②介護保険改正 利用者負担を1割から2割へ
■介護保険の利用限度額と自己負担
2015年介護保険制度改正の最大の目玉は、利用者負担1割から2割へと言う点でしょう。まずは下の図をご覧ください。
要介護度と自己負担
区分 | 利用限度額 | 1割負担 | 2割負担 |
要支援1 | 50,030 | 5,003 | 10,006 |
要支援2 | 104,730 | 10,473 | 20,946 |
要介護1 | 166,920 | 16,692 | 33,384 |
要介護2 | 196,160 | 19,616 | 39,232 |
要介護3 | 269,310 | 26,931 | 53,862 |
要介護4 | 308,060 | 30,806 | 61,612 |
要介護5 | 360,650 | 36,065 | 72,130 |
居宅型介護サービスを利用する際の、利用限度額と利用者負担額を示しています。
年金収入のみで生活する世帯にとって、利用者負担の倍増(1割から2割へ)は死活問題です。
■受給時点のルールを変えてしまった政府
しかしこの利用者負担の改正は、もう少し深く読み解く必要があります。これまでの介護保険の自己負担は、本人の所得状況に関わらず一律1割でした。
現役時代の年金納付が不十分で、「年金受給-生活費」が赤字になっている層も、その逆の層も一律1割の負担です。介護保険制度は、あくまでも「保険」なのですから、均一な掛金・受給ルールに基づいて運用されるべきなのが原則と言えます。
したがって、介護保険サービス受給時点になってから、
「あなたは今、所得が十分あるから、1割ではなく2割負担だ」
と言われても、晴天の霹靂。民間の生命保険会社がこれを行うと、大騒ぎになるでしょう。
政府は公的保険の一つである介護保険制度で、この「押してはいけないボタン」を押してしまったのです。
■全体の20%もの人々が、利用者負担倍増
具体的には、所得が160万円以上(年金収入のみなら収入で280万円以上)の人が2割負担の対象です。
個人単位で判定するため、夫と妻で介護保険の利用者負担割合が異なるケースも発生します。
(ただし、世帯(夫婦)年金収入が346万円未満であれば、夫婦ともに1割に据え置かれる特例があります。)
利用者負担の倍増による影響を受ける人は、65歳以上の約20%と予測されています。大変な人数です。
■背景には増え続ける介護給付
背景には、増加する介護給付を抑えたいという政府の意図があるのは明らかです。
厚生労働省の資料によると、2012年を基準とした場合、2025年には介護給付が2.4倍に跳ね上がります。
これは医療(1.5倍)、年金(1.1倍)に比べても、大きな増加幅です。
額にすると、9兆円(2012年)が21兆円(2025年)へと増加します。
団塊の世代が75歳に到達し、介護保険制度の利用者数が増加するということが顕著に影響しているのです。
■倍増基準が280万円たった1つ!?
介護保険制度の維持には、利用者負担の増加は避けられない問題です。しかし、年金収入280万円という一つの基準だけで負担率に2倍の差を儲けるのは乱暴な制度改悪だと思います。
所得税率の累進課税(段階的に率が変わる)のように、何段階かに分けないと、
「280万円を1円でも超えれば2割になるなら、年金を減らしてくれ!」
という声が巷に溢れるのではないでしょうか?
■労務専門コラム 2015年介護保険制度改正編
>>①2015年 介護保険改正の骨子
>>②介護保険改正 利用者負担を1割から2割へ
>>③介護保険改正 要支援者向け予防給付の介護保険外し
>>④介護保険改正 特別養護老人ホームの新規入所を要介護3以上に
>>⑤介護保険改正 一定資産がある人の食費補助を打ち切り
>>⑥介護保険改正 高額介護費負担の上限をアップ
>>このカテゴリ(2015年介護保険制度改正編)のトップへ戻る
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