このコラムを3分読めば理解できること

・就業規則の解雇事由に記載のない事案での解雇がどうなるか?
・就業規則の解雇事由の記載上の工夫は?

就業規則の解雇事由に記載のない問題が起こった場合でも解雇できるだろうか?このコラムでは社会保険労務士が過去の主要判例を参考に、労務管理上のポイントを分かりやすく解説する。

このコラムの目次

①寿建築研究所事件の概要
②寿建築研究所事件の事実関係を整理
③就業規則の解雇事由に記載がなければ解雇はできない
④このコラムのまとめ

①寿建築研究所事件の概要

裁判所と判決日

東京高裁昭和53年6月20日判決

事件名

寿建築研究所事件

判決

就業規則の解雇事由以外を理由に、解雇することはできない

②寿建築研究所事件の事実関係を整理

労働者Aは残業を巡って上司との間で、数日に渡り口論となった。会社は労働者Aに対して、解雇を言い渡したが同社の就業規則には、「上司と口論すること」を理由に解雇する内容が記載されていなかった。

判決では

就業規則に記載の無い理由に基づく解雇は無効

とされた。

③就業規則の解雇事由に記載がなければ解雇はできない

この事件で問題となるのが、

「就業規則の解雇事由に記載のない場合でも解雇できるか?」

という点だ。就業規則に記載される解雇事由(どのような場合に解雇されるか)は、絶対的必要記載事項と呼ばれ、必ず就業規則に記載しなければならない。

就業規則は事業主(会社)が主体的に作成し、労働者代表の意見書を添えて労働基準監督署へ届出るが、意見は必ずしも同意である必要はない。

就業規則を主体的に作成できる立場で制定した解雇事由は、いわゆる限定列挙であり、これに該当しない理由によって労働者を解雇することはできないとされた。

限定列挙とは

「効果が発動する項目を限定的にピックアップし、これに該当しない場合は効果が発動しない」

ことを指す。対の概念として例示列挙があり、これはあくまでも具体例として項目を紹介するにすぎず、「これに該当しない場合でも効果が発動する場合がある」という考え方だ。

判決を言い換えると、

就業規則の解雇事由は限定列挙であり、これ以外の解雇は無効である

となる。

ちなみに、一般的には就業規則の解雇事由には、

「その他前各号に準ずる事由がある場合」

も記載するのだが、同社はそれを怠ったようだ。「その他前各号に準ずる事由がある場合」と記載さえしておけば、限定列挙としてカバーする余地もあったと思われる。

④このコラムのまとめ

寿建築研究所事件の判決は、就業規則の解雇事由のあり方を示す主要な判決だ。

私達社会保険労務士がお客様に対して就業規則作成をアドバイスする場合、可能な限りお客様の事業所で発生見込みのあるトラブルを想定して、解雇事由を具体的に記載するようにしている。

例え「その他前各号に準ずる事由がある場合」と記載していたとしても、実際の事件がこの記載内容でカバーできるかどうかは、裁判所の判断となるためだ。

就業規則の作成でお困りの場合は是非当事務所までご相談を。

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