処遇改善加算とは?申請手続きはいつまでに?《介護・障害福祉》

介護障害福祉事業における処遇改善加算。
毎月のサービス単位数に、訪問介護なら約13%、デイサービスなら約6%、障害者福祉作業所なら約5%が加算される仕組みだ。
介護・障害福祉事業を専門にサポートする当社の顧問先では、ほぼ100%の事業所が処遇改善加算を受けている。このコラムでは処遇改善加算の仕組み、申請手続きについて、初めての方にも理解できるように詳しく解説する。
《目次》
1.処遇改善加算とは?その仕組み
2.処遇改善加算の申請手続き、年間業務
3.介護・障害福祉分野の業種別加算率(平成30年)
4.まとめ
1.処遇改善加算とは?その仕組み
政府は現在、介護・障害福祉分野の賃上げを目標に、「処遇改善加算」制度を実施している。月給ベースで各従業員の賃金を1万円アップするのがねらいだ。
平成23年までは、「介護職員処遇改善交付金」の名称で交付されていたが、平成24年より「処遇改善加算」と名称が変更され、介護保険サービスに組み込まれた。
ただし、全ての介護・障害福祉事業者に自動的に交付されるわけではなく、事業者側に一定の取り組みを求めている。
その取り組みを大まかに言うと次のようになる。
ア)どうすれば役職・等級が昇進するか、その条件を明確にし、
イ)その役職・等級ごとでの賃金制度を定め、
ウ)全従業員に書面で公表すること
介護・障害福祉事業の指定手続きに加えて、人事制度・就業規則が絡む問題となるため、当事務所のように行政書士と社会保険労務士の双方が在籍する事務所が専門となる。
(上記ア~ウについては、紙面の都合上割愛せざるを得ないが、通常は当事務所主導で設計している)
これらの仕組みを定めると、冒頭で述べたように一定の割合でサービス単位が加算されるようになる。
当事務所の顧問先で約200万円の介護保険請求をする訪問介護事業の例では、毎月25万円程度の処遇改善加算を受け取ることできている。
受け取った処遇改善加算額は、年度内に現場従事者に全て(厳密には+1円以上)還元する必要があることに注意が必要だ。つまり、会社に貯蓄することは出来ないのである。
その反面、現場業務に従事するいわゆる「役員」に対しても処遇改善加算額を交付することが可能だ。役員報酬は税法上、年1回の改定しか出来ないが、上手く計画していけば、代表者やその他役員を含めた賃上げを行うことができるのである。
2.処遇改善加算の申請手続き、年間業務
処遇改善加算の適用を受けるためには、適用希望月の2カ月前に指定を受けた管轄自治体へ書類を提出する必要がある。
一度処遇改善加算の適用を受けた事業者も、毎年4月に改めて適用を受けなければならない。この場合は毎年2月が提出時期となる。
処遇改善加算の適用を受けた後は、毎年年度の終了(3月)に合わせて、その年の7月を期限として実績報告を提出する義務が生じる。国から給付された処遇改善加算額を、どのように対象者に分配したかを詳しく報告するのが目的だ。
この報告では「人別の処遇改善交付額」を記す必要があるため、日々の業務の中では次の点を注意する必要がある。
ア)給与明細項目を細分化する場合、どの明細項目が処遇改善手当に該当するか明示する
イ)基本給の昇給を行う場合、処遇改善実施前と後の比較できるように管理しておく
ウ)役員報酬の場合も、例えば「基本役員報酬」と「処遇改善役員報酬」などと区別する。
新規または毎年4月の認定を受ける場合、人事制度・賃金制度・昇給(キャリアパス)の仕組みを書面添付しなければならない。
翌年3月には年度の集計を行い、7月の実績報告で上記ア~ウに基づいて、
「人別の処遇改善交付額、およびその合計」>「受給した処遇改善加算額」
となっていることを管轄自治体に書面で報告するのである。
3.介護・障害福祉分野の業種別加算率(平成30年)
平成30年の主要な介護・障害福祉事業の処遇改善加算率を表にまとめる。(単位%)
当事務所の支援の元では、原則として加算Ⅰを取得している。
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ | 加算Ⅴ | |
訪問介護 | 13.7 | 10.0 | 5.5 | 加算Ⅲで 算出した 単位×0.9 |
加算Ⅲで 算出した 単位×0.8 |
通所介護 | 5.9 | 4.3 | 2.3 | ||
居宅介護(障害) | 30.3 | 22.1 | 12.3 | ||
重度訪問介護(障害) | 19.2 | 14.0 | 7.8 | ||
就労移行支援 | 6.7 | 4.9 | 2.7 | ||
就労継続支援A型 | 5.4 | 4.0 | 2.2 | ||
就労継続支援B型 | 5.2 | 3.8 | 2.1 | ||
グループホーム | 7.4 | 5.4 | 3.0 | ||
生活介護(障害) | 4.2 | 3.1 | 1.7 |
4.まとめ
処遇改善加算制度の全体像について、ご理解いただけただろうか。
莫大な国家予算が投入されている制度であるため、その仕組みは実は非常に複雑であり、事業所ごとの状況に応じた制度設計の実施が求められる。
開業後の年数が浅い事業所の場合、それらの制度設計を独力で行うことも、法改正について行くことも極めて困難である。そのような状況に対して、当事務所では介護・障害福祉事業を専門に法務・労務の分野でのサポートを行っている。
全ての介護・福祉事業所が処遇改善加算を、しかも加算率Ⅰのレベルで取得することを目標としている。当該分野で働く方の職場環境の改善を願ってやまない。


【この記事の執筆・監修者】


- (いのうえ ごう)
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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