このコラムを読むと分かること(3分で読めます)

・最低賃金のしくみが理解できる
・最低賃金の計算方法が理解できる
・介護事業における登録スタッフの最低賃金について理解できる

最低賃金額は上昇を続けており、パートや登録スタッフを多く雇用している介護事業への影響は大きい。このコラムでは、最低賃金の仕組みから、具体的な計算例までをわかりやすく解説する。

コラムの目次

①最低賃金とは
②最低賃金の対象者は?
③登録スタッフなどの最低賃金額はどのように計算するのか?
④最低賃金額の具体例は?
⑤まとめ

①最低賃金とは

最低賃金は、最低賃金法で定められた賃金の最低額であり、時間あたりの金額(時給)で定められる。使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、その場合の賃金は最低賃金額で定めたこととされる。

なお、(地域別)最低賃金は都道府県ごとに決められ、令和元年10月から適用される最低賃金額をみると、最高が東京の1,013円、最安は青森、沖縄などの790円。全国平均は901円となっている。またすべての都道府県で前年から上昇している。

府県名 改定後 改定前 府県名 改定後 改定前
大阪府 964 936 奈良県 837 811
兵庫県 899 871 和歌山県 830 803
京都府 909 882 滋賀県 866 839

 最低賃金の種類

最低賃金額は、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の2種類がある。地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ定められる。

また地域別最低賃金は、

[1] 労働者の生計費
[2] 労働者の賃金
[3] 通常の事業の賃金支払能力

を総合的に勘案して定められる。特定(産業別)最低賃金は、一定の産業別に決められるものであるが、介護事業は対象ではない。

最低賃金の計算に含めないものは?

最低賃金の計算を行う際に、次の金額は除外される。

・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
・割増賃金(時間外割増、休日割増、深夜割増)
・通勤手当
・精皆勤手当
・家族手当

罰則

地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科される。

特定(産業別)最低賃金額の場合は、最低賃金法には罰則規定がないが、厚労省のリーフレットには「労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められている」と記載されており、注意が必要である。

②最低賃金の対象者は?

地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用され、介護事業に多いパートや登録スタッフ、その他アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用される。

なお、法改正により介護事業分野への外国人技能実習生の受け入れが可能になったが、当然最低賃金法の対象となる。外国人技能実習生を受け入れる場合は特に留意頂きたい。

派遣労働者の場合は?

派遣労働者には、派遣先の最低賃金が適用される。派遣元の使用者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握する必要がある。

③登録スタッフなどの最低賃金額はどのように計算するのか?

パート、アルバイトの場合

シンプルに時給が最低賃金額(時間額)以上となっているかを確認する。

日給制の場合

「日給÷1日の所定労働時間」が最低賃金額(時間額)以上となっているかを確認する。

月給制の場合

「月給÷1箇月平均所定労働時間」が最低賃金額(時間額)以上となっているか確認する。

1箇月平均所定労働時間は、週所定労働時間×52週÷12により計算できる。

出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合(登録スタッフなど)

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で割って、時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較する。介護事業における登録スタッフはこのケースに該当する

なお、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制など、賃金形態が混在している場合は、それぞれの場合の時間額を計算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較する。

④最低賃金額の具体例は?

ここでは、介護事業に多い登録スタッフも想定した具体例を紹介する。

(1)日給と月給が混在している場合

【計算条件】

▲▲県の介護事業所で働く正社員Aさん
▲▲県 最低賃金額 1,000円
Aさんの賃金:
基本給(日給)150,000円(=7,500円×20日)
職務手当(月給)24,000円
通勤手当(月給)8,000円
Aさんの労働時間:
1日の所定労働時間 8時間
1か月の平均所定労働時間 160時間

【計算結果】

基本給(日給)を時間額に換算すると、

7,500円÷1日の所定労働時間(8時間)=937.5円 50銭以上は切り上げて938円

Aさんに支払われた賃金のうち、通勤手当は算入しないため、職務手当(月給)を時間額に換算すると、

24,000円÷1か月の平均所定労働時間(160 時間)=150円

合計すると、938円+150円=1,088円

結果、最低賃金額1,000円を上回っている。

(2)完全歩合給制の場合 (介護事業の登録スタッフ等)

【計算条件】

□□県の介護事業所で働く登録スタッフBさん
□□県の最低賃金は、時間額850円
Bさんの賃金:
歩合給 136,000円
時間外割増賃金 5,100円(136,000円÷200時間×0.25×30時間)
深夜割増賃金 2,550円(136,000円÷200時間×0.25×15時間)
総支給額 143,650円
Bさんの労働時間:
月間総労働時間 200時間
所定労働時間 170時間
時間外労働時間 30時間
深夜労働時間 15時間

【計算結果】

はじめに、Bさんに支給された賃金から、最低賃金の対象とならない賃金を除く。

除外される賃金は、時間外割増賃金、深夜割増賃金であり、

143,650円-(5,100円+2,550円)=136,000円

この金額を月間総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算すると、

136,000円÷200時間=680円

結果、最低賃金額850円を下回っており、この場合は最低賃金法違反となる。

⑤まとめ

このコラムで解説した最低賃金のポイントは次のようになる。

・最低賃金額は地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の2種類あり、地域別最低賃金は47都道府県ごとに決められている。

・介護事業は、地域別最低賃金が適用される。

・令和元年10月から適用される最低賃金額は、東京が1,013円となり、すべての都道府県で前年から上昇している。

・最低賃金額はすべての労働者に適用され、介護事業への受け入れが決まった外国人技能実習生も対象となる。

・最低賃金額の計算は賃金形態に応じた計算式で算出する。介護事業で多い登録スタッフは歩合制に近く、計算方法が少し異なるので注意が必要。 10月から最低賃金額が改定される。このタイミングで、あらためて介護事業で多いパートや登録スタッフの賃金について確認してみることをお勧めする