伸びる会社の12の秘密!第1回 No.①~④「資金編」|事業を順調に伸ばす介護障害福祉会社に共通する取り組みとは?

伸びる会社の12の秘密!第1回 No.①~④「資金編」|事業を順調に伸ばす介護障害福祉会社に共通する取り組みとは?
井ノ上剛(社労士・行政書士)

介護障害福祉事業で業績を伸ばしている会社の秘密を知りたくありませんか?今回は私が過去576社の支援をしてきた中で体系化した、12の共通ポイントを全3回に分けて解説します。当社には守秘義務があり具体的な手法までは公開できないため、表現を一般論に置き換えて解説します。第1回は資金に関する内容4項目です。

このコラムの推奨対象者

・伸びる会社がどのような方法で事業経営に取り組んでいるのか知りたい
・自社の経営スタイルが正しいのかどうか、第三者目線での評価が欲しい
・数多くの介護障害福祉事業者を支援している専門家のアドバイスが欲しい

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年6月)現在、介護障害福祉事業の累積支援実績576社。数多くの会社の設立運営を支援する過程で培ったノウハウを、守秘義務に反しない限りで公開します。

同じ内容の動画もあります。ご視聴ください。

助成金・補助金の活用

初めに助成金と補助金について解説します。ここではそれらを総称して助成金と表現します。業績を伸ばしている会社は、助成金制度を正しく理解しフル活用しています。助成金には国、都道府県、市町村が主体となるものから、財団法人や社団法人が主体となるものまで様々な種類が存在します。

それらに共通するのは「助成金が支給された後は、制度違反等の場合を除いて返還義務がない」という点です。助成金によって会社の必要経費を補い、または新たな事業計画のために資金を使うことが可能となります。ここでは助成金の性質を2つに区分して解説します。

1つ目の区分は会社の取り組み内容を支援する目的で支給される助成金です。代表例としてキャリアアップ助成金が挙げられます。

キャリアアップ助成金は、非正規労働者を正社員に転換する場合に国から支給される助成金です。介護障害福祉事業の場合で言うと、例えばフルタイムだけれど昇給や賞与支給の無い介護ヘルパーを、昇給や賞与支給のある正社員に転換した場合、一人当たり57万円を受給することができます。

2つ目の区分は会社が支出した経費の一部を補助する目的で支給される助成金です。具体例として小規模事業者持続化補助金が挙げられます。小規模事業者持続化補助金は、中小企業が経営改善を行うために支出する費用について、原則3分の2を補助する制度です。介護障害福祉事業の場合で言うと、新しい事業所のための広告宣伝費等で補助を受けることができます。

ここで注意が必要なのは、補助はあくまでも支出経費の3分の2に過ぎず、また補助金額に上限があるという点です。その支出経費が会社にとってあまり価値がない場合、補助されない支出部分は無駄となります。従って「補助金制度があるからやってみよう」という安易な考え方ではなく「補助金制度がなくても実施するかどうか」という視点での経営判断が必要となります。

これらの視点に基づき、伸びる会社は常に助成金・補助金制度にアンテナを張り、制度を無駄なくフル活用しています。

加算制度の活用

続いて加算制度について解説します。ご承知のとおり、介護障害福祉事業には指定事業ごとに異なる報酬加算制度が設けられています。加算制度を知らずに事業を運営するのは、将棋の駒の動かし方のルールを知らずに対戦するようなものです。

伸びる会社は自社の指定事業に適用される全ての加算制度を正しく理解し活用しています。また時には加算制度の適用を受けるために、自社の職員構成を加算制度に合わせる努力も行っています。

指定業種ごとの加算制度については、当社コラムで詳しく解説しているため別途ご参照頂くとして、ここでは代表的な2種類の加算制度をご紹介します。

1点目は特定事業所加算に代表される、人員配置系の加算制度です。人員配置系の加算制度はほぼ全ての介護障害福祉事業に設けられているため、自社に適合する加算制度とその要件を正しく理解しましょう。一例として訪問介護事業の人員配置系加算である、特定事業所加算をご紹介します。

特定事業所加算は利用者に対するサービス向上を目的として、有資格者、経験者の配置比率を高める事業所に適用される加算です。

事業所の目標到達度合いに応じて、加算区分は4つに分かれますが、最も高い特定事業所加算1では加算率が20%にも上ります。これは純粋に売上高が20%アップすることを意味します。毎月の介護保険報酬が200万円の事業所で特定事業所加算1を取得すると、40万円が追加で入金されるわけです。伸びる会社は必ず特定事業所加算の1または2を取得しています。

