2025年5月号
介護業界に「特定最低賃金」導入の可能性
普段、当社がお客様にご案内している「最低賃金」は、正確には「地域別最低賃金」と呼ばれるものです。これは、都道府県ごとに時間あたりの最低賃金を定める制度であり、たとえば令和6年10月に決定された地域別最低賃金の一部は、以下の通りです。
東京都 :1163円
神奈川県:1162円
大阪府 :1114円
兵庫県 :1052円
福岡資麿厚生労働大臣は、介護業界において、これを上回る水準の「特定(産業別)最低賃金」の導入を検討していると発表しました。この「特定(産業別)最低賃金」も、都道府県ごとに、たとえば「〇〇県の介護事業では〇〇〇円」といった形で設定されます。
引き続き最新の情報収集に努めてまいります。
ファクタリングに関する個別相談会
東証プライム上場企業・株式会社メドレーのグループ会社である「株式会社メドレーフィナンシャルサービス」と、タスクマン合同法務事務所によるコラボ企画のご案内です。
本企画では、介護保険報酬や障害福祉報酬の入金日までの資金繰りをサポートする『ファクタリング』をご紹介いたします。『ファクタリング』は、金融機関からの融資とは異なり、国保連への「請求権」に基づいて短期の資金調達が可能な仕組みです。
(詳細:PDFファイルダウンロード)
メドレーフィナンシャルサービスでは、5月19日から23日までの期間で、個別相談会を開催いたします。ご希望の方は、以下のお申し込みフォームよりご予約ください。
(大阪府、和歌山県の障害福祉事業は国保連の規定により対象外です。ご注意ください)
悪質M&Aで中小企業被害急増
最近、中小企業のM&Aにおいて、悪質な仲介業者による被害が急増しています。M&A仲介業を営むにあたっては、特定の資格や免許が必要とされておらず、会社法に関する基礎的な知識がない者や、決算書すら正確に読み取れない者が仲介業者として関与するケースも見受けられます。
こうした仲介業者が、単に事業承継の取次ぎのみを行いながら、高額な手数料を請求する例が後を絶ちません。結果として、売り手・買い手双方にとって、M&A成立後に思いもよらない問題点が発覚することも少なくありません。
その時点で仲介業者に損害賠償を求めても、多くの場合は手数料の返還はおろか、誠実な対応すら期待できないのが現状です。
M&Aに関してお困りのことがございましたら、当社で法的観点からの助言も含めたご支援を行いますので、ぜひ担当者までご相談ください。
カスハラ 全企業に対策義務
カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、すべての企業に義務付けられる見通しです。労働施策総合推進法等の改正が成立した後、これに基づく指針が策定される予定です。
日本では長らく「顧客第一主義」の名のもとに、顧客からの不当な要求や度を超えたクレームに対しても、企業側が一方的に譲歩して対応することが美化される風潮があったことは否定できません。しかし、このような対応を企業が従業員に強いることで、従業員の心身に不調をきたす事例が多く報告されています。
今回の法改正は、こうした現状を踏まえ、すべての企業に対してカスハラ対策を義務付けるものです。改正案においてはカスハラの要件として、以下の3点を挙げています。
1.顧客等による行為であること
2.その言動が社会通念上、許容される範囲を逸脱していること
3.それにより、従業員の就業環境が害されること
今後は、これらの指針に基づいたカスハラ対応マニュアルの作成が各企業に求められます。詳細情報が公表され次第、あらためてご案内いたします。
発達障害児 相談体制強化
発達障害を診断する医療機関での初診待ちの長期化が社会問題となっています。3カ月以上待ちの医療機関が50%を超え、中には10カ月待ちのケースもあるとのこと。発達障害は早期の対処が効果的とされているため、保護者の方の心配は如何ばかりかと、ご心中をお察しします。
このような状況を受け、こども家庭庁が新たな取り組みを進めます。具体的には、言葉の遅れや落ち着きがないなど、発達障害に関する相談を心理士等が保健センターや子育て支援センターで行う体制を作ります。児童発達支援事業所や放課後等デイ事業所とも情報共有することになるため、関係事業者様には地域での情報収集をお勧めします。
副業(ダブルワーク)の残業代計算 簡素化
副業を認める企業が増加しています。厚生労働省が示すモデル就業規則でも、副業を「原則可」と示しています。ここで副業に関する、割増賃金の現法令下の考え方をご説明します。
例えばA社で7時間労働し、続いてB社で3時間労働した場合、1日の労働時間は10時間となり、B社労働のうち法定労働時間(8時間)を超える2時間分が割増賃金の対象となります。「副業の労働時間通算」と呼ばれます。
B社からすると、A社での毎日の労働時間を把握する必要がある上に、短時間しか労働しない人に割増賃金まで支給しなければならないという問題が生じます。
人手不足問題解消の一手として副業を促進したい政府の思惑もあり、この「副業の労働時間通算」が廃止に向かう予定です。
編集後記
先日、世界遺産登録候補地を現地視察しました。奈良県橿原市にある藤原京は今年の夏、国際機関イコモスの現地調査を受け、その後ユネスコの審査を経て世界遺産登録を目指します。今年度私は橿原市議会『世界遺産登録特別委員長』の任にあります。
世界遺産はしばしば「観光資源」として語られますが、その本質は「未来への継承」にあります。有名なところではフランスのモン・サン・ミシェル、ペルーのマチュ・ピチュ、インドのタージ・マハルなど、世界では1200件を超える遺産が登録されています。

そんな中、かつて子ども時代に遊びまわった藤原京が世界遺産登録の審査を受けようとしています。
藤原京を訪れる方にその歴史的価値をどう伝えるか、観光政策と住環境の維持をいかに両立させるか、登録を機にどのような商工施策を打ち出すべきか。課題は山積しています。けれどもやはり本質は「未来への継承」です。
大げさな言い方かもしれませんが、大自然と人類の歴史が織りなしてきた世界遺産を次の世代へと受け継いでいくための基盤、それは「平和」にほかなりません。戦争はこうしたかけがえのない価値を一瞬にして破壊します。世界遺産を未来に継承しようという私たち一人ひとりの小さな決意の積み重ねが、やがて世界の平和に確かな道をつくるのだと思います。そんな使命感を胸に「世界遺産登録」という重責の一翼を担ってまいりたいと考えています。