小規模な介護障害福祉事業を支援する中で、幾度となく相談を受ける法律トラブル。このコラムでは著者の実体験に基づき、少額訴訟の被告となった場合の対処法を解説する。

 

【目次】

①少額訴訟の訴状が届いたとき
②訴状に対する反論 答弁書の作成
③少額訴訟の和解
④まとめ

①少額訴訟の訴状が届いたとき

少額訴訟とは60万円以下の金銭債権について、原則1回の裁判で、その日に判決が下される訴訟方法である。このような簡易な訴訟方法であるため、十分な審理を希望する場合には、通常訴訟への移行を申し立てる事もできる。しかし訴状に記載された当日に裁判が行われること自体には変わりがない。

創業時の介護福祉事業経営者にあっては、残業代の支払い請求、事務所移転時の修繕費支払い請求等、比較的少額の請求が予測されるため、少額訴訟についての基本的な理解が必要である。

裁判所から少額訴訟の訴状が届いた場合、これは裁判が開始したことを意味する。つまり民事での請求(督促状や内容証明郵便)とは意味が違うのである。訴状が届いてそのまま放置していると、裁判当日に当方に不利になる判決が下されるため、訴状への対応は必須である。

②訴状に対する反論 答弁書の作成

訴状を受けた側としては、相手方(原告)の言い分に対して、反論する趣旨で答弁書を提出する。答弁書とは、裁判当日に当方が主張する趣旨そのものである。少額訴訟では、時間短縮のために、裁判当日に答弁書を読み上げることは省略される。答弁書に記載した事実が、そのまま裁判当日に発言したものとみなされるのである。

答弁書作成の際には、原告の主張に対してはそれを認めるか、認めないか、または原告の主張の事実自体を知らないか、3類型に分けて、時系列で反論を記述する。その際当方の反論を裏付けるための証拠を併せて提出すると、より反論に確証が得られることとなる。

③少額訴訟の和解

原則1日の審理で判決が出される少額訴訟にあっては、双方の意見の食い違いを調整するために、裁判官が和解を提案する場合がある。例えば原告は50万円を請求し、被告は多少なら支払う意思のある場合に、双方折り合いのつくところで妥協点を見出す方法である。

和解への話し合いは、原告・被告それぞれと司法委員が別室で行う。法廷では真っ向から意見がぶつかっている当事者を、和解協議により引き離し、それぞれ譲歩できる点を探り合うのが目的である。し合いでうまく和解に至ることができれば、判決同じ効果のある和解調書が作成される。当然ながら和解に至らない場合は、双方の主張と証拠に基づき、裁判官が判決を下すことになる。

④まとめ

少額訴訟は60万円以下の少額の金銭債権に限られた訴訟方法である。そのため、通常は弁護士や司法書士に依頼せず、当事者本人が全ての手続きを自分で行う必要がある。

日々の事業運営の中で、法務上の管理を徹底すべきことは言うまでもないが、いつ何時提訴されて右往左往しなくても良いように、少なくとも少額訴訟の制度理解はしておきたいところである。

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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