2点目は処遇改善加算制度です。処遇改善加算は社内の人事制度、賃金制度を整備することを条件に適用される加算です。制度は処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3つに分類され、さらに事業所の取り組み度合いに応じて加算区分が設けられています。

訪問介護事業でそれぞれ最も高い加算を適用すると、加算率が22.4%にも上ります。1点目に解説した特定事業所加算とダブルで取得することが可能ですので、これらをフル活用すると売上高が大幅にアップします。

伸びる会社ではこれらの加算制度をフル活用し、売上高を伸ばしています。

第1回 基礎知識編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算4
第1回 基礎知識編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算
第2回 算定要件編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算2
第2回 算定要件編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算
第3回 作業準備編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算2
第3回 作業準備編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算
第4回 計画書編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算2
第4回 計画書編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算
第5回 実績報告編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算2
第5回 実績報告編(全5回)初心者のための分かりやすい処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算

節税の努力

続いて節税対策について解説します。皆さん、節税対策を税理士任せ切りにしていませんか?伸びる会社の経営者は、自ら税や会計について基本的な学習努力を怠らず、税理士と対等に話し合っています。ここでは介護障害福祉事業の経営者が節税についてどのような姿勢で取り組むべきかを解説します。

節税をその実施タイミングに応じて分類すると3つに区分することができます。1点目は平常時、2点目は決算のおよそ3カ月前、3点目は決算日から申告納税日までです。このうち3点目の決算日から申告納税日という時期には、会計処理の適正化によって申告納税額を抑える取り組みを行いますが、実施には限界があるためここでの説明は省略します。

まずは1点目の平常時の節税です。具体的には役員報酬額の適正化、生命保険契約、セーフティー共済、小規模企業共済、企業年金等をフル活用した、いわゆる財テク系の取り組みです。

これらの制度を正しく理解し、長期目線で経営者個人と会社の節税を一体的に捉える必要があります。ポイントは長期目線での節税取り組みです。

2点目は決算のおよそ3カ月前からの節税です。決算日までに実施できる節税対策を税理士と一緒に検討します。具体的には損金処理ができる費用の前払い、広告費などの先行投資、決算賞与の支給などです。

いずれも決算日までに検討しないと節税効果が生じないため、経営者自ら税法の基本知識を正しく抑え、税理士と協議する必要があります。

伸びる会社ではこれらの節税ノウハウをフル活用し、必要な部分にお金を使い、長期目線での節税計画に取り組んでいます。

金融機関融資の活用

最後に金融機関融資について解説します。皆さん金融機関融資についてどのような印象をお持ちでしょうか。「融資=マイナスのイメージ」をお持ちではありませんか?金融機関融資は3つの視点でとらえることができます。

1点目は設備融資です。設備融資は「この設備を導入すれば売上高をアップすることができるけれども資金が不足している」という場合に活用する融資です。介護障害福祉事業の具体例としては、事業所2号店のオープンや送迎用車両の購入などが該当します。

2点目は運転資金融資です。運転資金融資とは売上が増加する局面で、一時的に資金が不足する場合に活用する融資です。介護障害福祉事業で具体例を言うと、利用者の急増に伴い職員採用を行うときに、売り上げの入金タイミングより先に人件費の支払タイミングが訪れるようなケースです。介護障害福祉報酬が2か月遅れで入金されることが理由です。

このタイミングの差を埋めるために、例えば人件費の2~3カ月分の融資を受けます。売上入金と人件費支払いのタイミングのずれはこの先も続きますが、その差額分はいずれ営業利益の増加によって補われ、融資返済が終わるころには問題が解消します。

3点目はいわゆる赤字融資です。設備融資や運転資金融資と異なり、赤字融資の場合には資金の使用目的が明確になりません。従って事業が好転する兆しの無い場合に融資を受けると、将来高額な負債を背負うことになります。

伸びる会社ではこれら3つの融資区分を明確に見極め、最適な融資を受けつつ事業の拡大を目指しています。

まとめ

以上が連載シリーズ「伸びる会社の12の秘密」第1回資金編の内容です。伸びる会社の経営者がどのような視点でお金と向き合っているか、ご理解頂けたかと思います。第2回、第3回の連載にご期待ください。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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