【令和6年度法改正対応】訪問介護における身体介護の基本報酬|20分未満の身体介護と2時間ルール|訪問介護の開業講座⑫
タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第12回のテーマは「訪問介護における身体介護の基本報酬」です。20分未満の身体介護と2時間ルールについて分かりやすく解説します。
このコラム推奨対象者
・身体介護の基本報酬を理解したい方
・訪問介護の2時間ルールとその例外を理解したい方
・2時間ルールが適用されない20分未満の身体介護02の算定要件を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数76名、累積顧客数は北海道から沖縄まで806社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは訪問介護における身体介護の基本報酬、20分未満の身体介護01・02、2時間ルールについて詳しく解説します。
身体介護の基本報酬
初めに令和6年に改定された、身体介護の基本報酬から確認します。
身体介護とは利用者の身体に直接触れて行う入浴、排せつ、食事などの介助のことを指し、所要時間に応じて単位数が設定されています。
20分未満の場合163単位、20分以上30分未満の場合244単位、30分以上1時間未満の場合387単位、1時間以上の場合567単位に30分ごとに82単位を加える計算となります。
例えば1時間以上1時間30分未満の場合は567単位、1時間30分以上2時間未満の場合649単位となります。
ここで説明している所要時間は、実際に行われた身体介護の時間ではなく、訪問介護計画上の時間を指します。したがって「あと少しサービスを提供すれば大きい方の単位が請求できたのに」といった問題は生じません。
1分あたりの単位数を比較
続いて身体介護のサービス単位数を、1分あたりに置き換えて比較してみます。20分未満の場合8.2単位、以下所要時間が増えるにしたがって1分あたりの単位数は少しずつ下がります。
居宅訪問に対する移動時間が考慮されており、サービス時間が長いほど業務が効率化するため、単位数を逓減させていることを意味します。
ここで1つの問題が生じます。例えばサ高住など、訪問介護事業所と同じ建物内に居住する利用者や、事業所の近くに居住する利用者に対して、長時間のサービス提供をするよりも、短時間のサービス提供を複数回行う方が、単位数が大きくなるのではないか、との問題です。
具体的には、1時間30分以上、2時間未満の身体介護の単位数は649単位ですが、20分以上30分未満の身体介護を4回提供すると244単位×4で976単位となるという意味です。
このような意図的な単位数の操作を防ぐため、訪問介護には2時間ルールが設定されています。
訪問介護の2時間ルール
ここでは訪問介護の2時間ルールについて解説します。先ほど解説した通り、1回の訪問介護を複数回に分割して提供することは制度の公平性を欠きます。
そこでそれぞれの訪問介護サービスの提供間隔が2時間未満である場合、合算した所要時間で単位数を計算するという制度が設けられています。これが一般的に「訪問介護の2時間ルール」と呼ばれるものです。
訪問介護の2時間ルールを設けることで、意図的な単位数の操作を防ぐことに繋げています。
訪問介護の2時間ルールの例外
先ほど、訪問介護の2時間ルールが設けられている理由について解説しました。しかし利用者が置かれている状況によっては、2時間を空けずにサービス提供せざるを得ないケースが生じます。このような場合にも2時間ルールを適用することは、介護サービス自体の価値を落とすことにも繋がりかねません。
そこで、訪問介護の2時間ルールに4つの例外を設けることで、介護サービスの品質維持に繋げています。
訪問介護の2時間ルールが適用されない4つの例外
①緊急訪問が必要な場合
具体的には緊急時訪問介護加算を算定する場合です。緊急時訪問介護加算については別のコラムで詳しく解説します。
②「看取り期の利用者である」と医師が診断した場合
③通院時乗降介助を算定する場合(身体介護とは別の基本報酬)
通院時乗降介助は往復それぞれで算定することになるため、病院内介助が短時間で済むケースを想定し、2時間ルールが適用されません。
④20分未満の身体介護を必要とする場合
次の項目では④「20分未満の身体介護を必要とする場合」について深堀していきたいと思います。
20分未満の身体介護
続いて、20分未満の身体介護について解説します。初めに整理しておきますが、20分未満の身体介護すべてに2時間ルールが適用されないわけではありません。
20分未満の身体介護はサービスコード内の略称で、身体介護01、02に区分して表されます。身体介護1、2とは異なりますので注意が必要です。
0のつかない身体介護1は20分以上30分未満の身体介護を指し、身体介護2は30分以上1時間未満の身体介護を指します。20分未満の身体介護が後発的に設けられた区分であるため、前に0を付けることで区別しているわけです。
話を戻します。
身体介護01、02はともに20分未満の身体介護を指しますが、01は2時間ルールの適用を受ける一方、02は適用を受けません。つまり身体介護01は全ての訪問介護事業所で、利用者を問わず算定できるサービスコードであり、身体介護02はその算定に一定の条件が課されます。次の項目では身体介護02の算定要件を確認します。
2時間ルールが適用されない20分未満の身体介護02
本編の最後に、2時間ルールが適用されない20分未満の身体介護02について解説します。このサービスコードを算定するためには、事業所の体制要件と利用者要件を同時に満たす必要があります。
事業所の体制要件
事業所の体制要件としては2点あります。
1点目は24時間体制で、利用者またはその家族からの電話等に応じることができる点です。
2点目は訪問介護の指定に加えて、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の指定を受けて一体運営している点です。要介護3以上の利用者を対象とする場合は、同指定を受ける計画のみで足ります。
事業所の体制要件は届出書を提出する必要があります。
算定できる単位数の1か月合計は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のイの(1)を限度とすることで介護報酬の整合性を図っています。
利用者要件
続いて利用者要件としては2点あります。
1点目は要介護度別の要件です。要介護度1、2の場合、日常生活自立度ランクⅡ、Ⅲ、ⅣまたはMに該当する認知症利用者、要介護度3以上の場合、障害老人の日常生活自立度ランクB以上の利用者が対象となります。
2点目はサービス担当者会議で、1週間のうち5日以上、頻回の訪問を含む20分未満の身体介護が必要と判断されることです。この場合のサービス担当者会議は、前3カ月の間に1度以上、サ責が参加していなければなりません。
事業所の体制要件と利用者要件を満たす場合に限り、身体介護02を算定することができ、2時間ルールの適用を受けずに頻回の身体介護を提供することができる点を理解しましょう。
まとめ
「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第12回は「訪問介護における身体介護の基本報酬」について解説しました。20分未満の身体介護01、02についてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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