2024年10月号

B型工賃は消費税仕入税額控除の対象外

名古屋地裁が「B型工賃は消費税仕入税額控除の対象外」と判決しました。分かりやすく解説します。

就労継続支援B型は「利用者(障害者)に生産活動の機会を提供する障害福祉サービス」です。生産活動とは例えばパンの製造、ビルの清掃、内職などで、これらの生産活動でB型法人は消費税を受け取ります。(請求意思にかかわらず受け取っていることになります

生産活動での消費税(例)

年間で2000万円の生産活動売上 → 正味売上1818万円 + 消費税182万円

受け取った消費税182万円をそのまま納税しなければならないわけではなく、事業運営で支出する経費に含まれる消費税を控除して納税する仕組みとなります(原則課税)。

経費に含まれる消費税(例)

家賃(正味300万円、消費税30万円)、材料仕入(正味500万円、消費税50万円) → 消費税合計80万円

この例で言うと、受取消費税(182万円)― 支払消費税(80万円)=102万円を納税することになります。ここで問題となるのが「B型の利用者に支払っている工賃には消費税が含まれているのか?」との問題です。

B型利用者の工賃

年間で1000万円の工賃を支払った中に「消費税が含まれている」と考えると
→ 正味工賃909万円 + 消費税91万円

仮に「含まれている」と考えると、この法人が納税する消費税(102万円)から91万円を引き、納税額が11万円まで下がります。これに対する名古屋地裁の判決が以下の通りだったわけです。

名古屋地裁

B型利用者の作業は「役務提供」ではなく福祉サービスの一環。工賃も「役務提供の対価」ではなく福祉サービスの一環として支払われているので、工賃支払分の消費税を法人全体の納税額から控除することはできません。

本件は現在、名古屋高裁での控訴審へ進んでいます。

経営セーフティ共済(倒産防止共済)の損金不算入

法改正情報

令和6年10月1日以降に経営セーフティ共済(倒産防止共済)契約を解約し、再度共済契約を締結(再加入)する場合、解除の日から2年間に支出する掛金については、損金算入できなくなります。

(経営セーフティ共済について、理解したい方はこちらのコラムをご参照下さい)

今回(令和6年10月1日)の法改正がどのような意味を持つのか、簡単に解説します。

共済担当者

経営セーフティ共済は、取引先の倒産による自社の損害をカバーするための保険です。掛金支払い時に全額損金算入(経費化)できるため法人税の節税効果があるとともに、一定年数経過後に解約した場合には掛金の全額が戻ってくるというメリットがあります。ただし解約時の掛金の戻りは、全額益金算入(売上入金と同じ位置づけ)となります。

加入者

この仕組みをうまく活用すると、例えば事業の好調時に掛金を支払うことで節税効果を生んで、事業の不調時や大きな支出が必要な時(事業所の移転、設備投資、退職金の支払い等)に解約することで、一時的な赤字をカバーする効果が期待できるね!

共済担当者

その通りですが、共済加入(掛金支払)と解約(掛金戻り)を繰り返すことは、本来の共済契約の趣旨に反するため、令和6年10月1日以降は、「共済を解約し再加入する場合、解約の日から2年間に支出する掛金については、損金算入できない」という制限が設けられたわけです。

経営セーフティ共済に加入されているお客様は、十分なご理解をお願い致します。

年末調整【生命保険料控除、損害保険料控除】

年末調整の時期が近づいています。個人で生命保険、地震保険に加入している方に対して、10月中旬より、各保険会社から控除証明書が郵送されます。年末調整を受ける方は、手続きに必要となります。

各自保管し、年末調整時に事業所あてに提出するよう周知をお願い致します。

社会保険等級変更の時期です

4~6月の賃金に基づき社会保険算定基礎届を提出している被保険者については、9月分社会保険料から新たな等級に変更されます。

等級の変更タイミング

9月分保険料を9月支給給与で徴収の場合 → 9月支給分から変更
9月分保険料を10月支給給与で徴収の場合 → 10月支給分から変更(一般的にはこちら)

当社で給与計算の代行を承っているお客様につきましては、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が変更となる場合がありますのでご留意下さい。

編集後記

90歳何がめでたい

お腹を抱えて笑える全28編のエッセイ集です。佐藤愛子著「九十歳。何がめでたい」。現代社会の「何か変じゃない?」を縦横無尽にブッタ切ります。特に印象に残ったのがバイオリニスト高嶋ちさ子さんの「ゲーム機バキバキ事件」への寸評。息子さんがゲームのルールを守らなかったことに腹を立てた高嶋さんがゲーム機(ニンテンドー3DS)を真二つに折った事件です。この件がネット上で大炎上し「やりすぎ、子供の気持ちを分かろうとしない親はバカ、任天堂に謝れ」との批判が殺到したとか。対して著者曰く「普通の母親だったら誰でもカンカンに怒る。怒るなと言っても無理だ、それが母親と言うものだから」。人間の性(さが)に素直に向き合い、歯に衣着せぬ表現でまくしたてる筆力に心から共感を覚える一冊です。女優の草笛光子さん主演で映画化もされているので、是非観てみたいと思います。(井ノ上剛)