悪質クレーマーへの対処|カスタマーハラスメント

悪質クレーマーへの対処(介護)

 

セクハラ、マタハラ防止が法制化された。これまで野放しにされていた「性」、「出産」に関する嫌がらせを防止するものである。近々(平成30年現在)、パワハラ、カスハラの法制化が予定されている。カスハラとは顧客から企業に対する嫌がらせ(カスタマー・ハラスメント)の略である。このコラムでは介護事業におけるカスハラ問題を取り上げる。

【目次】
①増加するカスハラ問題の背景
②カスハラの見分け方
③カスハラに対する法的対処
④まとめ

①増加するカスハラ問題の背景

近年悪質クレーマーから企業に対する嫌がらせ(以下カスタマーハラスメン、略称カスハラ)が増加している。当事務所の顧問先である介護福祉事業所においても度々相談をうける問題である。

そもそも「クレーマー」という言葉自体、編者が社会に出た平成10年前後にはあまり聞かなかったように思う。クレーマーを敢えて定義するならば「企業に対して極めて細かい点を取り上げ執拗に主張する顧客」ともなるだろう。もちろん企業のミスに対して適正に主義を主張する顧客を指してクレーマーとは言わない。クレーマーとはあくまでも社会通念からかけ離れた基準によって不当な主張する顧客のことである。

この段階から一段進んで「カスハラ」という言葉が誕生した。クレーマーという言葉が出来た当時と状況自体は変わっていないものと思う。それでは一体何が変わったのか。それはクレーマーの嫌がらせにより、対処する社員の精神的苦痛が問題化しているという点である。精神を病み、休職や退職を余儀なくされる社員が増加している。そのことが社会問題化しつつあるのだ。

②カスハラの見分け方

会社側がいわゆるカスハラ対処に動く際に、1点重要なポイントがある。それは何をもって「クレーマー」・「カスハラ」とみなすかという基準作りである。この基準なくしてカスハラ対策は出来ない。それどころか、基準を定義せずにこの問題に対処すると、企業経営の本質を見失い、経営は瓦解する。以下に当事務所が自ら考案し、顧問先である介護障害福祉事業経営者に助言しているカスハラ選別基準をご紹介する。

【カスハラ基準】~以下のいずれかに該当すればカスハラ~

ア)契約書や関連法、または社会常識から考えて、問題が明らかに当方の責任範囲ではない場合
(例:家に上がるとき靴下を履き替えなかったのはどういう指導か?)

イ)刑法に明確に触れる主張である場合
(例:お前の会社どうなってもええねんな!)

ウ)損害(問題)と要求に因果関係がない場合、あっても要求が妥当性を欠く場合
(例:担当者の態度が悪い、今から社長が謝りに来い)

以上を参考に、各事業所においても真摯に対処する苦情とカスハラの選別を行っていただきたい。

③カスハラに対する法的対処

参考までに、前項イ)における刑法に触れる行為を検証しよう。

刑法222条(脅迫罪)

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法223条(強要罪)

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。(罪の未遂は罰する。)

刑法233条(信用毀損・業務妨害)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法249条(恐喝罪)

人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

④まとめ

当事務所では介護福祉事業所の顧問サポートを専門に執り行っている。特に訪問系の事業の場合は、ヘルパー職員が密室で被害に遭いやすい。法的な見地から、自社のカスハラ問題と職員の定着を図りたいと考えている事業所は、是非当事務所のご相談いただきたい。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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