【令和6年改正】処遇改善加算一本化|3つの加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)を統合
お詫び
【2024.3.12】ご依頼多数により、令和6年4月15日を期限とする処遇改善計画書作成業務の受付は終了いたしました。多数のお問い合わせを頂き、誠にありがとうございます。
【2024.3.5】多数のお問い合わせを頂いており、無料電話相談のご予約が取りにくい状態です。申し訳ございません。
処遇改善加算の制度にまたまた大きな変更が予定されています。具体的には令和6年6月に現在の3つの加算制度、処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算を1本化するという内容です。また令和6年2月には2年前と同様に、先行で補助金の交付も予定されています。今回はこれらの改正点に絞って解説します。
このコラムの推奨対象者
・令和6年6月、処遇改善加算制度の改正について知りたい方
・処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の一本化について知りたい方
・これから処遇改善加算を取得しようと思っている方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年12月)現在、職員数53名、介護障害福祉事業の累積支援実績648社(北海道~沖縄)、本社を含め7つの営業拠点で運営しています。コラムでは総合事業について詳しく解説します。
同じ内容を解説する動画もご準備しています。
令和6年度処遇改善加算改正4つのポイント
平成24年に創設された処遇改善加算は、その後数度のマイナーチェンジを繰り返した後、令和元年、経験技能ある介護福祉職員に重点的に加算額の配分を行う特定処遇改善加算の創設を迎えました。その後令和4年、月給段階の賃金改善を目的としたベースアップ等支援加算が創設されて2年も経たないうちに、これら3つの加算制度を1本化することになります。
年度 | 変更点 |
H24年 | 処遇改善加算 創設 |
H27年 | 改正 |
H29年 | 改正 |
H30年 | 改正 |
R1年 | 特定処遇改善加算 |
R4年 | ベースアップ等支援加算 |
R6年6月 | 3制度一本化 |
この10年間、処遇改善加算の制度改変に振り回されてばかりでしたので、内心色々な思いがあるのは確かですが、介護障害福祉業界の発展と待遇改善を心から願いつつ、令和6年度の制度改変について解説したいと思います。
令和6年度の改正は大きく4つのポイントに分類することができます。
令和6年度改正の4つのポイント
①処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の一本化
②経験技能ある職員、一般介護福祉職員、その他の職種間の配分ルールの撤廃
③職場環境要件の見直し
④月給配分比率の見直し
1つずつ順を追ってご説明します。
処遇改善加算一本化
まずは最も重要となる、3つの処遇改善加算の一本化です。この背景には制度の複雑さ、特に特定処遇改善加算の配分計算の複雑さがあります。介護保険事業所の場合、ご覧の通り3つの加算のうち、処遇改善加算、ベースアップ等支援加算では取得率が90%を超えているのに対し、特定処遇改善加算では77%に留まっています。さらに障害福祉事業では66.8%に留まります。
皆さんもご承知の通り、特定処遇改善加算の計画書と実績報告書は記載項目が複雑すぎ、専門家の私たちでさえ、頭の中が混乱する場合があります。この事が理由で特定処遇改善加算の取得率が低くなっていたものと思われます。
そこで令和6年度の一本化議論が進んだわけです。先に現行制度のおさらいをしておきましょう。
現行の処遇改善加算は加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに、特定処遇改善加算は加算Ⅰ、Ⅱに分かれ、ベースアップ加算は取得するか否の二者択一です。介護保険事業から訪問介護と通所介護、障害福祉事業から就労継続支援B型と放課後等デイサービスを例にとってご説明します。なおその他の事業の加算率についてはこちらのコラムをご参照下さい。
例えば訪問介護事業で処遇改善加算Ⅰ、特定処遇改善加算Ⅰ、ベースアップ等支援加算を取得している場合、合計加算率は22.4%となります。これが令和6年6月から新たな処遇改善加算に一本化されるわけです。ここでは新加算と呼ぶことにします。
先ほどの例で処遇改善加算Ⅰ、特定処遇改善加算Ⅰ、ベースアップ等支援加算を取得している場合、新加算Ⅰでの加算率も同様に22.4%となります。また処遇改善加算Ⅰ、特定処遇改善加算Ⅱ、ベースアップ等支援加算ありの場合、合計加算率は20.3%となり新加算Ⅱの加算率と一致します。
このように考えると一見合理的な制度改変のようにも思えますが問題発生も想定されています。具体的に説明します。
現行の制度では処遇改善加算は加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、特定処遇改善加算は加算Ⅰ、Ⅱ、またはなし、ベースアップ加算はありかなし、となり組み合わせは3×3×2で18通りとなります。一方の新加算には4通りしかなく、場合によっては新加算率が現行加算率を下回る可能性があります。
そこで経過措置として、新加算で加算率が下がっても1年間は従前の加算率を維持することが認められます。
もう一度前の図に戻って新加算の要件を解説します。
追加情報!
