無断欠勤が続く従業員を解雇、または退職の意思ありとして、自主退職扱いとすることはできるか?

無断欠勤が続く従業員を解雇、または退職の意思ありとして、自動的に退職扱いとすることはできるか?

このコラムを3分読めば理解できること

・無断欠勤が続く従業員に関する退職手続きの進め方が理解できる
・何日無断欠勤が続けば解雇できるか理解できる
・自主退職と解雇の注意点が理解できる

従業員が無断欠勤した。いったい何日無断欠勤が続けば退職または解雇にできるのだろう。このコラムでは介護・障害福祉事業の運営時に発生しやすい問題点について、社会保険労務士兼行政書士が詳しく解説する。

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急に来なくなった(無断欠勤)ことの法律的な意味

従業員が急に来なくなった理由が分からない

日々介護・障害福祉事業を運営する中で、従業員が急に出社しなくなった等の経験はないだろうか。

様々な原因が考えられることだろう。

経営者、先輩社員または同僚と口論になった
訪問先で介護利用者または家族から嫌がらせを受けた
私生活で何らかの問題を抱えている
何らかの事件、事故に巻き込まれた可能性がある

このコラムではその理由を、会社側が掌握できていない前提で解説していく。

労働契約の成立 労働契約法と労働基準法

会社が従業員を採用するとき、労働(雇用)契約が成立する。雇用契約は諾成契約(だくせいけいやく)、つまり合意さえあれば書面がなくとも成立する。

労働契約法 第6条

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

しかし、たとえ法律上合意だけで労働(雇用)契約が成立するにせよ、合意内容について後日、誤解によるトラブルが発生しかねないため、労働基準法において、書面の交付義務が重ねて規定されている。

労働基準法 第15条

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

つまり労働契約は合意だけで成立し、労働契約書の作成自体は、労働契約の成立条件ではないということだ。(労働契約書作成義務違反は30万円以下の罰金であるにすぎない)

このコラムでは労働契約書が存在する、しないに関わりなく、労働契約が有効に成立している前提で解説を続ける。

「欠勤」の労働契約上の意義

労働契約の本旨は、従業員が一定の条件の下で会社の指揮のもと働き、会社が約束通りの賃金を支払うというものだ。

従って「欠勤」はその理由がどのようなものであっても、労働契約違反、つまり契約上の債務不履行に当たる。会社は組織を適正に運営するために計画を立てているため、その理由を問わず「欠勤」が生じると、運営計画に一定の悪影響を生じるためだ。

「無断欠勤」の労働契約上の意義

先に説明した通り、「欠勤」ですら労働契約違反、契約上の債務不履行となるのに、その連絡を行わない「無断欠勤」が懲戒(必ずしも解雇を指すものではない)の対象となることに疑いの余地はない。

このコラムでテーマとして取り上げたいのは、この「無断欠勤」が連続し、出社が見込めない状態にある従業員に対して、どのような措置を取ればよいか、という点である。

無断欠勤者に対して取るべき、会社側の行動

無断欠勤が何日続けば退職(解雇)扱いにできるか

ここでは無断欠勤が連続する従業員に対して、会社側がとるべき行動を検討する。無断欠勤が連続する場合、会社側としては退職(解雇を含む)を想定して対処する事になるのが通例だ。

それでは無断欠勤が何日続けば退職扱いにできるだろうか。この問題は労働基準法、労働契約法いずれにも明確な規定がない

会社の就業規則で、例えば「14日連続」または「1カ月連続」の無断欠勤を退職(解雇)事由に定めている場合があるかもしれないが、14日または1カ月という期日について、確実な法的根拠があるわけではないのだ。

唯一の根拠を探るとすれば行政通達

前項で「無断欠勤が何日続けば退職(解雇)扱いできるという法律上の根拠はない」と書いたが、この問題について唯一の根拠を探るとすれば、行政通達(昭和23年11月11日基発第1637号,昭和31年3月1日基発第111号)を紐解く必要がある。

この行政通達は、労働基準法第20条で定める、解雇予告を不要とする場合の具体的事例である。

労働基準法 第20条

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。(中略)但し(中略)労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においてはこの限りでない。

