このコラムを読むと分かること(3分で読めます)

・社会保険、労働保険手続きの電子申請義務化の対象となる事業所範囲がわかる
・義務化の対象となる具体的な手続きがわかる
・電子申請のメリット、デメリットが理解できる

社会保険、労働保険の一部手続きについて、2020年から電子申請化で行うよう義務化される。このコラムでは、義務化の対象範囲、電子申請のメリット、デメリットについてわかりやすく解説する。

コラムの目次

①電子申請の義務化とは?
②義務化の対象事業所は?
③義務化の対象手続きは?
④電子申請のメリットは?
⑤電子申請のデメリットは?
⑥まとめ

①電子申請の義務化とは?

2020年4⽉から、特定の法人について社会保険・労働保険の電子申請が義務化される。

現在、膨大な⾏政⼿続コストを削減するため、政府をあげて電⼦申請の利⽤促進が進められているが、その取り組みの厚労省版である。

すでに普及している先行例としては、所得税の確定申告における電子申請が挙げられる。

②義務化の対象事業所は?

義務化の対象となるのは比較的大きな事業所で、要件は以下の通り。

・資本⾦、出資⾦⼜は銀⾏等保有株式取得機構に納付する拠出⾦の額が1億円を超える法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社

なお、これらの事業所については、社会保険労務士や社会保険労務士法人が代わって手続きをする場合でも電子申請が必要である。また以下の場合は従来の方法による届出が可能。

・通信不具合等の理由で電子申請ができない場合
・労働保険事務組合に労働保険事務が委託されている場合
・単独有期事業を行う場合
・年度途中に保険関係が成立した事業について、保険関係が成立した日から50日以内に申告書を提出する場合

③義務化の対象手続きは?

社会保険、労働保険に関する手続きの多くが、現在でも電子申請が可能である。今回、電子申請が義務づけられるのは、以下の手続きである。今のところ義務化対象は一部であるが、今後対象が拡大する可能性が高いと思われる。

【健康保険 厚⽣年⾦保険】

被保険者報酬月額算定基礎届
被保険者報酬月額変更届
被保険者賞与支払届

【労働保険】

継続事業(一括有期事業を含む)を行う事業主が提出する以下の申立書

・年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
・増加概算保険料申告書

【雇用保険】

被保険者資格取得届
被保険者資格喪失届
被保険者転勤届
⾼年齢雇用継続給付支給申請
育児休業給付支給申請

④電子申請のメリットは?

厚生労働省は電子申請のメリットを次のように紹介している。

(1)行政機関に出向く移動時間、コストが削減できる

社会保険、労働保険の手続きでは、ハローワーク、労働基準監督署、年金事務所などへの訪問が必要である。電子申請により、これらの役所までの移動時間、交通費等が削減できる。

厚労省では、年間のコスト削減効果額を以下のように試算している。

〇書面で申請を行う場合のコスト・・年間約30,000円

・年間の社会保険、労働保険関係の届出・・6回
・行政機関滞在時間、移動時間・・2時間
・1回当たりの往復交通費・・320円
・時間当たり給与・・2,448円

2,448円×2時間×6回+320円×6回=31,100円

コスト(電子証明書の取得費等)・・10,000円程度

以上より、オンライン申請を行うことで、約20,000円(30,000円-10,000円)の年間コスト削減が期待できるとのことである。

(2)申請書類の作成が簡単で、事務効率が向上する

前回記載したものを基に次回の書類が作成できるので、手間が省ける。また入力チェック機能があり、記入漏れや記入ミスを防ぐことができる。

そのほかのメリットとして、次のようなものが考えられる。

・紙書類が減り、保管スペースを削減できる
・遠隔にある事業所同士での、事務やり取りが簡単である(支社から本社に必要書類を郵送する等の手間が不要)

⑤電子申請のデメリットは?

手続き対象者の人数が多い場合に、入力の手間がかかる場合がある。算定基礎届などの社会保険手続きや、雇用保険の資格取得届、資格喪失届については、CSVファイル添付方式が使えるため、対象者の人数が多くてもまとめて簡易に申請できる。これらは日本年金機構が用意している専用プログラムを利用して行う。

一方で、多人数の申請を一人ずつ入力しなければならないものがあり、一例として、雇用保険の「⾼年齢雇用継続給付支給申請」がある。これまでは対象者ごとに紙の申請書が送付され、すでに氏名、雇用保険番号、資格取得年月日が印字されていて、そこに直近の報酬額等を記入するやり方であった。電子申請では、一人ずつそれらの情報すべてを入力しなければならない。もちろん、初回に入力しておけば2回目以降はデータコピーをすることで楽になる。

⑥まとめ

今回の電子申請義務化は大企業が対象だが、今後順次対象が拡大していくと思われる。

電子申請はメリットも多いので、義務化を待つことなく少しずつ電子申請へ移行していく方がよい。

ただ、小規模な事業所では、電子申請ができる専門スタッフを雇用するのは困難となるため、社会保険・労働保険の管理を専門家である社労士に依頼するのが効果的かと思われる。