■特別の貢献は「特別寄与分」として法定相続分に加算

1.ケーススタディ~被相続人の事業に無償で貢献

ケーススタディ

Aには相続人BC(ともに子)がある
Aは個人商店を営んでいる
Bは他社に勤務しながら長年無償でAの事業にも従事・貢献し、給与を得ていない
Aが死亡した

2.解説~被相続人の事業に無償で貢献

「特別受益が」生前の

被相続人 → 相続人

この方向で利益の提供(贈与)であるのに対し、特別寄与は

相続人 → 被相続人

の方向での利益の提供であると言うことができます。

3.民法の条文で見る特別寄与

民法904条の2により、
「相続財産からBの特別寄与分を差引し、その残額をBCで分割する。」

という事になります。

結果Bが受け取る額は、Cよりも大きくなります。

この「Bによる生前のAへの貢献」を「寄与分」と呼びます。

条文では単に「寄与分」とされていますが、単純な貢献(寄与)と区別するために、「特別寄与(分)」と呼ぶことがありますので、ここでも「特別寄与分」とします。

特別寄与分を「どの程度の金銭に見積もるか」は相続人の協議によりますが、協議不調の場合は家庭裁判所の審判となります。

■「特別寄与」を具体的に考えてみる

1.どのような貢献を「特別寄与」として法定相続分に加算するか

まずは条文で列挙されている「種類」から確認しましょう。

①事業への労務貢献
②事業への財産貢献
③療養看護ほか

一般的に多いのが③療養看護です。

民法では夫婦・家族・親族には「相互に扶養の義務がある」としています。

従って、単に扶養の義務を果たした程度では「特別の寄与」と認められる可能性は低くなります。

2.特別寄与の考え方

特別寄与の決定は個別ケースにより異なるため具体的な記述は避けますが、およそ列挙すると次の通りです。

①無償の貢献をしている
②一定の対価(贈与等)は得ているがそれを超える貢献をしている
③被相続人の財産の維持・増加・減少の歯止めに貢献している

③に関して、療養看護により財産の維持・増加・減少の歯止めを行う貢献は極めてまれなケースかもしれません。

■誰の貢献を「特別寄与」として法定相続分に加算するか

1.対象者は原則、法定相続人

対象となる「特別寄与」は法定相続人の行為に限ります。

相続人以外の人が、被相続人に「特別寄与」して認められる例外は次の場合です。

2.ケーススタディ~特別寄与が認定される場合

ケーススタディ

Aには相続人BC(ともに子)がある
Bには子Dがある
Aは個人商店を営んでいるが、病弱で仕事に従事できない
Bも病弱でAの事業を助けることはできない
Dは長年、他社勤務の傍らAの事業に無償貢献した
Aが死亡した

3.ケーススタディ~特別寄与が認定される場合

事例ではDの貢献を「Bに代わる特別寄与」として、Bの相続分に反映させる余地があります。

その他は原則通り「相続人の寄与」に限りますので、例えば、「先妻の貢献」などは対象となりません。

■代襲相続人と特別寄与

1.ケーススタディ~代襲相続人の特別寄与

ケーススタディ

Aには相続人BC(ともに子)がある
Bには子D(Aの孫)がある
Bが死亡し、次にAが死亡した

2.解説~代襲相続人の特別寄与

この場合DはBを代襲してAの相続人となります。

問題となるのは、

①Bの特別寄与はDの代襲相続分に影響するか
②Dの特別寄与は自らの代襲相続分に影響するか

という点です。

このケースはともに特別寄与が認められます。(東京高決平1.12.28)

しかし仮に代襲相続の原因がBの死亡ではなく相続欠格・廃除の場合、いくらBに特別寄与があったとしても、それをDに代襲させるのは道義に反すると言えます。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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