介護・障害福祉事業経営に必要な労働基準法知識

労働基準法(介護)

 

これから介護・障害福祉事業の立ち上げを検討している方にとって、一定の知識が必要な分野がある。それが労働基準法だ。このコラムでは特に小規模な介護・障害福祉事業の起業家に向けて労働基準法の基礎知識を解説する。

【目次】

①有期契約(契約社員)制度を理解しよう
②介護・障害福祉事業の法定労働時間は?就業規則は?
③介護・障害福祉事業職員の休憩
④短時間労働者の有給休暇制度
⑤まとめ

①有期契約(契約社員)制度を理解しよう

介護・障害福祉事業の立ち上げに当たっては、一定の人員基準を満たすことが要件とされている。開業直後の先行き不透明な時点で無期雇用、つまり契約期間を定めずに雇用することには一定の迷いも生じる事だろう。

そのような時にお勧めしたいのが有期契約(有期雇用契約)の制度である。一般的には契約社員と呼ばれている。有期契約は雇用の期間を例えば6カ月、1年、3年などと定めその期間終了とともに自動的に雇用契約を終了させるものである。もちろん一定の条件下で契約を更新する定めを付帯しても良い。余談だが契約期間の定めをなくす(つまり正社員等へ転換する)際に、雇用助成金が支給される場合もあるため併せて活用されたい。

②介護・障害福祉事業の法定労働時間は?就業規則は?

法定労働時間は1日8時間、1週間40時間と労働基準法で定められているのは周知のとおりである。しかしこの法定労働時間に例外規定があるのをご存じだろうか。

介護・障害福祉事業はこの例外に規定ある「保健衛生業」に該当する。保健衛生業で従業員が10名未満の場合、例外措置を受け1週間当たりの法定労働時間を44時間上限に定めることが可能だ。少人数で運営せざるを得ない開業直後は、この規定を十分に理解してシフト組をすることを検討したい。

③介護・障害福祉事業職員の休憩

次に休憩の取り扱いについて検討する。労働基準法によると休憩は6時間超の労働で45分、8時間超の労働で60分を一斉に取得させる必要がある。しかし例外的に特定の業種に該当する場合、または労使協定を締結した場合には一斉休憩の原則が適用除外となる。

介護・障害福祉事業はこの「特定の業種」に該当するため一斉休憩を適用する必要がなく、交代制休憩を適用することができる。この場合であっても休憩自体を取らせる義務は免れない点に注意が必要だ。

④短時間労働者の有給休暇制度

労働基準法では入社半年を経過した従業員に対して有給休暇を与えなければならない旨が規定されている。この起算点には試用期間も当然に含まれる。要するに初出社した日から起算して6カ月を計算する。

ここで、フルタイム社員よりも短い時間で勤務する従業員(いわゆるパートタイマー等)にも有給休暇付与が必要な点を確認したい。ただし、

ア)週の勤務が4日以下

イ)週の労働時間が30時間未満

上記ア)、イ)の両方を満たす従業員にはフルタイムの従業員に付与する有給休暇日数を比例的に減じて付与することになる。これを有給休暇の比例的付与と呼ぶ。

付与日数 0.5日 1.5日 2.5日 3.5日 4.5日 5.5日 6.5日
30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間

未満

5日以上
4日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

⑤まとめ

介護・障害福祉事業の経営には介護保険法、障害者総合支援法などの業界法はもちろんの事、人の雇用が伴うため労働基準法の理解が必須となる。このコラムで記載した点は入り口のさらに手前の論点である。開業時の雇用問題をクリアにしたいと思われる方は、是非当事務所の支援サービスをご利用頂きたい。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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