⑥悪質商法・詐欺商法から高齢者を守る
このページは、主に介護・障害者福祉事業に従事されている方々に向けて記載しています。
■詐欺商法を受ける高齢者に気付いたら?
1.まずは業者名称を確認しましょう
自分の親、近所のご老人、知人の親・・・。ご自身との関係に関わらず、高齢者が詐欺商法に引っかかっているのに気付いたら、まずは業者名称の確認から対策を開始しましょう。
業者が一定規模の場合、消費者契約法や特定商取引法に基づく「法定書面」を高齢者に手渡しているはずです。法定書面とは、見積書や契約書のことです。
それらの法定書面には業者名称、代表社名、住所、電話番号などの記載が必須とされています。もちろん名刺が残っていれば名刺でも構いません。
業者が中小零細の場合、その実態から確認をする必要があります。法人なのか個人なのか。直接契約をした担当者が業者とどのような契約関係にあるのかなどの確認を行います。
2.業者の実態を確認しましょう
次に行動すべきことは、「業者の実態の確認」です。法人の場合は登記簿により確認します。
お近くの法務局へ行き、業者名・住所から検索すれば正式な登記簿謄本が出てきます。だれでも入手可能です。法務局へ出向くのが難しい場合、当事務所のような法務事務所へご相談ください。
3.内容証明郵便を送達しましょう
内容証明郵便とは、送達の記録に留まらず、「送達内容」までを郵便局が公に証明してくれる郵便物です。そのため、後日訴訟に発展したときにも、「言った・言わない」の水掛け論にならず、重要な証拠書類となります。
この段階での記載内容は次の二つに絞れば良いでしょう。
内容証明の記載内容
①クーリングオフの意思・・・8日間ならの契約を解除※
②今後の取引の意志・・・今後取引する意思がないことを明示※契約から8日経過していても、一定の法律違反がある場合、クーリングオフは可能です。
①は一般的に広く知られている、「クーリングオフ」です。内容証明郵便での意思表示が必要です。
②は「今後営業活動をしてくれるな」という意思表示です。これを通知したのに営業活動を継続すると、特定商取引法に違反することになります。
これらの内容証明郵便の作成を高齢者自らが行うことは難しいため、当事務所のような法務事務所へご相談ください。
以上が詐欺商法を受ける高齢者に気付いたときに取るべき、第一の行動です。次に今後の予防策を解説します。
■1人暮らしの高齢者を詐欺商法から守るには?
1.見守り契約を利用しましょう
高齢者本人の判断能力が衰えているとはいえ、認知症の発症にまでは至っていない場合、「見守り契約」の活用をお勧めします。
これは特にどこかの行政機関での手続きが必要というものではなく、信頼の置ける人に1~2週間に一度の定期訪問を依頼するものです。
社会福祉協議会が実施しているサービスにも同様の「見守り契約」が附随しているため、こちらの利用でもよいでしょう。
できれば1週間(以内)に一度定期的に「健康状態」・「生活環境」の変化を確認してもらい、もし問題がある場合親族への報告を依頼しましょう。
1週間に一度であれば、先に説明したクーリングオフの適用期間(8日以内)に収まるため、高額商品の売付(買付)からも保護することができます。
2.成年後見制度の保佐・補助を利用しましょう
すでに高齢者が認知症の段階が進み、判断能力の衰えが目立つ場合、成年後見制度の申し立てを行います。
成年後見制度は、本人の判断能力に応じて3段階に分かれています。判断能力がある順に左から並べると、
補助 → 保佐 → 後見
の順になります。1人暮らしはできるけれども、一定の重要な判断に不安がある場合、補助・保佐を申し立てればよいでしょう。
高額な売買契約や、預金の引き出しなどに限っては「保佐人(補助人)の同意が必要」との制度を利用すれば、同意なき行為はクーリングオフ期間に関わらず取り消すことができます。
3.保佐人・補助人が選任されたことを詐欺業者へ通知しましょう
家庭裁判所により、保佐人・補助人が選任されたら直ちに業者へ通知しましょう。
内容証明郵便により、「私はAさんの保佐人(補助人)に選任されましたので、私の同意なく行う売買契約は無効ですよ」との内容です。
これは高齢のAさん本人ではなく、保佐人(補助人)からの通知でも構いません。
いずれにしても速やかな対応が必要です。
■労務専門コラム 認知症・成年後見編
>>①基礎から学ぶ成年後見制度
>>②成年後見・保佐・補助の仕組み
>>③老いと死の不安を解消する6つの支援制度
>>④基礎から学ぶ任意後見制度
>>⑤財産管理契約・日常生活自立支援・死後事務契約
>>⑥悪質商法・詐欺商法から高齢者を守る
>>⑦認知症と不動産売却・遺産分割(相続)
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【この記事の執筆・監修者】
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