■相続税計算の仕組み

1.相続税の仕納税期限

まずは相続税の納税期限を理解しましょう。

被相続人の死亡後、10か月が納税期限です。
例えば、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になります。

「初日不算入」という考え方のもとに計算されているため、「1月7日を起算に」10か月という意味です。

2.相続税の計算方法

相続税計算は以下の手順で進めます。

①各人ごとに相続で取得した財産を個別に評価し、その後全員分を合計します。

②みなし相続財産を足します。(生命保険金・死亡退職金等)

民法上の相続財産からは外れますが、相続税は課税されます。よって、「みなし相続財産」と呼ばれます。

生命保険金・死亡退職金は「相続人数×500万円」までは非課税です。

③相続時精算課税により取得した財産を足します。

相続時精算課税は「贈与税の先送り」により、生前贈与を円滑にする方法です。

速いタイミングで資産を次代に移転できるメリットがあります。
課税を単に「贈与時」から「相続時」に先送りする制度のため、節税効果はあまりありません。

④非課税財産を引きます。(というより相続財産から省かれます)

「非課税財産」は 祭祀財産とも呼ばれます。お墓、仏壇などが該当します。

⑤債務・葬儀費用を引きます。

⑥3年以内の贈与額を足します。

以上①~⑥で「課税価格の合計(ア)」を計算します。

3.相続税の基礎控除

次に「基礎控除(イ)」を計算します。

基礎控除計算は次の通りです。

①平成26年12月31日までの死亡の場合
5000万円 + 法定相続人数×1000万円

②平成27年1月1日以降の死亡の場合
3000万円 + 法定相続人×600万円

そして、
課税価格(ア)-基礎控除(イ)=課税遺産総額(ウ)が0円以上の場合、「相続税の申告義務」が生じるわけです。

ここは非常に重要なポイントです。

各種の特例を使って初めて相続税が0円になるとしても、それらの「特例」は申告して初めて効力を生じます。

※例えば「小規模宅地の特例」

よって「申告義務自体はある」ということです。

4.相続税の税率

課税遺産総額(ウ)が0円以上の場合、それを「法定相続人が法定相続分に応じて相続した」

と仮定して、按分します。(ここが少し分かりにくいゆえんです。)

5.ケーススタディ~相続税の税率

ケーススタディ

被相続人Aが平成27年1月に死亡した。
課税価格(ア)は8000万円。
法定相続人は妻W、BC(ともに子)である。

6.ケーススタディ~相続税の税率

検討に入る前に税率表を確認しましょう。

(平成27年1月1日以降)

法定相続分に応じた取得額※税率控除額
1000万円以下10%0円
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1700万円
3億円以下45%2700万円
6億円以下50%4200万円
6億円超55%7200万円

(平成26年12月31日まで)

法定相続分に応じた取得額※税率控除額
1000万円以下10%0円
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
3億円以下40%1700万円
3億円超50%4700万円

基礎控除(イ)は、平成27年1月の死亡のため、3000万円+3人×600万円=4800万円です。

8000万円(ア)-4800万円(イ)
=3200万円(ウ)が課税遺産総額となります。

ここでポイントとなるのが、

「3200万円に税率(20%)がかかるのではない」

という事です。

先にご説明した通り、

「3200万円を法定相続人が法定相続分に応じて相続した」

と「仮定して」計算した額に相続税率をかけます。

【3200万円の按分】
妻:1/2=1600万円 × 15% - 50万円 =190万円
B:1/4=800万円 × 10% =80万円
C:1/4=800万円 × 10% =80万円

相続税の総額は、
190万円 + 80万円 + 80万円 =350万円となります。

■個別相続税の計算

1.相続税総額の按分

しかし実際の遺産分割協議では、WBCの3名が必ずしも法定相続分通りに分割しているとは限りません。

2.ケーススタディ~相続税総額の按分

ケーススタディ

被相続人Aが平成27年1月に死亡した。
課税価格(ア)は8000万円。
法定相続人は妻W、BC(ともに子)である。
3名は遺産分割協議の末、次の通り相続した。

W:4/10
B:5/10
C:1/10
(あえて約分していません)

3.ケーススタディ~相続税総額の按分

この比率で、先に計算した相続税額を割り振っていきます。

W:350万円 × 4/10 =140万円
B:350万円 × 5/10 =175万円
C:350万円 × 1/10 = 35万円
(合計は当然ながら350万円です)

ここまで論理的に理解できた方は、

「なるほど、公平だね。」

と感じるはずです。

さて次の段階で、

「各人の個別事情による加算、減算」

を行っていきます。

■相続税の加減算

相続税計算の概要はほぼご理解いただけました。

次に加減算の概要説明を行います。

1.相続税の2割加算

突然の増額にビックリします。
子・父母・配偶者以外の方の相続税が、なんと20%も加算されます。
具体的には兄弟姉妹、祖父母・遺贈による他人などです。
ちなみに、子を代襲相続した孫は加算の対象とはなりません。

2.贈与税額控除

死亡前3年以内の贈与金額は、相続税の計算上、いったん課税価格(ア)に足されています。
贈与税を払っているのに、相続税も払うと二重課税となります。
そこで、納税済みの贈与税を相続税から引くわけです。
当然ながら、贈与を受け贈与税を支払った相続人だけの問題です。

3.配偶者の税額軽減

今度は突然の減額にビックリします。
配偶者は「法定相続分」または「1億6000万円」のどちらか大きい方まで、相続をしても相続税が課税されません。
この制度を使うと相続税が0になるケースが非常に高いですが、2次相続を見据えて判断しないと、トータル相続税が高くなる場合があります。

※夫婦と子が健在の場合、片方の配偶者が死亡することを1次相続、もう片方の配偶者が死亡することを2次相続と呼びます。
2次相続により、遺産が完全に次代に引き継がれます。

つまり相続財産が比較的大きい場合、1次相続の節税目的で配偶者の税額軽減の恩恵をフルに受けても、この時点ではまだ
次代(子供の代)への財産の移転が不十分なため、2次相続で高額な相続税が生じるかもしれない、と言う意味です。

4.未成年者控除

未成年者優遇制度です。
20歳までの年数が何年あるかを計算し、「1年×6万円」 (平成27年以降は10万円)を税額から控除します。

5.障害者控除

障害者優遇制度です。
85歳までの年数が何年あるかを計算し、普通障害者は「1年×6万円」、特別障害者は「1年×12万円」(平成27年以降はそれぞれ 10万円、20万円)を税額から控除します。

6.相次相続控除

10年以内に「A→B→C」と2度相続があった場合、Bが負担した相続税の一部をCの相続税から控除する仕組みです。

7.外国税額控除

「海外に住む被相続人」の遺産に、その現地(外国)で相続税が課税されている場合、日本でも課税すると二重課税になるため、控除する仕組みです。

以上の加減算を相続人ごとに行い、最終納付額を確定します。

ポイントは、「相続人ごとに行う」ということです。
それぞれの制度は、各人ごとの納税額に影響するだけです。

なお、納税期限も申告期限と同じく、被相続人の死亡後10か月です。

それを遅れた場合、年率14.6%の延滞税が課税されますので注意が必要です。