③介護保険改正 要支援者向け予防給付の介護保険外し

大阪の介護設立_介護保険外し

 

7つの要介護・要支援状態を理解しよう

介護保険改正の2つ目のポイントとして、

要支援者向け予防給付の介護保険外し

を取り上げて解説します。

介護保険を利用するに当たっての、「要介護度」は7段階に分かれています。

 

要介護度と身体の状態一覧表

 要介護度  身体の状態
 要支援1  ほぼ自立生活ができるが、一部支援が必要
 要支援2  立ち上がりや歩行が不安定。一部介助が必要だが、改善余地がある。
 要介護1  立ち上がりや歩行が不安定。一部介助が必要。
 要介護2  起き上がりが自力では困難。
 要介護3  寝返りが出来ない。排泄、入浴、衣類脱着などで全面的介助が必要。
 要介護4  多くの行為で全面的な介助が必要。
 要介護5  生活全般について、全面的介助が必要。

 

財源の比率を表すと、次のようになります。

区分 給付名 費用
要介護1~5 介護給付 7兆1000億
要支援1~2 予防給付 4100億
要支援・介護の恐れ 地域支援事業 1570億

(東洋経済 2013年12月14日号より)

 

介護保険制度 3つの柱

介護保険制度が、

①介護
②介護予防
③地域支援

の3つから成り立っているとは言え、介護給付が全体の92%以上を占めていることが分かります。

 

要支援者向け予防給付の介護保険外し

悪化の一途を辿る介護保険財政。

本来ならば、圧倒的な比率を占める「介護給付」に楔を打ち込むべきところです。

しかし、介護保険改正②で取り上げるのは、「介護予防給付」。

全体の5%に過ぎません。

今回の改正はこの介護予防給付、つまり要支援者1~2に対する予防的サービスの中から、次の二つを切り離すものなのです。

介護保険の枠組みから切り離される2つのサービス

①要支援者向け、訪問介護(ホームヘルプ)
②要支援者向け、通所介護(デイサービス)

これらを国が全国一律的に運営する、介護予防から切り離し、市町村の管轄に置くという改正です。

 

介護保険外しの意図は?

介護保険財政を健全化するためには、要介護状態に陥らない予防施策が必要であるのは言うまでもありません。

では、介護予防給付を保険制度から切り離し、市町村の「地域支援事業」に移行する意図は何か?

厚生労働省の意図を推測すると、次のようなロジックになるのではないかと思います。

①介護保険制度維持のために、要介護・要支援状態に陥らない施策や、仮に要介護・要支援状態に陥っても、健康状態に戻せる施策が必要だ。

②そのためには、国が一律で管理するよりも、より身近な行政単位で制度を運営するのがよい。

③つまりそれは市町村である。

 

大きな流れ 地域包括ケアシステム

この考えを、一つの大きな政策として表したのが、

地域包括ケアシステムです。

地域包括ケアシステムの詳細説明は別稿に譲りますが、簡単に言えば、

医療・介護を30分以内提供できるよう、中学校区を基準に一つの地域を作る

ということです。

 

介護業界の人材確保難も影響

介護予防給付を保険制度から切り離し、市町村の「地域支援事業」に移行する事にはもう一つの意図があります。

それはサービス提供人材の多様化です。

 

介護給付には専門的な資格をもった人材の確保が必要です。しかし、今回移行される要支援者向け訪問介護、通所介護の中心的サービスは、生活支援つまり家事の介助が中心。

専門資格がない人でもサービス提供できるため、担い手が多様化するだろう、というのが政府の狙いです。

介護業界の人材難が影響を及ぼしているのは確かです。

それでは、介護給付から切り離された、要支援者向け訪問介護、通所介護は誰が担うのでしょう?

厚生労働省の考えでは、それは

市町村が率いる地域ボランティア、NPO

としていますが、あまりにも無責任ではないでしょうか

 

私たち自らが介護を真剣に考える時代が来た

厚生労働省が大手を振って介護保険制度を作り上げ、15年経って財源が厳しいから後は市町村に丸投げ。

こんな図式が垣間見えてなりません。しかし、現実に目を背けるわけにはいかない。

これからは私たち市井の人間が、介護という国が抱える問題に直面していかなければならないのは避けられない事実なのですから。

 

労務専門コラム 2015年介護保険制度改正編

>>①2015年 介護保険改正の骨子
>>②介護保険改正 利用者負担を1割から2割へ
>>③介護保険改正 要支援者向け予防給付の介護保険外し
>>④介護保険改正 特別養護老人ホームの新規入所を要介護3以上に
>>⑤介護保険改正 一定資産がある人の食費補助を打ち切り
>>⑥介護保険改正 高額介護費負担の上限をアップ
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