労働者の責に期すべき事由の例として・・・

行政通達による事例紹介

事例5.原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し,出勤の督促に応じない場合

これらを総合して整理すると、

無断欠勤が何日続けば退職(解雇)扱いできるかについては、労働基準法にも労働契約法にも明文の規定はないが、解雇予告なしで即日解雇できる事例として、厚生労働省通達で、「2週間(14日)以上の無断欠勤」と示されているため、これを基準として個別事情に応じた対処をするのが最も合理的だ。

と解釈できるのである。

自主退職か解雇か

次に検討したいのが、退職の形態である。就業規則に該当する規定がない場合は、コラムの前半で説明した、労働契約違反、つまり契約上の債務不履行に基づく解雇とする以外に方法はない。

一方で就業規則に例えば「14日以上無断欠勤が続いた場合」を退職事由に挙げている場合に、次の2つの退職形態、いずれを採るかが問題となる。

ア)就業規則を理解した上で、自ら無断欠勤を続けたのだから、自主退職の意思ありとみなす
イ)本人の意思表示がない以上、普通解雇扱いとする

会社側の立場に立てば、「解雇」の処分によって、会社が将来受け取ることができる恩恵(例として雇用助成金)に関する悪影響が生じる可能性があるため、ア)を採用したい会社もあるはずだ。

仮に本人の内心に、「退職を会社に伝える意思はあるが、会社と決別した以上、それを躊躇している。無断欠勤という行為によって退職の意思を伝えたい」との考えがあるなら、ア)を採用できないことはない。

ア)を採用する場合、本人の内心との一致が確実でない限り、後日トラブルを生じる可能性もあると思われる。このトラブルを回避する通知文として、以下参考にされたい。

自主退職の意思ありとする場合の通知文

会社としては、貴殿の無断欠勤〇日を、退職の意思表示ありとみなし、自主退職扱いと致します。この取り扱いに異議がある場合はお申し出ください。その場合、退職事由を自主退職から解雇に変更します。ただし、無断欠勤に合理的な理由があると会社が判断する場合、本件通知を取消し、職場復帰を認める場合があります。

このように通知すれば、後日的紛争にも十分備えることができるだろう。

通知文はどこに送ればよいか

次に、前項で説明した通知文をどこに送ればよいか、という問題について考察したい。

無断欠勤を続ける従業員については「電話に出ない」、「LINEにレスがない」、「手紙に返事がない」という状態に陥ることが想定される。

LINEの「既読」や、メールの「開封確認」が確認できる場合、これらによって相手方に届いた証拠とすることができる。これらができない場合は、文書を郵送する必要がある。

文書を郵送する場合、まずは内容証明で郵送しよう。
>>内容証明の仕組みについてはこちら(外部サイト 日本郵便)

これが届かない場合(所在不明)、民法第98条による公示送達の手続きを取るほかない。

民法 第98条(抄約)

表意者が相手方の所在を知ることができないときは公示(裁判所の掲示場に掲示し、かつ官報に掲載)により行う。官報掲載から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。

手間がかかり非常に面倒な手続きではあるが、これを実施しないと、会社の意思が従業員に伝わったとは言えないため、慎重なる対応をお勧めする。

無断欠勤による退職を就業規則で定める

最後に、このコラムでご紹介した一連の対処法を就業規則に規定する案文をご紹介する。

就業規則記載例

第〇条 従業員が、次の各号のいずれかに該当するに至ったときは退職とし、それぞれ定められた日を退職の日とする。(前後省略)

・無断欠勤が14日以上続き、かつ連絡がとれない場合であって、会社が解雇手続をとらないとき。…14日を経過した日

この場合自主退職とし、本人が自主退職に異議ある場合には解雇とする。ただし、無断欠勤に合理的な理由があると会社が判断する場合、退職を取消し、職場復帰を認める場合がある。

このコラムのまとめ

以上が、「無断欠勤が続く従業員を解雇、または退職の意思ありとして、自主退職扱いとすることはできるか」についての解説である。

人が資本の介護・障害福祉事業を運営する場合、様々な労務トラブルが発生する可能性があり、その中でも対処に困るのが無断欠勤と解雇の問題である。 従業員の無断欠勤、解雇問題でお困りの際は、是非当事務所までご相談を。

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