贈与は本来契約です。

しかし、民法上贈与契約に該当しなくても税法上は贈与と同視される「みなし贈与」という考え方があります。

本来の贈与は、当事者同士に贈与の認識があることが通常です。

ところが、みなし贈与は、当事者にその認識がなく、事後に贈与税の申告・納付を求められ、寝耳に水という事態にもなりかねません。

以下では、贈与の落とし穴であるみなし贈与について解説します。

■「みなし贈与」の定義と必要性

1.「みなし贈与」とは

みなし贈与とは、民法上の贈与には該当しなくても、実質的に贈与と同視される経済的利益があるならば、贈与があったと「みなす」という考え方です。

2.「みなし贈与」の必要性

みなさんも次の例を考えてみてください。

父親から1000万円の高級外車を1円で売ってもらった人がいるとします。

タダでもらったわけではありません。あくまで、1円で「購入」したのです。

本来の贈与は、無償、つまりタダで金品を渡すことに双方が合意している時に成立します。したがって、厳密に言えば、上記の例は、贈与ではなく売買です。

しかし、もし、上記のケースが贈与に該当しないからといって、贈与税が課せられないとすれば、贈与税など事実上存在しないに等しいでしょう。

全員が高級外車を1円で売買したと言えばよいのですから。

このように、たとえ贈与に該当しなくても、実質的に贈与とみなせるケースをみなし贈与と呼び、税法上、贈与税の対象とすることになっています。

以下では、みなし贈与に該当する典型例を3つ紹介します。

■「みなし贈与」に該当する典型例

1.低額譲渡による「みなし贈与」

低額譲渡とは、時価と比べて著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合に、時価と支払った代金の差額部分が贈与されたとみなす考え方です。

上記の1000万円の高級外車を1円で購入したケースがまさに低額譲渡に該当します。

時価と比べて「著しく低い価額」の基準は明確には存在しません。

その財産の売買の事情や売買にいたる経緯や市場価額などを総合的に考慮し、社会通念(一般的な常識感覚)から判断されます。

低額譲渡が発生するケースとしては、親子間での不動産の売買が典型的です。

例えば、父親から市場価額とは著しくかけはなれた値段で土地を売ってもらった場合、当事者は売買のつもりでも、みなし贈与に該当する可能性があります。

後になって、高額な贈与税の申告・納付を求められるとまさに寝耳に水。贈与の思わぬ落とし穴にはまらないように注意してください。

2.債務免除による「みなし贈与」

債務免除とは、債務者が対価を支払わずに債務を免除してもらった場合です。本来負担すべき債務を果たす必要がなくなったのですから、その部分が贈与されたとみなされる可能性があります。

典型的なケースは、親子間でのお金の貸し借りです。

住宅ローン資金を銀行から借りると利息の返済が大変という理由で、親から借りる人がいます。もちろん、それ自体は何も悪くありません。

ところが、親子の間では、契約書が存在しないことも多いです。すると、後々「もらった」のではなく「借りた」ということが証明困難になります。

また、親子間では、途中で返済を中止している場合もあります。こうなると、本来返済義務のある債務(借金)を免除してもらったとみなされ、みなし贈与に該当してしまう可能性があります。

たとえ親子間でも、高額な借金をする場合は、契約書を作成し、毎月決められた日に銀行口座を通して振り込むことをお勧めします。

3.生命保険金による「みなし贈与」

保険料を負担していない人が、満期金・解約返戻金・被保険者の死亡による生命保険金等を受け取った場合です。この場合は、保険料負担者からその保険金の贈与があったものとみなされます。

ただし、被保険者の死亡により受け取った生命保険金のうち、被保険者が保険料負担者であったものについては、相続とみなされるので注意してください。

生命保険金による「みなし贈与」の典型例は、父親が支払っていた保険の満期金を子が受け取った場合や保険料負担者が母で父の死亡による生命保険金を子が取得した場合です。

上記3つ以外にも「みなし贈与」に該当するケースがあります。

贈与は手軽に行える相続税対策の王道ですが、思わぬ落とし穴もあります。その落とし穴にはらないように、贈与について正しい理解をしたいものです。