介護事業経営者必見!うつ病、精神疾患による労災認定の基準は?
このコラムを読むと分かること(3分で読めます)
・労災認定の基本的なしくみがわかる
・介護事業で増えているうつ病、精神疾患による労災認定の基準がわかる
介護事業をはじめ、多くの業種で精神疾患による労災認定が増加している。このコラムでは、介護事業で特に増えているうつ病、精神疾患による労災認定のしくみをわかりやすく解説する。
コラムの目次
①労災保険とは?
②近年の労災認定状況は?介護事業の状況は?
③介護事業で増えているうつ病、精神疾患による労災認定の基準は?
④まとめ
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①労災保険とは?
労災保険制度は、業務上または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度。
その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれている。労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用され、労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態によらずすべての労働者が対象となる。介護事業における登録スタッフも当然対象となる。
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②近年のうつ病、精神疾患による労災認定状況は?介護事業の状況は?
平成30年度のうつ病、精神疾患による労災請求件数は1,820件で前年度比88件増となり、支給決定件数は465件となっている。直近5年間の請求件数推移をみると、平成26年度1456件、平成27年度1515件、平成28年度1586件、平成29年度1732件と、増加の一途をたどっている。
業種大分類では、請求件数は「医療,福祉」320件、「製造業」302件、「卸売業,小売業」256件の順に多く、中分類では「社会保険・社会福祉・介護事業」が192件と最多である。年齢別では、請求件数は「40~49歳」597件、「30~39歳」491件、「20~29歳」332件の順に多い。介護事業は最多の業種であり、一層の注意が必要と言える。
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③介護事業で増えているうつ病、精神疾患による労災認定の基準は?
うつ病、精神疾患による労災認定は、平成 23年12月より「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下「認定基準」)に基づいて行われている。
認定基準に定められた要件は次の3点。
(1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること
(2) 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
なお、心理的負荷の強度は、精神障害を発病した労働者がその出来事とその後の状況を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価する。
「同種の労働者」とは職種、職場における立場や職責、年齢、経験などが類似する人をいう。
また、発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限られ、仕事によるストレスが強かった場合でも、同時に私生活でのストレスが強かったり、その人の既往症やアルコール依存など(個体側要因)が関係している場合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断していくことになる。
(1)認定基準の対象となる精神障害とは
ICD-10という疾病分類で規定されている精神疾患のうち、認知症、アルコールや薬物による障害を除いた疾病が対象となる。代表的なものはうつ病や統合失調症など。
(2)業務による強い心理的負荷とは
「業務による心理的負荷評価表」に基づき、心理的負荷の程度が「強」と評価された場合は、認定基準「業務による強い心理的負荷があった」に該当すると判定される。
特別な出来事
生死に関わる業務上のケガをした、ひどいセクシャルハラスメントを受けた、1か月の残業が160時間を超えた、3週間で120時間以上の残業があった、などの場合は「特別な出来事」があったとされ、心理的負荷「強」となる。
特別な出来事がない場合
特別な出来事がない場合、「業務による心理的負荷評価表」で示された具体例と比較して、どの程度の心理的負荷であったかを総合的に判定する。
例えば、長時間労働に関する目安としては、発病直前2カ月連続して1月あたりおおむね120時間以上の残業があった、発病直前3ヵ月連続して1月あたりおおむね100時間以上の残業を行った場合などは、心理的負荷は「強」とされる。
その他、転勤などその他の出来事の前後に、恒常的に月100時間程度の残業があった場合も「強」とされる場合がある。
また認定基準では、発病前おおむね6か月の間に起こった出来事について評価されるが、いじめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の6か月よりも前にそれが始まり発病まで継続していたときはそれが始まった時点からの心理的負荷を評価する。
(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
最終的には、業務外の心理的負荷はどの程度だったか、本人の既往症などによる影響を踏まえ、総合的に労災認定がされる。
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④まとめ
このコラムで解説したうつ病、精神疾患による労災認定基準のポイントは次のようになる。
・うつ病、精神疾患による労災請求は近年増加の一途で、介護事業は最も請求が多い業種である
・うつ病、精神疾患による労災認定の基準は、
(1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること
(2) 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
である。
労災認定をめぐっては訴訟に発展するケースもあり、会社の社会的信用を大きく損なうリスクもある。介護事業はうつ病、精神疾患による労災認定請求がもっとも多い業種であり、特に注意が必要である。
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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