時間外労働規制についての法改正 医師に対する労働時間の上限とは?
このコラムを読むと分かること(3分で読めます)
・時間外労働規制のしくみが理解できる
・時間外労働に関する法改正内容が理解できる
・医師の時間外労働の上限に関する議論の現状がわかる
労働法改正により、時間外労働の上限が法的に規制される。一方で、医師など特定の業種は例外規定が議論されている。このコラムでは、法改正内容をわかりやすく解説し、さらに例外規定についての議論の状況も紹介する。
コラムの目次
①時間外労働の原則について
②時間外労働の上限はどう変わる?
③医師の時間外労働上限はどうなる?
④まとめ
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①時間外労働の原則について
労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間、1週40時間以内とされている。この時間(法定労働時間)を超えて労働者に労働させるためには、36協定(労使協定)の締結および労基署への届出が必要になる。
36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」などを定めなければならない。36協定に特別条項を付記すれば、さらに時間外労働をさせることが可能になる。
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②時間外労働の上限はどう変わる?
従来法の規定は?
36協定を締結した場合の限度時間は、厚生労働大臣の告示にて、月45時間、年間360時間とされてきた。あくまで、大臣告示であり、罰則による強制力はない。さらに特別条項を設けた場合は、臨時的な特別の事情がある時に限り、上記を超えて残業させることが可能。
従来法では、その場合の限度時間は明記されていなかった。つまり、特別条項さえ設ければ、法的には何時間でも労働させることが可能であった。
労働法改正後の規定は?
2019年4月の法改正では以下の点が改正されている。(中小企業は2020年4月~)
36協定に特別条項を設けない場合は、上限時間は従来と同様「月45時間、年間360時間」であるが、違反した場合に「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されることになる。
36協定に特別条項を設けた場合は、「年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)」が上限となる。また、月45時間を超えることができるのは年間6ヵ月まで。違反した場合は同様の罰則が科される。
中小企業への適用は?
中小企業への上限規制適用は2020年4月~となっており、中小企業の定義は次のとおり。
小売業: 資本金または出資金5,000万円以下 または 常時使用労働者50人以下
サービス業:資本金または出資金5,000万円以下 または 常時使用労働者100人以下
卸売業:資本金または出資金1億円以下 または 常時使用労働者100人以下
その他(製造業、建設業、運輸業、その他):資本金または出資金3億円以下 または 常時使用労働者300人以下
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③医師の時間外労働上限はどうなる?
時間外労働上限規制の例外規定とは?
以下の業種には例外規定が設けられている。
医師、建設業、自動車運転の業務、新技術・新商品等の研究開発業務など。
このうち、医師、建設、自動車運転の業務は、2024年3月31日までは上限規制が適用されず、2024年4月1日から業種ごとに特別の取扱いが適用される。
医師に対する上限規制については、「医師の働き方改革に関する検討会」にて議論が進められている。ここでは、2019年3月28日にまとめられた検討会の報告書に着目し、議論の現状を紹介する。
3つの水準を設定
地域医療体制の確保や医師の技能向上に対応するため、医師の労働時間を一律に規制するのは困難であることを踏まえ、(A)水準、(B)水準、(C)水準の3つの水準を設ける方向で議論が進められている。
(A)水準
診療従事勤務医の上限水準として、脳・心臓疾患の労災認定基準を考慮し設定。
36協定によっても超えられない上限として、月100時間未満、年960時間以下(休日労働を含む)としている。
(B)水準
医師や病院が少ない地方など、地域医療の観点からやむを得ず(A)水準を超えざるを得ない場合を想定し、「地域医療確保暫定特例水準」として設定。
36協定によっても超えられない上限として、月100時間未満、年1860時間以下(休日労働を含む)としている。
(C)水準
研修医が研修プログラムに従事する場合や、医師登録後6年目以降の医師が特定の高度な技能を習得するために診療に従事する場合には、ある程度の時間が必要であるとの観点で設定。
上限時間は(B)水準と同じ。研修医の場合を(C)-1水準、高度特定技能習得の場合を(C)-2水準と分けて表記している。
(B)・(C)水準の将来のあり方
(C)水準については、検証をしながら将来も継続していく方針であるが、(B)水準については、段階的な見直しを経て、2035年度末を目標に終了とする計画となっている。
報告書の結びには、「医師と国民が受ける医療の双方を社会全体で守っていくと強く決意する」とある。この一文には、関係者の並々ならぬ想いを感じる。
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④まとめ
このコラムで解説した時間外労働の上限規制のポイントは次のようになる。
・時間外労働の上限規制が罰則つきですでに始まっている
・中小企業や一部業種には、例外規定がある。
・医師の時間外労働上限規制はまだ議論が続いているが、月100時間未満、年960時間以下がベースとなる見込みである
・地方の医療機関や、研修医等については、例外的に月100時間未満、年1860時間以下まで許容する方向である。
労働時間上限規制が法律に明文化され、行政の監督も強化され、違反に対する世論の風当たりも一層強まると予想される。あらためて自社の労働環境をチェック頂き、不明点は専門家に相談していただきたい。
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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