このコラムを読むと分かること(3分で読めます)

介護事業では、働き手の減少および利用者である高齢者の増加を受け、人材不足はとりわけ大きな問題となっている。このコラムでは、人材不足の現状と対策の方向性について、政府の議論の状況を踏まえて紹介する。

コラムの目次

①介護事業分野の人材不足の現状
②介護福祉士への国家試験義務付けとの関係
③介護事業分野の人材不足への対策
④まとめ

①介護事業分野の人材不足の現状

介護事業分野の人材不足について、社会保障審議会介護保険部会の議論をベースに紹介する。

はじめに介護事業関係職種の有効求人倍率をみると、全業種の1.45倍に対し、3.9倍となっており、介護事業所側の人材確保は容易でない状況がわかる(H30年調査)。

一方、介護ユーザ層である75歳以上の人口予測では、2025年には2015年比で1.5倍となる地域もあり、需要と供給のバランスが取れていない。

具体的には、過去の介護サービス利用量から予測される介護人材必要数をみてみると、2020年度末に約216万人、2025年度末には約245万人が必要とされ、年間6万人程度の介護人材を増やしていく必要があると指摘されている。

これは大変厳しい数字であり、危機感を感じる。

②介護福祉士への国家試験義務付けとの関係

介護福祉士は、専門的知識及び技術をもつて介護を行い、その者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを専門とする国家資格である。

この介護福祉士について、介護ニーズの多様化・高度化の進展に対応できる資質を担保し、社会的な信頼と評価を高める観点から、資格取得方法の改革が進められている。具体的には・・・

①一定の教育課程を経て国家試験の受験資格を得た上で、
②国家試験により修得状況を確認する

という2つのプロセスを経るべきとされた。現在、専門の養成学校で一定の単位を取得すれば、介護福祉士資格が取得できる方法(いわゆる養成施設ルート)があり、改革ではこの養成施設ルートでも国家試験を受験させる。

介護事業分野の人材不足とどう関係があるかというと、成り手減少や離職を招く懸念から、この国家試験義務化が一度延期された経緯がある。

これは、介護の「質」の前に、まずは「量」の確保を優先せざるを得なかったといえ、いかに介護人材不足が深刻であるかを表していると言える。

③介護事業分野の人材不足への対策

「まんじゅう型」から「富士山型」へ。

これは政府が掲げる介護人材確保の方針である。 具体的には以下のような内容である。

1.すそ野を拡げる
人材のすそ野の拡大を進め、多様な人材の参入促進を図る
2.道を作る
本人の能力や役割分担に応じたキャリアパスを構築する
3.長く歩み続ける
いったん介護の仕事についた者の定着促進を図る
4.山を高くする
専門性の明確化・高度化で、継続的な質の向上を促す
5.標高を定める
限られた人材を有効活用するため、機能分化を進める。

方針を踏まえ、具体的な対策が以下のように進められている。

(1)介護職員の処遇改善

(これまで)
介護事業所職員の処遇改善として、月額平均5.7万円の賃金アップ

(今後)
2019年10月より、リーダー級の介護事業所職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指し、経験・技能のある介護事業所職員に重点化しつつ、更なる処遇改善を施す。(特定処遇改善加算

(2)多様な人材の確保・育成

(これまで)
介護福祉士修学資金貸付、再就職準備金貸付による支援、中高年齢者等の介
護未経験者に対する入門的研修の実施から、研修受講後のマッチングまでを一体的に支援

(今後)
入門的研修受講者等への更なるステップアップ支援(介護の周辺業務等の体験支 援)を実施

(3)離職防止・定着促進・生産性向上

 (これまで)
介護ロボット・ICTの活用推進
介護施設 ・ 事業所内の保育施設の設置・運営の支援
キャリアアップのための研修受講負担軽減や代替職員の確保支援

(今後)
介護職機能分化・多職種チームケア等の推進
介護ロボット・ICT活用推進の加速化
生産性向上ガイドラインの策定・普及
認証評価制度ガイドラインの策定・普及

(4)介護職の魅力向上

(これまで)
 学生やその保護者 、 進路指導担当者等への介護の仕事の理解促進
介護を知るための体験型イベントの開催

(今後)
若者、子育て層、アクティブシニア層に対する介護職の魅力などの発信

そして、もう一つ期待されるのが、外国人材の活用である。 現在、外国人材の受入れ方法としては、次の4つがある。

(1)EPA(経済連携協定)・・インドネシア・フィリピン・ベトナム
(2)在留資格「介護」・・留学生等
(3)技能実習
(4)特定技能1号

EPAと在留資格「介護」については、国家試験受験を経て介護福祉士資格取得が可能で、家族の帯同ができ、在留期間更新回数の制限もない。日本での長期就労が期待される。

特定技能1号は、H31.4から始まった新しい制度で、一定の専門性・技能を有する外国人を受入れ、最長5年間就労が可能。制度の目的がまさに「人手不足対応」であり、積極的な活用が期待される。

④まとめ

このコラムで解説した、介護人材確保対策のポイントは次のようになる。

・急速な高齢化が進む中、介護分野の有効求人倍率は非常に高い状況。人材確保対策が喫緊の課題である
・2025年度末まで、年間6万人のペースで介護人材を確保する必要がある
・人手不足の影響を受けて、介護福祉士への国家試験義務付けが延期された経緯がある
・政府主導で、介護職員の処遇改善をはじめ、多くの人材確保対策が進められている。
・特定技能1号制度が追加され、ますます外国人材の活用が進むことが期待される

介護事業所の中には、すでに外国人材の雇用をしている所もあるかと思われる。外国人であっても原則労働基準法は適用されるため、労務管理にはご留意いただきたい。