①介護保険基礎 制度を取り巻く体制
■介護保険の目的を第1条から考察
2000年に施行された介護保険。本稿執筆時点(2015年)ですでに15年の歳月が流れました。
本編「介護保険のしくみ」編は、介護保険制度をイチから理解したい方を対象に記載しますが、まず介護保険の仕組みを考える前提として、介護保険法の立法の趣旨から分析して見ましょう。
以下に介護保険法第1条(目的)を掲載します。
(条文は句読点が少なく読みにくいため、意味を損なわないよう分解しました)
介護保険法第1条 (目的)
介護保険法の目的は、国民の保健医療の向上と福祉の増進です。
加齢による心身の変化で病気になり、介護が必要となった場合を考えてみてください。
まず入浴、排せつ、食事の介護が必要ですね。
また体の機能を維持したり回復のための訓練、看護、療養管理、医療も必要となります。
そのような方々が尊厳を保ち、個々の方々の持っている能力に応じた自立生活の支援。
行政はそれを目的とした保健医療サービスと福祉サービスを行います。
冒頭で目的に掲げた「国民の保健医療の向上と福祉の増進」はこのことです。
それを公的保険でカバーします。国民の共同理念です。
法律では以上の内容を具体的に示します。
(汗)
9つの文章に分解しましたが、実際の条文では読点がなく、1文です。
どうして法律条文はこうも読みにくいのか・・・。
■介護保険の保険者は?
さて介護保険が「保険制度」であるからには、保険者と被保険者の考え方が重要となります。
つまり、
保険者・・・保険料を集め、事が起こったときに保険サービスを実施する義務者
被保険者・・・保険料を納め、事が起こったときに保険サービスを受ける権利者
この稿ではまず保険者(サービス実施の義務者)から考察します。介護保険の保険者は、市町村(特別区)です。以下市町村と呼び解説を続けます。
国は体制の確保について責任を負うのみです。都道府県は運営に対する援助の責任を負うのみです。つまり、介護保険制度サービス提供は、最小行政単位である市町村が義務を負うのです。
■介護保険の財政・費用負担の仕組み
次に介護保険制度を運営するに当たり、国・都道府県・市町村・被保険者がどのように費用負担しているかを確認しましょう。
居宅型介護サービスに関する費用負担
税金(50%) | 保険料(50%) | |||
---|---|---|---|---|
国(25%)※ | 都道府県(12.5%) | 市町村(12.5%) | 1号(21%) | 2号(29%) |
施設型介護サービスに関する費用負担
税金(50%) | 保険料(50%) | |||
---|---|---|---|---|
国(20%)※ | 都道府県(17.5%) | 市町村(12.5%) | 1号(21%) | 2号(29%) |
概要を捉えましょう。半分が国民の税金・半分は40歳以上の人(被保険者)が納める保険料です。国・都道府県・市町村がそれぞれの割合で財政(私たちの税金)から費用を支出します。
しかし、実際の制度を運営する市町村には財政的な体力に差があります。そこで、国が支出する部分(※)については、各5%の割合で調整交付金が含まれています。調整交付金によって、地域差を解消するのが狙いです。
■介護保険の実施計画
超高齢社会を迎えた介護保険分野は、日々の財政チェックと事業の計画を見直し続ける必要があります。
そこで、国(厚生労働大臣)が策定する基本指針に基づき、都道府県と市町村はそれぞれ次の頻度で計画を見直し続けなければなりません。
都道府県・・・介護保険事業支援計画(3年ごと)
市町村・・・・介護保険事業計画(3年ごと)
3年ごとに中期計画を見直しながら、事業を運営するというフレキシブルな制度となっているわけです。制度ができて日が浅いことと、少子高齢化が急速なスピードで進んでいるのが理由ですね。
■介護保険体制の関係図
最後に介護保険体制を取り巻く関係者・組織を図にまとめましたので参考にしてください。
■労務専門コラム 介護保険のしくみ編
>>①介護保険基礎 制度を取り巻く体制
>>②介護保険基礎 要介護状態と被保険者
>>③介護保険基礎 要介護認定
>>④介護保険基礎 介護保険サービスの種類と名称
>>⑤介護保険基礎 介護事業者の指定申請
>>⑥介護保険基礎 地域支援事業
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【この記事の執筆・監修者】

- (いのうえ ごう)
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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