このコラムを3分読めば理解できること

・就業規則の解雇事由に該当することで必ず解雇できるかの判定
・解雇権濫用(らんよう)とはどういう意味か理解できる

就業規則に解雇事由を列挙する会社は多い。この解雇事由に該当しさえすれば、解雇ができるのだろうか?このコラムでは社会保険労務士が過去の主要判例を参考に、労務管理上のポイントを分かりやすく解説する。

このコラムの目次

①高知放送事件の概要
②高知放送事件の事実関係を解説
③経営者は解雇権濫用(らんよう)の意味を理解しよう
④このコラムのまとめ

①高知放送事件の概要

裁判所と判決日

最高裁昭和52年1月31日判決

事件名

高知放送事件

判決

就業規則の解雇事由に該当しても、合理性を欠き社会通念上認めることができないときは、解雇権の濫用として解雇は無効となる

②高知放送事件の事実関係を解説

早朝のラジオニュースを担当するアナウンサーである労働者Aは、短期間に2度の寝過ごしのため放送事故を起こした。2度目の寝過ごしの際は上司への報告を怠り、また事後的に提出した始末書にも虚偽の記載があった。

そこで会社は労働者Aを解雇処分としたが、判決では

1.労働者Aには悪意または故意がなく過失である
2.労働者Aを起こす担当者は軽い処分で済ませた
3.会社は万全を期すべき何らの措置も講じていない
4.労働者Aは平素の勤務成績が別段悪くない
5.会社では過去に同種の解雇事例がない

以上を理由に、

解雇は合理性を欠き、社会通念上相当なものとして認めることはできない

として解雇を無効とした。

③経営者は解雇権濫用(らんよう)の意味を理解しよう

高知放送事件での最大のポイントは、解雇権の濫用(らんよう)である。

濫用(らんよう)の「濫」とは訓読みで「みだり」と読む。解雇権濫用とはつまり、権利があったとしても、みだりに用いてはいけないという事だ。 ここで言う解雇権の濫用とはつまり、

就業規則の解雇事由に該当したとしても、それだけでは必ずしも解雇が正当であるとは限らない

という意味だ。言い換えれば次のようになる。

就業規則の解雇事由に該当したとしても、その解雇処分が合理性を欠き、社会通念上相当なものとして認めることはできないときは、解雇権濫用として解雇は無効である。

別のコラムで紹介した>>寿建築研究所事件では、就業規則の解雇事由に記載のない事案では解雇できない事を説明した。今回の高知放送事件ではさらに、記載しても解雇が無効となる場合があることを示している。

なお、昭和52年1月31日の高知放送事件の判決は、その後平成20年施行の労働契約法第16条に受け継がれる。

(労働契約法第16条)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

従業員の解雇問題に直面した場合、就業規則のどの解雇事由に該当するかを確認するとともに、高知放送事件で示されたポイントを参考に、慎重に判断する必要がある。

④このコラムのまとめ

高知放送事件の判決は、解雇処分には客観的な合理性、社会通念上の相当性が必要である事を示す重要な判決だ。

私達、社会保険労務士がお客様から従業員の解雇問題の相談を受ける場合、必ずこの高知放送事件の判決文を振り返りつつ助言している。

つまり、その解雇処分が世間一般で考えて厳しすぎないか、公平性を欠かないか、などを考慮する必要があるためだ。

労務管理でお困りの場合は、是非当事務所までご一報を。

タスクマン合同法務事務所へ電話する