介護事業を開業する前に知っておきたい 介護人材確保の課題

介護業界における人材の問題

このコラムを読むと分かること(3分で読めます)

・介護人材不足の背景・原因
・介護人材不足の対策
・介護人材不足の対策事例

慢性的な人材不足の時代である。特に介護業界は働き手が不足しており、事業所によっては1年以上求人問い合わせがないという話も聞く。団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、人手不足がさらに深刻化する。このコラムでは介護業界における人材不足の背景や原因、対策、事例等を解説する。

コラムの目次

①介護人材不足の背景
②介護人材不足の原因
③介護人材不足の対策
④介護サービスにおける人材問題まとめ

①介護人材不足の背景

1.少子高齢化

平成30年度の総人口1億2,671万人のうち、65歳以上の高齢者は27.7%。4人に1人が65歳以上である。生産人口は減少していくが、高齢者は年々増加している。

2.核家族化と女性の社会進出

介護保険施行以前は、高齢者の身の廻りの世話は、主に女性(主婦層)が担っていた。しかし、景気の悪化により、世帯収入は減少。

女性(主婦層)の就労率が増えた結果、共働き世帯が増加し、両親と同居できる世帯が少なくなった。このような時代(2000年)に創設されたのが介護保険制度である。

②介護人材不足の原因

1.介護需要者の増加

医療技術の進歩により、平均寿命は年々伸びている。平均寿命が伸びるに伴い、介護を必要とする人は年々増加している。一方で生産人口が減少し、少子高齢化がさらに進んでいる。

2.介護スタッフの採用が困難な理由          

「採用が困難」
「離職率が高すぎる」
「人材不足が理由で事業拡大できない」

介護業界で問題とされる事象である。理由として

「同業者との人材獲得競争が厳しい」
「他産業に比べて、労働条件が悪い」
「景気が回復し、介護業界へ人材が集まらない」

などが挙げられる。

3.離職理由

介護業界自体の平均給与の低さも人材不足を招いている原因である。全産業の平均月給は約30万円であるが、介護職員の平均が約21万円と低い給与水準である。

しかし、給与が低いことが1番の原因ではなく、離職理由の上位は以下の通りである。

1位「人間関係」
2位「結婚・出産等」
3位「理念や運営への不満」

4.介護業界のイメージ

きつい・きたない・きけん=3Kと以前から言われているネガティブイメージが払拭できていないことも、介護業界に人が集まらない理由の一つである。

③介護人材不足の対策・対策事例

1.対策

介護職の待遇面で国は様々な施策を行っている。処遇改善加算は平成24年から実施されており、年々改善金の支給金額が増加された。

2019年には勤続10年以上の介護福祉士には8万円相当の改善を実施。介護職のキャリアアップを評価し業界への定着を狙っている。

2.労働環境の整備

環境整備として、ユニットケアシステムの導入を実施。ユニットケアとは、特別養護老人ホーム等の住まい系施設で、入居者10人程度の小人数グループを1つのユニットとし、その1つのユニットを常時同一メンバーで介護することをいう。

少人数でチームを形成し、職場の人間関係を悪化させない狙いがある。

3.人材の活用

介護人材不足対策として、外国人材の活用を実施。EPA(経済連携協定)を結び、東南アジア(フィリピン・ベトナム等)の各国から、介護福祉士候補として外国人労働者の受け入れを行っている。これにより、一定レベルの人材を3~5年確保できる。

4.ICTの活用

介護ロボットや入浴用リフトの導入などを行い、介護職自身の身体的負担の軽減を図っている。

また、タブレット等のツールを使用し、介護記録の簡素化を行うことで精神的負担の軽減を実施。最新の技術を導入することで離職を減らす施策を講じている。

5.事例

都道府県や市町村は、介護人材確保の課題解決に取り組んでいる。

A市では、実態調査としてアンケートを介護職に実施。アンケートの内容は仕事のやりがいやストレス、コミュニケーション等。

アンケート結果を「見える化」して公表。事業者同士で職場改善事例の共有やディスカッション、ワークショップを実施した結果、具体的な対策を講じることができ、人材定着の改善に繋がった。

④介護サービスにおける人材問題まとめ

サービス業である介護事業の根本はスタッフである。高齢化社会を迎え、介護サービスの維持・質を担保するためにも、介護人材の確保は今後、重要な課題となる。

今後、進行する少子高齢化の流れは食い止めることはできない。国は介護職員の処遇改善として平均給与のアップ、また、外国人労働者の活用等の様々な施策を行い、具体的な対策を講じてきている。

介護サービス事業所自身も人材確保に向けて、国の施策を理解し、労働環境や労働条件の改善、給与の改善の取り組みを行い、求職者にアピールすることが大切だ。生産人口が少ない中、よりよい人材を確保してくことが課題である、