■遺族基礎年金がもらえなくても 寡婦年金

もう一度遺族基礎年金の受給権者を確認します。

・死亡した人によって生計を維持されていた配偶者で、かつ子と生計が同じである者
・死亡した人によって生計を維持されていた子

つまり「子」がない場合、遺族基礎年金が支給されることはありません。

1.寡婦年金の概要

長年連れ添った夫に先立たれる子のない妻。
あるいは、子はあるがすでに成人しているため、遺族基礎年金の受給権がない妻。

このようなケースを救済するのが、「寡婦年金」の制度です。

死亡した夫が老齢基礎年金の受給期間を満たしているにもかかわらず、本人が老齢年金も障害年金も受給せずに死亡した場合、妻に「寡婦年金」が支給されます。

この場合、次の条件をすべて満たす妻に寡婦年金が支給されます。

・死亡した夫に生計を維持されていたこと
・婚姻期間が10年以上であること(事実婚含む)
・65歳未満であること

支給開始が60歳ですので、60~65歳の間に限り遺族基礎年金の代わりに寡婦年金を支給。

65歳からは妻本人の基礎年金に代わるという仕組みです。

2.寡婦年金の金額

寡婦年金の支給額は、死亡した夫が受けるはずだった老齢基礎年金の3/4です。

この仕組みにより、

「遺族基礎年金を受給できない妻」

を5年間にわたり救済するのが寡婦年金制度です。

■さらに手厚く寡婦を保護する制度

1.遺族基礎年金がもらえなくても 中高齢寡婦加算

寡婦年金が「遺族基礎年金の受給要件の救済第1弾」であるとすると、「中高齢の寡婦加算」は第2弾です。

つまり、寡婦年金が60~65歳の支給であるのに対し、中高齢の寡婦加算は40~65歳を支給対象としています。

支給されるのは次のいずれかの妻です。

・遺族厚生年金の受給権を得た当時、40~65歳の妻
・40歳に達した当時、遺族基礎年金の受給権を持つ子と生計が同じである妻

この二つによって、遺族基礎年金の受給権を持たない妻に

「死亡した夫の老齢基礎年金(=遺族基礎年金)の3/4を支給する」

という制度です。

2.経過的寡婦加算

上記の通り、中高齢の寡婦加算の支給打ち止めは65歳です。

それ以降は「妻本人の老齢基礎年金がありますよ」という趣旨です。

しかし全ての妻が65歳から満額の老齢基礎年金を受給できるとは限りません。

少なくとも、国民年金法が改正された昭和61年時点ですでに30歳を超えている妻の場合、その後全て国民年金の被保険者資格を持っていても、

充分な老齢基礎年金を受け取れない可能性があります。

そこで、次のいずれかに該当する妻に、「経過的寡婦加算」として一定金額を加算する制度があります。

「遺族基礎年金の受給要件の救済第3弾」と言えます。

・遺族厚生年金の受給権を得た当時、65歳以上だった妻
・中高齢の寡婦加算を受給しつつ、65歳になった妻

「中高齢の寡婦加算」、「経過的寡婦加算」によって、遺族基礎年金の受給要件の厳しさをカバーしているのです。

■国民年金の掛け損を防ぐ死亡一時金

1.国民年金受給権を得る前に死亡したら?

・寡婦年金
・中高齢の寡婦加算
・経過的寡婦加算

上記3つの制度によって、「遺族たる妻」を救済するわけです。

次にご説明するのは、

「国民年金受給権を得るまでに死亡した場合」です。

つまり、「掛け損」を防止するための制度、死亡一時金です。

国民年金保険料の納付期間に応じて、次の表の通り支給されます。

2.保険料納付月数 国民年金死亡一時金

納付期間死亡一時金
36か月~180ヶ月 120,000円
180ヶ月~240ヶ月145,000円
240ヶ月~300ヶ月170,000円
300ヶ月~360ヶ月220,000円
360ヶ月~420ヶ月 270,000円
420ヶ月以上320,000円

3.保険料が免除されていたときは

保険料が一部免除されていたときは、

月数 × 免除割合

で保険料納付月数を計算し直します。

例えば、10か月にわたり保険料を半額免除されていた場合は、10か月 × 1/2 = 5か月として計算し直されます。

4.国民年金死亡一時金の受給順位

受給できる順位は、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。

しかし、この制度はあくまでも「掛け捨て防止」ですので、

・死亡した人が老齢基礎年金、障害基礎年金を受けているとき
・遺族が遺族基礎年金を受け取るとき

この場合、死亡一時金は支給されませんのでご注意ください。

■後から遺族年金の受給要件に当てはまったら?

1.遺族基礎年金の受給権者

遺族基礎年金の受給権者をもう一度確認します。

・死亡した人によって生計を維持されていた配偶者で、かつ子と生計が同じである者

・死亡した人によって生計を維持されていた子

そして子には次の条件がありました。

・18歳になった後の最初の3月31日までにある子
・障害等級1級または2級にある20歳未満の子

今回解説するのは、年金被保険者が死亡した時は、条件に当てはまらなかったが、後から条件に当てはまったという場合です。

2.胎児が誕生した

先にも解説しましたが、年金被保険者が死亡した時、胎児だった子が誕生した場合、

「死亡した方によって生計を維持されていた」

とみなされ、妻は

「その子と生計を同じくしていた」

とみなされます。

生誕のタイミングが異なることによる不利益をカバーする制度です。

3.胎児が障害を持って誕生した

この場合も同じく、

「死亡した方によって生計を維持されていた」

とみなされ、妻は

「その子と生計を同じくしていた」

とみなされます。

4.18歳までの子が障害を持った

「障害等級1級または2級にある20歳未満の子」

の中には、

18歳までの子が1級または2級の障害を持った場合も含まれます。

つまり、年金被保険者の方が死亡した時には、その子に障害がない場合でも、18歳までに障害を持つようになった場合は遺族年金を考える場合の、「20歳までの障害等級1級または2級を持つ子」と考えることができるわけです。

5.「遺族」に該当する子と、後々生計を同じくした

年金被保険者の方が死亡した時、何らかの理由で別生計にあった子と、後々に生計を同じくすることになった場合です。

この場合は残念ながら遺族年金を考える場合の「子」には該当しません。

■遺族年金受給要件 後発的事由の結論

結論として、

・誕生と障害は、後発的であっても対象

・生計維持、生計同一は後発の場合対象外

となります。

遺族年金は、その実態を鑑みて支給されるということなのです。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538