②成年後見・保佐・補助の仕組み

大阪の介護・障碍者作業所設立_成年後見・保佐・補助

 

成年後見制度活用と戸籍・登記の関係

1.成年後見制度の利用は戸籍に記載されるの?

成年後見制度を利用しても戸籍簿に記載されることはありません

戸籍簿は1家族単位で作成され、日常生活での提出機会も比較的多いため、厳重なプライバシーの保護が必要です。

そのため、家族の一員が成年後見制度を活用しているからといって、それが戸籍簿に記載されることはないのです。

成年後見制度がスタートする前の「禁治産(きんちさん)、準禁治産」は、その漢字の持つ意味が差別的であり、戸籍簿にも記載されていました。

成年後見制度の開始と共に、「成年後見登記」という仕組みが導入され、戸籍簿記載がされなくなったのです。

2.従来の禁治産、準禁治産は?

では、従来の禁治産・準禁治産は自動的に登記制度に移行したのでしょうか?

答えはノーです。

従来の戸籍簿の記載そのままに、後見を受けていることを外部へ証明書と示すことはできます。

しかし、戸籍記載が自動的に成年後見登記へ移行するわけではなく、後見人自ら「移行登記」を行う必要があります。

3.だれが成年後見の登記をするの?

成年後見開始の登記申請は、

①法定後見開始の場合・・・家庭裁判所

②任意後見締結の場合・・・公証人

が法務局に登記を嘱託することで実施されます。

これが法人(会社)の設立登記や、不動産取引の登記との違いです。

しかしながら、登記が行われた後の住所移転や本人の死亡のときなどには、登記を後見人自らが行う必要があります。

 

成年後見制度 登記事項証明書の役割

1.成年後見登記は何のためにするの?

成年後見登記制度により、

「取引の相手方が、法律上求められる判断能力を有しているかどうか」

を確認する手段が確立されたと言えます。逆説的に言えば、

「成年後見登記がなされているかどうかの確認を怠り、取引をしてしまった者は保護されない」

とも言えます。

日常的な買い物で成年後見登記の有無を尋ねられることはありませんが、不動産売買などの高額取引で疑義が生じた場合には、登記事項証明書の提出が必要な場面もあることでしょう。

また、そもそも行政機関から、ある種の営業許可を得たい場合などで成年後見登記されていないことが条件である場合には、登記事項証明書の提出は必須となっています。

成年後見に関する登記事項証明書には2種類があり、

①登記事項証明書・・・成年後見登記されている内容の証明

②登記されていないことの証明書・・・成年後見の利用がないことの証明

上記に分かれています。

2.どこに行けば、登記事項証明書がもらえるの?

成年後見に関する登記の申請先は東京法務局のみです。全国にある登記所(法務局)では登記自体の申請を受け付けてくれることはありません。

しかし「証明書」は全国の法務局で受け取りが可能です。

また不動産登記や法人(会社)の登記と異なり、だれでも登記事項証明書を受け取ることができるわけではありません。

成年後見に関する登記事項証明の交付は後見人等や4親等親族に限定されています。

 

成年後見における保佐人制度

1.成年後見制度における保佐とは?

保佐とは精神障害によって判断能力が低下している場合、家庭裁判所がサポートする人(保佐人)を選任する制度です。

後見が「判断能力がほとんどない」という状態を指すのに対して、保佐は日常的な買い物は1人で何とかできるが、不動産などの重要な売買契約を結ぶための判断ができない人を指します。

申し立てをするのは、本人・配偶者・四親等血族です。

2.保佐人が支援する重要な行為とは?

保佐制度を利用すると、「一定の重要な行為」が単独では行えなくなります。裏を返せば、「一定の重要な行為」を行うために保佐人の同意を必要とすることで本人を保護するわけです。

「一定の重要な行為」は民法で規定されています。一部をご紹介します。

・預貯金の払い戻し
・金銭の貸し借り、保証人の引き受け
・不動産売買、賃貸借
・遺産分割

3.保佐利用の効果は?

先に説明したとおり、保佐の利用を開始すると「一定の重要な行為」に保佐人の同意が必要となります。

保佐人の同意なく行った「一定の重要な行為」は取消の対象です。そのため、家庭裁判所に申し立てを行えば、「一定の重要な行為」について保佐人に代理権を与えることができます。

また保佐人が本人の希望にかたくなに同意を与えない場合には、家庭裁判所が変わりに同意を与えるという救済策も用意されています。

 

成年後見における補助人制度

1.成年後見制度における補助とは?

補助とは、本人が1人で財産管理を行うのに不安がある場合、家庭裁判所がサポートする人(補助人)を選任する制度です。

後見が「判断能力がほとんどない状態」、保佐が「著しく劣る」のに対して補助は日常生活の一部支援という位置づけです。

申し立てをするのは本人・配偶者・四親等血族ですが、開始には本人の同意が必要です。

本人には日常生活を1人で送る力があるわけですから、親族が勝手に補助制度を開始することはできません。

2.補助で支援する内容と効果は?

補助では本人の希望する行為についてのみ、補助人に代理権を与えることができます。

同意権・取消権については保佐で説明した「一定の重要な行為」に限ります。

同意権・取消権を制限しているのは、本人の判断力・意思を尊重するとの方針だからです。

 

労務専門コラム 認知症・成年後見編

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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