障害年金の支給停止と失権|どんなときに障害年金が停止されるか?

障害年金の支給停止と失権|どんなときに障害年金が止められるか?

障害年金支給停止コラムを3分読めば理解できること

・障害年金の失権と支給停止のルールが理解できる
・労災保険法、労働基準法と障害年金の関係が理解できる
・障害等級3級にも該当しない場合の失権が理解できる

現在受給中の障害年金。どのようなケースで支給が停止されたり失権したりするのだろうか。また仕事が原因で発生した障害と、労働基準法、労災保険法との関係は?このコラムでは障害年金の支給停止と失権にスポットをあて解説する。

障害年金支給停止コラムの目次

①障害年金の支給停止と失権の原則
②労働基準法の障害補償を受ける6年間
③障害等級3級に該当せず65歳または3年経過。いずれか遅い時期
④障害年金支給停止コラムのまとめ

①障害年金の支給停止と失権の原則

ある状態が解消すれば支給が再開される「支給停止」と、障害年金の受給権自体がなくなる「失権」。まず大原則として、次の2点を理解しておこう。

ア)障害等級に該当しない程度に改善が見られたとき、支給停止
イ)死亡したら失権

ただしア)の状態の人の障害が悪化して障害等級に戻り、または他に障害等級に該当しない障害が生じて、前後の障害を併合すれば等級に該当するような場合は、支給停止が解除される。年齢制限は65歳までだ。

②労働基準法の障害補償を受ける6年間

仕事が原因での病気や怪我により、障害を負った場合を考えてみよう。会社には労働基準法77条により従業員に対する障害補償義務が定められている。

一方労働基準法84条により、労災保険で補償(このケースでは障害補償)が行われるとき、「会社は障害補償義務を免れる」とある。

②のケースは、労災保険による障害補償が行われず、原則通り会社が障害補償を行うという場合を指している。例えば国による労災認定が受けられず、結果として労災が給付されないような事例で、民事で会社の賠償責任が認められるケースだ。

このような場合、会社は1340日~50日分の平均賃金を支払う義務がある。この補償が行われるとき、6年間にわたり障害年金が支給停止される。

ちなみに支払い能力があることを示し、かつ障害を負った従業員の同意を得た場合、6年分割支払いを行うことができる。分割払いとなるため、保証すべき日数は割り増しとなる(1440日~54日)。6年間の支給停止という年月はここから考慮されているのだ。

労災保険による障害給付を受ける場合の併給調整は、別コラム「障害年金と労災保険|労災が原因で障害を負ったら2つの受給を調整」を参照されたい。

③障害等級3級に該当せず65歳または3年経過。いずれか遅い時期

障害等級の3級にも該当しなくなり65歳になった日、または3年経過した日のいずれか遅い時期に障害年金の受給権が失権する。この年齢時期に障害等級にないという場合は、老齢基礎年金の受給権の問題となる。なお、老齢基礎年金の受取額には保険料納付月数が影響する。障害基礎年金の受給期間は、国民年金保険料が法定免除となり、この期間×1/2は保険料を納めた事と同様の効果が生じることになる。

④障害年金支給停止コラムのまとめ

以上が障害年金の支給停止と失権の問題だ。障害年金においては完全に権利を失う失権と、一時的な状態により支給が停止される場合に分けて考える必要がある。

ご自身の年齢、障害の症状に基づき、支給停止と失権の時期および可能性を予め想定しておくことをお勧めしたい。



【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538