総合事業とは何か?1号訪問事業?予防介護?総合事業の制度枠組みを介護保険法に基づき徹底解説
介護障害福祉事業の経営者の皆さん、総合事業とは何か正確に理解されていますでしょうか?1号事業や予防介護など、紛らわしい用語がたくさん登場しますが、サービス提供されている中で正しく分類できているでしょうか?今回は介護障害福祉事業の経営者のために総合事業について詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・総合事業の制度の枠組みを理解したい方
・予防介護と総合事業の違いが理解できていない方
・総合事業の現状を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年12月)現在、職員数53名、介護障害福祉事業の累積支援実績648社(北海道~沖縄)、本社を含め7つの営業拠点で運営しています。コラムでは総合事業について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
要介護者、要支援者の実情
令和5年8月、厚生労働省の発表によると、要介護5の認定を受けている方は59万人、要介護4が89万人、要介護3が92万人、要介護2が117万人、要介護1が145万人です。これらを合計すると506万人となります。要介護認定1から5に該当する方には国が運営する介護保険から介護給付、具体的には介護保険サービスの提供を受けることができます。
一方、要支援2の方が97万人、要支援1が100万人、合計197万人となります。要介護者と異なり、要支援者とは
「このままだと日常生活に支障が生じるため、適切な支援を実施して、状態の改善や悪化防止に努める必要のある方々」
を指します。要支援者に対しては一部、国が運営する介護保険から予防給付を受けることができますが、訪問介護や通所介護に関しては平成29年、市町村が運営する総合事業に移管されました。これら軽度の方々に関しては「地域の実情に応じた適切なケアを実施しよう」というのが建前ですが、本音の部分は「介護保険財政の悪化による介護保険からの切り離し」であると理解されています。
実は現在、要介護1、2の方々についても、将来介護保険から切り離し、市町村が運営する総合事業へ移管してはどうか、という議論がなされています。仮に要介護1、2の合計約260万人が総合事業へ移管した場合、報酬単価が低下するため介護保険事業所にとっては死活問題となります。
場合によっては多くの介護保険事業所が総合事業から撤退することにも繋がります。そのような事態に発展すると、要支援1~要介護2の比較的軽度の方々のケアが不十分となり、健康状態がさらに悪化し要介護3以上に進行する可能性が指摘されています。結果的には介護保険財政をさらに悪化させることにも繋がりかねないわけです。
このような背景を十分ご理解頂いた上で、総合事業の制度の枠組みについて詳しく解説していきたいと思います。
総合事業の枠組み
まずは大分類から見ていきましょう。国が運営主体となる保険給付は介護保険法第18条により介護給付と予防給付に分類されます。介護給付の主なものは居宅サービスです。要介護1~5の方々に対して訪問介護、訪問看護、通所介護の他、地域密着型サービスを提供します。
予防給付は介護予防サービスです。要支援1~2の方を対象とします。元々はここに予防型の訪問介護や通所介護が分類されていましたが、平成29年に介護保険から切り離され、現在は介護予防訪問看護、介護予防通所リハビリ、地域密着型予防介護サービスなどが残っているだけです。
続いて介護保険法第115条の45に規定される地域支援事業です。実施主体は市町村です。地域支援事業は115条の45の条文の中で1項から3項に分類されます。1項が介護予防・日常生活支援総合事業、略して総合事業です。総合事業はさらに1号と2号に分類され、ここで言う1号が皆さんよく耳にされる、1号総合事業です。1号総合事業には訪問事業、通所事業を含め4種類が規定されています。
2号事業は一般介護予防事業と呼ばれ、介護予防把握事業、介護予防普及啓発事業を含め5種類が規定されています。
また総合事業とは別に地域包括支援センターの活動を規定する115条の45第2項、および実施が市町村の判断に委ねられている3項の任意事業が規定されています。
地域支援事業の対象者としては要支援1~2の方に限定されず、市町村が策定するチェックリストにより支援が必要であると判断する方々も対象となります。
以上の通り総合事業は要支援者に直接サービス提供する1号事業と、間接的に制度の充実を目指す2号事業に分類されるということが分かります。
総合事業の問題点
このように介護保険法の条文から全体像を整理すると、一見合理的な制度の様にも思えますが、総合事業には様々な問題点も指摘されています。
具体的には市町村による提供サービスと報酬単価のバラツキです。例えば市町村の境界が道路1本で隔てられる場合、向かいに住んでいる住民間で受けられるサービスに差が生じます。事業所側の立場でも同様に、報酬単価に差が生じるためサービス提供が極めて不安定なものとなります。
市町村側に着目しても、依然として総合事業に独自性、地域的な特色を組み入れることに苦慮しているケースがあるようです。
しかし冒頭でも述べましたが、総合事業を充実させることが要介護者の増加を抑制し、ひいては我が国の健康長寿施策に貢献することは疑いのない事実です。今後、長期目線で総合事業の発展を見守っていかなければならないと考えています。
まとめ
総合事業について介護保険法の条文に基づき解説しました。これで1号総合事業や予防介護などの用語の位置付けがご理解いただけたのではないかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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