■遺族基礎年金の受給条件と失権事由

1.遺族基礎年金の受給条件は?

遺族基礎年金は、

・死亡した人によって生計を維持されていた配偶者で、かつ子と生計が同じである者
・死亡した人によって生計を維持されていた子

に対して支給されます

2.遺族基礎年金 子の条件

また子には

・18歳になった後の最初の3月31日までにある子
・障害等級1級または2級にある20歳未満の子

という条件がありますので、これらの条件が欠けたタイミングで遺族基礎年金の受給権がなくなります。(失権と呼びます)

以下、ケースごとに内容を解説します。

■配偶者の遺族基礎年金の失権事由 

1.配偶者の失権 死亡

遺族年金の受給権者である配偶者が死亡した場合、その配偶者の受給権は失権しますが、それまで停止されていた子の受給権が復活します。

2.配偶者の失権 婚姻(事実婚を含む)

遺族基礎年金は死亡した方に「生計を維持されていた」ことが条件ですので、婚姻により新たな生計関係が生じた場合失権します。

この場合、子の受給権は復活しますが、18歳未満の子(20未満の障害等級を持つ子)と別生計で再婚することは想定されにくいので、子の受給権も同時に失権すると考えた方がよいでしょう。

3.配偶者の失権 養子

養子になることで生計が安定するとの理由で、配偶者の受給権が失権します。

(ただし、直系血族・直系姻族の養子になる場合、生計の状況はほとんど変わらないため、失権しません。)

この場合も、子の受給権は復活しますが、

18歳未満の子(20未満の障害等級を持つ子)と別生計で養子に入ることは想定されにくいので、子の受給権も同時に失権すると考えた方がよいでしょう。

4.配偶者の失権 子が要件を満たさなくなる

遺族基礎年金の受給要件は、

・18歳になった後の最初の3月31日までにある子
・障害等級1級または2級にある20歳未満の子

を持つことですので、この条件に該当する子が、死亡、婚姻、他の養子、生計を別にする、18歳を超す、障害等級が下がる、障害1級または2級の子が20歳になる

このような場合、配偶者の受給権は失権します。

■子の遺族基礎年金の失権事由

1.子の失権 死亡・婚姻・養子縁組

子の死亡、婚姻、養子については配偶者の場合と同じ条件です。

「保護の必要性がなくなる」というのがその理由です。

2.子の失権 養子縁組の解消

死亡した方と養子縁組の解消を「あえて」することで、子の要件を満たさなくなり、失権します。

3.子の失権 年齢・障害の変化

・18歳に達した日以後の最初の3月31日を過ぎる
・障害等級が下がる
・障害1級または2級の子が20歳になる

このような場合も子は失権します。

保護の対象ではないという理由です。

以上の通り、遺族基礎年金は実は「子」の状態によって短期的に受給権がなくなるわけです。

■遺族厚生年金の失権

遺族厚生年金は、遺族基礎年金と違って支給される範囲が広いため、同時に「失権」の理由も複雑にです。全員共通の失権理由と、個別の失権理由に分けて解説します。

1.全受給権者共通の失権理由

全受給権者共通の失権理由として、死亡、婚姻(事実婚含む)、養子(直系を除く)、養子縁組の解消が挙げられます。

これらの事象により、死亡した方との関係が絶たれ、または新たな生計が生まれることにより、保護の対象から外れるという趣旨です。

2.若年の妻特有の失権理由

この解説を始める前に確認をしておきますが、夫に関しては子があってもなくても、年金被保険者である妻が死亡した当時、55歳でないと遺族厚生年金を得ることはできません。(しかも60歳になるまでは支給停止)

さて、若年の妻に関して説明をします。若年(30歳未満)の妻に関しては、遺族厚生年金は「5年有期年金」です。つまり、

「若いのだから就労のチャンスはあるでしょう?」

という理由に基づいています。

(しかし昨今の就職事情を考えると、いささか疑問が残りますが・・・)

2つのケースに分けて解説します。

ア)子のない妻が30歳未満で遺族厚生年金の受給権を得た場合

→ 5年で失権します。

イ)子のある妻が遺族基礎・厚生年金の受給権を得つつも、30歳未満で遺族基礎年金の受給権を失権した場合(例:子の死亡)

→ そこから5年で失権します。

繰り返しになりますが、一律に「若年の妻の就労機会」によって制度を作ることには無理があるように思います。

4.子、孫特有の失権理由

遺族基礎年金と考え方は同じです。

・18歳に達した日以後の最初の3月31日を過ぎる
・障害等級が下がる
・障害1級または2級の子が20歳になる

このようなケースで失権します。

5.父母、孫、祖父母特有の失権事由

胎児であった子が生誕した時に失権します。

先順位者である子または配偶者に受給権が移るためです。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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