株式会社・合同会社・一般社団法人の3つとなります。

介護・障害者福祉事業に限らず、現在の日本の法律下で起業する場合、この株式会社・合同会社・一般社団法人の3社択一となるのが一般的です。

以下、「介護・障害者福祉事業の法人設立形態一覧」を閲覧しながらお読みいただけると分かりやすいと思います。

 

株式会社・合同会社・一般社団法人を比較しよう

1.一般社団法人は株式会社に移行できない

合同会社は将来、株式会社への移行が可能であり、一般社団法人は不可となっています。

世間一般で認知度の高い「株式会社」を名乗ることに一定のメリットがあると感じる方は一般社団法人を避けましょう。株式会社への移行の途が閉ざされます。

逆にクリーンで公益的なイメージを持つ、「一般社団法人」が良いと考える方は、一般社団法人を選択しましょう。

2.一般社団法人に最低資本金は不要

現状の会社法では、株式会社・合同会社とも、最低資本金1円以上で設立が可能です。

一般社団法人には、そもそも資本金という考え方自体がありません。

しかし、実際に介護・障害者福祉事業を開始するにあたり、どのような事業内容であっても最低限の初期投資は必要でしょう。

一般社団法人では、「役員からの貸付(役員借入金)」という名目で財務諸表に表示されます。資本金との違いは、法人にお金がたまったときに、それを引き出されるかどうかの点です。

3.合同会社の設立費用が最も安い

介護・障害者福祉事業の法人設立形態一覧に記載のあるとおり、設立時にかかる費用を概算すると次の通りとなります。

株式会社 202,000円 ※
合同会社  60,000円 ※
社団法人 112,000円

※通常は定款印紙税として+40,000円必要ですが、当事務所では電子定款を使うため不要です。

一般的な法務事務所ではこれにプラス、会社設立報酬として5~15万円の報酬が必要ですが、当事務所の介護事業支援パックをご利用の場合、法人設立報酬は0円です。

4.出資者と経営者の区別

日本における、そもそもの法人の始まりは、坂本龍馬の亀山社中だと考えられています。今の三菱グループの原型です。

海運業に精通した諸藩浪人(経営者)と新規事業で儲けを得たい有力藩(出資者)の協力により、亀山社中は成立しました。

株式会社、合同会社、一般社団法人において、この出資者と経営者の考え方を整理すると次のようになります。

株式会社・・・出資者と経営者を明確に区別できる(区別せずともよい)
合同会社・・・出資者と経営者は一致しなければならない
社団法人・・・そもそも出資して利益を得るという考え方自体がない ※

※一般社団法人における出資者(呼称としては社員)は、事実上一般社団法人を支配する社員総会への出席権限をもちます。創立者の理念に賛同し、創立者(社員総会)の承認を得ることで、社員の権限を得るわけです。

5.一般社団法人のみ設立時に2名が必要

株式会社、合同会社、一般社団法人ともに、事業を運営する役員は1名でよいとされています。しかし、会社を興す発起人としては一般社団法人のみ2名以上必要です。親族でも可です。

6.一般社団法人のみ収益課税という選択肢がある

株式会社、合同会社、一般社団法人ともに、法人税の課税の方式は変わりません。特ににどの法人を選択したからとって、税制面で有利になることはありません。

しかし、実は一般社団法人の中では、次の通り2種類に課税方式が分かれています。

①非営利性が高い一般社団法人・・・課税される所得と課税されない所得が分かれる

②その他の一般社団法人・・・通常通り全ての所得に課税される

①非営利性が高い一般社団法人の要件は非常に厳しいため、設立時に法人の運営方法からして十分に検討する必要があります。

その他の項目では、株式会社、合同会社、一般社団法人それぞれに若干の差異はありますが、設立後の致命的な問題点にはなりません。

十分に検討して、法人設立形態を決定しましょう。

 

労務専門コラム 介護・障害者福祉 設立編

>>①介護・障害者福祉事業所の法人設立手続き
>>②会社設立形態 法人の種類と比較一覧表
>>③設立法人の種類を比較しよう
>>④会社設立~会社名称、本社住所、事業目的を決めよう
>>⑤会社設立~決算月、資本金、出資者、役員を決めよう
>>⑥会社設立後に必要な届出手続き
>>⑦障害者作業所 就労移行支援・就労継続支援(A型B型)
>>⑧就労移行支援、就労継続支援(A型B型)の事業者要件
>>⑨雑記 宗教法人と非営利型社団法人の比較
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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
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