①基礎から学ぶ成年後見制度
■成年後見制度の概要
1.成年後見制度の立案理念
成年後見制度が立案された背景には、次の3つの理念があると言われています。
1.本人の意思の尊重
2.自己決定の尊重
3.ノーマライゼーションと本人保護の理念の調和
つまり、様々な環境に身を置く人々が同じ一つの社会で共生する大原則の下でも、特定の方々は保護すべきであるという考え方です。
2.成年後見制度の目的
成年後見制度の目的は、成年後見人が本人に代わって本人の「権利・利益」を擁護する制度です。
言い換えれば、当人の為に本当に必要であるならば、成年後見人は本人の財産から積極的にお金を支出して良いという事です。
逆な側面から考えると、本人の為に「より多くの財産を残す事」を重視するのではありません。
3.契約社会における判断能力
・介護サービスを利用する契約を締結する
・消費者として何か売買契約を締結する
このような「契約」を行うには、法律上の判断能力が必要です。
成年後見制度は、判断能力が不十分な方が、自らの権利・利益を守るために有効な契約が成立することを支援する仕組みです。
■成年後見人の選任方法は?費用は?
1.成年後見人の選任
認知症の親族のために、成年後見の申し立てをしようと考えた方がいるとします。
この場合、すでに認知症の本人には判断できる能力がないため、成年後見制度のうちでも「法定後見」という手続きとなります。親族の申し立てに基づき、家庭裁判所が成年後見人を選任するわけです。
成年後見の申し立てをする親族は、成年後見人となるべき候補者を添えて提出することができます。家庭裁判所は、本人の置かれている生活環境を総合的に判断し、成年後見人を選任します。
成年後見人には、親族自身・法律の専門家・福祉の専門家などが選任されるのが一般的です。
2.法定後見制度を利用する場合
法定後見制度の利用開始には、一般的には11万円程度の金額が必要です。
内訳は次の通りです。
・申立費用 800円
・登記費用 2,600円
・切手代 4,300円
・鑑定費用 100,000円(司法統計によると5~10万円)
・戸籍謄本等 3,000円
申立書自体の記載はそれほど難しいものではありませんので、自分で(親族などが)手続きすることも可能です。
手続きを弁護士・司法書士に依頼すると数万円の手続き費用がかかります。
3.成年後見人の報酬
本人の財産から成年後見人が報酬を受け取りたい場合、家庭裁判所に対して「報酬付与の審判申立」が必要です。
この申立てを受けた家庭裁判所は、成年後見人の業務内容を考慮した上で報酬を決定します。
なお報酬を前払いで受け取ることはできず、実費についても公共交通機関についてのみとなります。
4.成年後見監督人の選任
成年後見人が親族であろうと、法律・福祉の専門家であろうと、家庭裁判所が必要と判断した場合には、成年後見監督人が選任されます。
成年後見監督人は、成年後見人が本人のために正しく後見事務を行うかどうかを監督するのが仕事です。
しかし、その監督自体が事後的なものであるため、不正が見抜けない恐れがあると指摘されています。
■労務専門コラム 認知症・成年後見編
>>①基礎から学ぶ成年後見制度
>>②成年後見・保佐・補助の仕組み
>>③老いと死の不安を解消する6つの支援制度
>>④基礎から学ぶ任意後見制度
>>⑤財産管理契約・日常生活自立支援・死後事務契約
>>⑥悪質商法・詐欺商法から高齢者を守る
>>⑦認知症と不動産売却・遺産分割(相続)
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