市町村へ許認可(指定)権限の委譲が進む介護・障害福祉業界。新規開業から1年以内に多くの事業所が実地指導を受ける。実地指導に臨む際のポイントとは?業界専門の社会保険労務士・行政書士が詳しく解説する。

【目次】

①介護・障害福祉事業の実地指導とは?
②人員基準/タイムカード、勤務表、サービス提供記録
③設備基準/指定時からの変更は?
④ケアプラン~個別介護計画~サービス提供記録
⑤事業所内に掲示義務のある書類
⑥まとめ

①介護・障害福祉事業の実地指導とは?

介護・障害福祉事業は言うまでもなく自治体の許認可事業だ。許認可(以下指定と呼ぶ)の権限者である自治体は、新規指定から1年以内、以後は3~5年程度の頻度で実地指導を行う。

実地指導で何らかの違法状態が確認されると、事業主はその違法状態の改善についての報告を求められ、場合によっては指定効力の停止(営業停止)、最悪の場合は指定取消の処分を受ける。

仮に指定取消処分を受けると、その法人が営業する同種の介護・障害福祉サービスは連座制を受け、同時に指定取消となる場合があるのみならず、法人役員は5年間、新規開業が出来ない。実地指導とはそのように重大なものなのである。

②人員基準/タイムカード、勤務表、サービス提供記録

実地指導で最も留意しなければならないのは人員基準だ。介護・障害福祉事業の場合、全ての指定に人員基準が設けられている。

必要な資格を保有してかどうかの確認はもちろんの事、常勤換算で人員基準を満たしているかどうかの確認も重要だ。この場合の「常勤」とは就業規則で定める事になる。一般的な法人の場合、所定労働時間は週40時間で定められているが、小規模な介護・障害福祉事業の場合、最大で44時間まで所定労働時間を延ばす事ができる。所定労働時間の下限は労働基準法には定めがないが、介護・障害福祉事業の制度下では、下限32時間とされている。

そのため、就業規則で週の所定労働時間を32時間~44時間で定める事になり、定めた時間従事してはじめて常勤換算1人でカウントできるのだ。

この人員基準はタイムカード、勤務表、サービス提供記録、賃金台帳等により多面的にチェックを受けるため、日頃ギリギリの人員で運営している事業の場合、多くは人員基準不備で指摘を受ける事になる。

また指定申請時に氏名を記載した者が指定日から仕事に従事していない場合、虚偽の指定申請として一発で指定取消となるケースもあるため、指定申請時の人員選抜はくれぐれも慎重に行いたい。

③設備基準/指定時からの変更は?

次にポイントとなるのが設備基準だ。デイサービス(通所介護)や就労支援施設などの通所型の事業はもちろんの事、訪問介護や訪問看護などの訪問型事業の場合であっても、指定時に確認を受けた事業設備の実地確認が行われる。

例えば相談室として申請した部分が、実態的に事務所として使用されている場合などは、変更届の提出違反として指摘を受ける事になる。

④ケアプラン~個別介護計画~サービス提供記録

サービスの提供面で最も指摘を受けやすいのが、ケアプラン→個別介護計画→サービス提供記録の一連の流れだ。介護・障害福祉事業の場合、報酬の大半は各自治体の公費で賄われる。本来必要のないオーバーサービスを提供し、不当な報酬を得ると返還請求の対象となる。

訪問介護事業を例にとって考える。訪問介護事業のケアプランは居宅介護支援事業所のケアマネージャーが作成する。ケアプランに沿った個別介護計画を、訪問介護事業所のサービス提供責任者(サ責)が作成する。ここでサ責が100%現場業務に従事している場合、「サ責以外が個別介護計画を作成している」旨を指摘されるため、併せて注意しよう。サ責が作成した個別介護計画に基づいて、実際の介護サービスを提供し、サービス提供記録として記録するのである。

この一連の流れが論理的につながらないと、指導対象となるため日頃から十分な注意が必要である。

⑤事業所内に掲示義務のある書類

運営規定(概要版)、個人情報保護方針、重要事項説明書などの書類は事業所内に掲示義務がある。特に運営規定は複数枚に渡るため、概要版の作成と掲示に注意が必要だ。

それぞれの書類がデータフォルダや机の中に保管されている状態では指摘を受けるため、事前に対策を講じたい。

⑥まとめ

以上の通り、介護・障害福祉事業の実地指導には多面的な観点から確認を受ける。経営者または管理者のコンプライアンス意識と、実際にそれを運用する職員の存在が不可欠だ。

実地指導の通知が来てからでは遅い。日頃の運営体制に不安をお持ちの事業所は、是非当事務所にご相談頂きたい。