令和6年1月22日追加:審議会の検討結果を受けて、上記表に加えて訪問介護で+約2%、通所介護で+1%になります。
- 新加算Ⅳ
- 新加算Ⅳでは賃金体系の整備と研修の実施、職場環境要件への適合、加算Ⅳの受給額の1/2以上を月給配分することが要件となります。この1/2要件については後程詳しく解説します。この要件は現行処遇改善加算Ⅱ以上、かつベースアップ等支援加算を取得している場合は問題なくクリアできます。
- 新加算Ⅲ
- 新加算ⅢではⅣの要件に加え、資格や勤続年数で昇給する制度の導入が求められます。現行の処遇改善加算Ⅰを取得している場合は問題なくクリアできます。
- 新加算Ⅱ
- 新加算Ⅱからは現行の特定処遇改善加算の要件が加わります。新加算Ⅲ、Ⅳの要件に加え、改善後の年収が440万円以上となる人が1人以上、職場環境の改善と見える化の実施が必要となります。
- 新加算Ⅰ
- 新加算ⅠはⅡからⅣの要件に加え、経験技能ある職員の配置、具体的には現行の特定処遇改善加算Ⅰの要件である、介護福祉士等配置要件の達成が必要となります。この点は以下のコラムをご参照下さい。
1年間の猶予期間を経て、令和7年4月から適用されるため、現行の合計加算率が新加算を下回っている場合、早期に対処が必要となります。
職種間配分ルールを撤廃
2つ目の改正ポイントは職種間配分ルールの撤廃です。
現行の特定処遇改善加算では、職員を
(A)経験技能ある介護福祉職員
(B)一般介護福祉職員
(C)その他の職種
の3グループに分け、それぞれの配分比率を1:1:0.5以下にすることが求められています。新加算制度では、
介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することが望ましいが、現行の処遇改善加算や特定処遇改善加算に見られるような、職種に着目した配分ルールは設けず一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める
とされています。
職場環境要件の見直し
3つ目の改正ポイントは職場環境要件の見直しです。現行制度の職場環境要件は、ご覧の6区分にそれぞれ4つの項目があり、処遇改善加算では全体から1つ以上を、特定処遇改善加算では6区分から各1つ以上を選択する必要があります。
新加算では生産性向上のための業務改善の取組を8項目に増やしたうえで、新加算Ⅰ・Ⅱでは6区分から各2つ以上を選択し、かつ生産性向上の区分に限り3つ以上を選択する必要があります。また選択必須項目も設けられています。
新加算Ⅲ・Ⅳでは6区分から各1つ以上選択し、かつ生産性向上の区分に限り2つ以上選択する必要があります。生産性向上に重点を置こうとする政府の姿勢を垣間見ることができます。生産性向上の8項目を概観しておきましょう。
生産性向上のための業務改善の取組 | ⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会の活用等)を行っている ⑱現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している ⑲5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている ⑳業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている ㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。居宅サービスにおいてはケアプラン連携標準仕様を実装しているものに限る)及び情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末、インカム等)の導入 ㉒介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)の導入 ㉓業務内容の明確化と役割分担を行った上で、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)については、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担い、介護職員がケアに集中できる環境を整備 ㉔各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 |
⑰⑱が選択必須項目となります。この2項目+1項目を選択することにより、生産性向上区分をクリアすることができます。一方で特別枠が2つ設けられているため、少しふれておきたいと思います。
見守り機器・インカム等のICT機器導入による加算取得があれば、それだけで生産性向上区分をクリアすることができ、また小規模事業者は他法人との共同により㉔の取組を実施すれば、それだけで生産性向上区分をクリアすることができます。
なお、急激な要件変更を避けるため、令和6年度中に限り、職場環境要件の実施は猶予されます。
月給改善比率の見直し
最後の改正ポイントです。現行の加算制度では3つの加算それぞれについて、月給または賞与で配分しつつ、ベースアップ等支援加算に限り、2/3以上を月給配分するという要件が定められています。
これが新加算に移行すると、新加算Ⅳに相当する部分の1/2以上を月給配分する必要があります。具体的には図でいうピンクの部分の比較計算を行う必要があります。あくまでも月給配分比率の変更であり新たな賃上げを行う必要はありません。要件を満たさない場合、賞与での配分額を月給に移す措置が必要となる、との趣旨です。
ただし新加算取得以前にベースアップ加算を取得していなかった事業所は旧来の2/3基準もクリアが必要となる点に注意が必要です。なおここで説明した内容についても、急激な要件変更を避けるため、令和6年度中に限り実施が猶予されます。
令和6年2月補助金
補足的に令和6年2月に予定されている補助金についても説明しておきます。これは4月の春闘に先立ち賃上げを実施する事業所に対して、令和6年2月~5月の賃金引上分を補助金として交付するものです。春闘とは労働組合と企業の賃上げの交渉のことをいいます。
令和4年2月に同様の補助金交付がありましたが、その時の補助金は同年10月に導入される予定だったベースアップ等支援加算の前倒し実施の位置づけでした。今回の補助金は純粋な賃上げが必要となりますが、令和6年2月から5月の期間に昇給の予定があれば補助を受けることができる可能性があるため、ぜひ申請をご検討下さい。
補助金はベースアップ等支援加算に上乗せで給付される予定です。そのため補助金申請前段階でベースアップ等支援加算の取得が必要になるものと思われます。また補助金額は固定ではなく、各事業所の総報酬にサービス種別ごとの交付率をかけて計算されます。
令和4年2月の補助金と同様に事業所から都道府県へ処遇改善計画書を添えて申請し、都道府県が交付を決定します。事業所は実績報告書を提出する必要があります。
まとめ
以上が令和6年6月の改正内容です。早期の対策が必要となるのは、現行18通りある加算パターンが4通りに集約される点です。自社の事業所の加算パターンを再確認したうえで、新加算4パターンのどの区分に該当するのかを早期に確認しましょう。
2月補助金の申請準備と合わせて、6月法改正のために早期の体制構築が必要となる場合、一度当社までお問い合わせ下さい。
顧問契約乗換えプラン
「顧問税理士・社労士が処遇改善加算に詳しくない・・・」そのような悩みを抱えている経営者様は、是非当社の顧問契約乗換えプランをご検討ください。
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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