伸びる会社の12の秘密!第2回 No.⑤~⑧「事業展開編」|事業を順調に伸ばす介護障害福祉会社の事業展開

伸びる会社の12の秘密!第2回 No.⑤~⑧「事業計画編」|事業を順調に伸ばす介護障害福祉会社の事業計画の捉え方
井ノ上剛(社労士・行政書士)

介護障害福祉事業で業績を伸ばしている会社の秘密を知りたくありませんか?このコラムでは私が過去580社の支援をしてきた中で体系化した、12の共通ポイントを全3回に分けて解説します。当社には守秘義務があり具体的な手法までは公開できないため、内容は一般論に置き換えて解説します。第2回は事業展開に関する内容4項目です。

このコラムの推奨対象者

・伸びる会社がどのような方法で事業計画を立案しているか知りたい
・多角化経営、M&A、月次決算、予算管理の基礎知識が知りたい
・できれば自社も事業を成長させたい

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年6月)現在、介護障害福祉事業の累積支援実績580社。数多くの会社の設立運営を支援する過程で培ったノウハウを、守秘義務に反しない限りで公開します。

このコラムと同じ内容を動画でも説明しています。

多角化経営で個別事業にシナジー

初めに多角化経営を取り上げます。伸びる会社の共通ポイントとして、事業の多角化によりシナジーを生み出しているという点を挙げることができます。シナジーとは相乗効果のことです。

具体例で解説します。介護保険の訪問介護事業所を1か所運営している会社が訪問効率をアップさせるために、一定の距離を置いて2号店、3号店を出店するとします。この段階では単なる多店舗化です。

それら訪問介護事業所の中心地点にケアプランセンターを開設して利用者のケアプラン作成を行ったり、通所介護事業所を開設して通所によるケアを希望する利用者のサービスに当たるのが、多角化経営の一般的な手法です。

また障害福祉事業の例としては、障害児向けの児童発達支援、放課後等デイサービスに始まり、一般就職のための訓練を行う就労移行支援、一般就職が難しい方向けの就労継続支援A型、B型、それらの方々に共同生活の場を提供するグループホームに至るまで、障害児、障害者に対するサービスを複線的に多角化します。

伸びる会社では単独の事業を運営するのではなく、これらのサービスを多角的に捉えることでシナジーを生み出しています。

また行き当たりばったりで事業の多角化を行うのではなく、少なくとも5年スパンで多角化を計画している点も、伸びる会社の共通点として挙げることができます。

買収 M&Aで事業展開をスピードアップ

続いて買収、M&Aについて解説します。手法は事業の運営権を買う事業譲渡や、法人の株主としての権利を買う、など多岐に渡りますが、ここでは広い意味でのM&Aについて解説します。

M&Aと聞くと大会社が多額の資金を使って買収するイメージを持たれるかと思いますが、近年は中小企業でも小規模なM&Aが非常に盛んに行われています。少額な場合は1000万円以下で会社を買収するようなケースもあります。

M&Aは事業展開のスピードを高める究極の手法です。事業所を立ち上げて年間売上高を5000万円まで持って行くためには、早くとも3年程度はかかりますが、M&Aによると一瞬でその事業所を手に入れることができます。要するに時間をお金で買うのがM&A最大の目的であると言えるわけです。

中小規模の介護障害福祉事業では、例えば後継者不足、経営難、経営者自身の体調不良など様々な理由で「会社を売ってしまいたい」というニーズが近年急激に増加しています。巷にはM&A情報を取り扱う仲介会社が存在しますが、小規模かつ地域性が極めて限定されている介護障害福祉事業の場合、M&A仲介会社が取り扱いにくい傾向にあります。

そのため、それらの情報は我々のような専門士業や、売り手側が取引する金融機関に集約することになります。

伸びる会社はそれらM&Aの売り手情報に、常にアンテナを張っているわけです。ここで重要となるのは、1つ前の項目で説明した事業の多角化計画と自社の財務管理です。つまり、行き当たりばったりでM&Aに取り組むのではなく、自社の既存事業とどのようなシナジーが働くのかを予め検討しておくべき点と、次の項目で説明する月次決算の実施によりメインバンクが、速やかにM&A資金を融資してくれる状態を維持する、という点が重要となります。

月次決算の適正実施で経営状態をリアルタイムで把握

続いて月次決算について解説します。伸びる会社の特徴として、月次決算を正確かつ迅速に実施し、自社の経営状態をリアルタイムで把握しているのはもちろんのこと、メインバンクにも定期的に月次決算情報を提供し、経営の安全性をPRしている点にあります。

具体的に解説します。月次決算とは要するに月次残高試算表を作成することにあります。通常は月末に締めた入力基礎資料に基づき、翌月に月次決算処理を行って月次残高試算表を完成させます。

遅くとも翌月末には完成させるのが目標となりますが、伸びる会社の特徴として、月次決算確定の速さを挙げることができます。早い会社の場合、翌月15日までには月次決算が確定しています。当社自身も翌月15日までに確定させ、前月までの経営状態を把握し、その後の経営判断に活かしています。

ここで月次決算の確定スピードをアップさせる方法を3つご説明します。

1点目は入力基礎資料を明確にし、リアルタイムで整理していくことです。具体的には現金出納帳、預金口座情報、クレジットカード情報、給与計算情報などです。とくに現金出納帳や預金口座情報は月末を待たずに、リアルタイムで情報整理することで月次決算の確定スピードを格段にアップさせることができます。

2点目は会計事務を経営者一人で担わない、という点です。中小企業の経営者は会社のあらゆる業務に関与する必要があるだけでなく、突発的な事案が発生した時はその解決のために膨大な時間を費やす必要があります。にもかかわらず会計事務は毎月定期的に発生します。従って会計事務については可能な限り早期に、会計事務員に作業を委譲することをお勧めします。

3点目は自社と税理士の役割分担を明確に理解することです。伸びない会社に共通するのは「税理士に帳簿を任せているから安心だ」という極めて重大な誤解をされている点にあります。税理士の作業は、あくまでもあなたの会社が整理する入力基礎資料が前提となります。

ここまでの説明でお分かりの通り、月次決算を正確かつ迅速に実施するためには、入力基礎資料を明確にし、リアルタイムで整理する必要があります。同時に「自社で実施しなければならない作業範囲」と「税理士、会計事務所に依頼できる作業範囲」の境界線を明確に理解しておく必要があります。要するに段ボール箱に領収書や請求書を詰め込んで税理士、会計事務所へ送りつけるような行為は、会社経営者として論外の話です。

伸びる会社では毎月発生する会計事務をスマートに区分けし、迅速に月次決算を確定して自社の経営状態の把握に努めています。

予算管理を行いリアルタイムで軌道修正

最後に予算管理について解説します。伸びる会社の特徴として、年度初めに計画した予算案と、先ほど説明した月次決算の確定情報を比較して、常時予算と実績の対比に努めています。

予算管理には様々な手法がありますが、ここでは当社でも使っているシンプルな方法をご紹介します。この方法を用いれば、売上高、人件費を含む全ての項目の予算と実績の対比を簡単に行うことができます。

予算を立てるのは決算が概ね確定した時点です。「概ね」という表現を用いたのは、決算の最終確定を待っていると新年度がどんどん進行してしまうためです。適正な月次決算を組んでいれば、決算月の翌月15日頃、つまり新年度1カ月目の15日頃には、決算の概要が確定しているため、その時点で予算を立てることができます。

まずは前年度の売上高、人件費、各種経費の月次推移を確認し、新年度の12カ月間の推移を予測します。エクセルシートなどを用いれば簡単に作成することができます。

続いて予算計画の微調整を行います。計画段階である程度の最終利益が期待できる場合、例えば役員報酬の増額、設備や人材に対する投資を検討して予算に盛り込みます。この時点では概算で問題ないでしょう。

そして新年度がスタートし、月次決算が確定するに従って、予算と実績を対比します。年度当初に策定した予算計画の原本は保存しつつ、月次決算の進行に応じて予算部分の数値を確定数値で上書きしていきます。また状況に応じて、その後の予算計画を増額または減額修正し、最終決算が適正に着地するよう工夫します。このような手法を「ローリング予算」と呼びます。ローリング予算は、予算計画を適宜修正しながら事業運営に当たる、まさに中小企業に最も適した予算管理手法であると言えます。

伸びる会社では迅速な月次決算の確定とローリング予算の手法を用いて、リアルタイムで経営の適正化を図っています。

まとめ

以上が連載シリーズ「伸びる会社の12の秘密」第2回事業展開編4項目の内容です。伸びる会社の経営者がどのような視点で事業と向き合っているか、ご理解頂けたかと思います。第3回にご期待ください。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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