■相続税計算と不動産評価

1.土地(宅地)の評価

相続税を計算する上では、宅地は路線価によって計算した額を基本とします。
(市街地以外の宅地や農地、山林などは倍率方式他を使って評価します)

市街地では主な道路に、「路線価」という数値が割り振られています。

仮に該当土地の路線価が「300C」となっている場合、アルファベットは一端無視して、300が路線価です。

単位は千円ですので、300,000円という事になります。

この道路に面している土地が150㎡の場合、

150㎡ × 300,000円 = 4500万円 となります。

これに土地の奥行きに応じた、「奥行価格補正率」をかけて、いったん基本的な評価額を出します。

一般的な戸建て住宅地の場合、奥行きは10~24mで収まると思います。
その場合の補正率は1です。つまり補正がありません。

2.土地路線価の補正

その後「道路との接道状況」によって以下の「補正」を行います。

①奥行きが長い宅地

「奥行÷間口=2以上」の時「奥行長大補正率」をかけて減額します。最大10%減らします。

②間口が狭い宅地

「間口狭小補正率」をかけて減額します。最大20%減らします。

③いびつな形の宅地

「不整形地補正率」をかけて減額します。最大40%減らします。

④角地の場合

角地は経済的価値が高いとみなされ、逆に加算されます。

3.貸宅地の評価

他人に貸している土地(借地権つき)を相続した場合、相続人は自由に利用できません。

売却はできますが、売却相手も自由利用ができないため、価格が下がります。

これを考慮するのが、貸宅地の評価です。

先ほど路線価図で、「300C」という事例を出しました。

路線価図が示すアルファベットは借地権割合を示します。

A=90%、B=80%、C=70%、D=60%
E=50%、F=40%、G=30%

つまり、該当する土地を評価する時、

誰かに貸している=借地権が付いている

場合に評価を下げる、という趣旨です。

注意すべきは、このアルファベットは「借地権の価値」を示しているということです。相続人側の評価は、

「面積(㎡)」 × 「路線価」 × (1-借地権割合)

となります。事例に当てはめると、

150㎡ × 300,000円 × (1-70%)= 1350万円 となります。

逆に、

「その土地を使う権利を持っている」=借地人が死亡した場合、

「面積(㎡)」 × 「路線価」 × (借地権割合)

となります。事例に当てはめると、

150㎡ × 300,000円 × 70% = 3150万円 となります。

最近ではこの仕組みをうまく利用して、サ高住(サービス付高齢者住宅)、デイサービス、グループホームなどの介護事業者に土地を提供しているケースも多いようです。

4.貸家建付地の評価

被相続人が自分の土地にマンションを建て、賃貸物件として貸していたケースです。
このような土地を「貸家建付地」と呼びます。

貸家建付地を相続した場合も、自由に土地を売却できないため、評価を下げます。

「面積(㎡)」 × 「路線価」 × (1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は原則30%です。

賃貸割合は全体に占める賃貸部分の割合のことです。

例えば賃貸マンションの20%(一部フロア)を、所有者が自宅として使っている場合、賃貸割合80%となります。

この場合、事例に当てはめると

150㎡ × 300,000円 × (1-70%×30%×80%)
=3744万円となります。

5.宅地の4つの特例

ここまで見てきたとおり、土地の中でも宅地は大きな価値を持ちます。

しかし仮にその土地が、

「相続人にとって、なくてはならないもの」

である場合、いくら評価額が高いからと言って画一的に課税しては問題があります。そこで一定の要件を満たす土地は、

「小規模宅地等の特例」により、評価額を下げることができます。4種類あります。

①特定居住用宅地

被相続人が居住用として使っていた宅地で、240㎡(平成27年からは330㎡)までの部分を80%減額します。

以下の3つの条件のうち1つを満たすことが必要です。
ア)被相続人の配偶者が相続
イ)被相続人と同居していた親族が相続し、申告期限まで引き続き居住
ウ)同居配偶者、同居親族がいない場合、相続開始3年内に持ち家を所有したことの
ない別居親族が相続し、申告期限まで引き続き所有

②特定事業用宅地

被相続人が事業用地として使っていた宅地で、400㎡までの部分を80%減額します。

以下の2つの条件を共に満たす必要があります。
ア)事業後継者が申告期限まで事業を継続していること
イ)その宅地を申告期限まで所有していること

③特定同族会社事業用宅地

被相続人が自ら株主の会社等(同族会社)に貸していた土地の事です。400㎡までの部分を80%減額します。

以下の2つの条件を共に満たす必要があります。
ア)相続税の申告期限においてその同族会社の役員であること
イ)その宅地を申告期限まで所有していること

④貸付事業用宅地

すでに説明した貸宅地やマンション等の賃貸業を営む場合の貸家建付地については、200㎡までの部分を50%減額します。

だれが不動産賃貸業を営んでいたかによって適用条件が異なります。

○被相続人が不動賃貸業を営んでいた場合(ともに満たす必要があります)
ア)後継者が申告期限まで事業を継続していること
イ)申告期限まで保有していること

○被相続人と同一生計親族が不動産賃貸業を営んでいた場合(ともに満たす必要があります)
ウ)相続開始直前から申告期限まで事業を継続していること
エ)申告期限まで保有していること

以上4つともに、

「相続人にとって、なくてはならない土地」

であることが分かります。

6.居住用建物の評価

建物の評価は土地とは異なり、

経年劣化(減価償却)という考え方に基づくため、評価額は相当低くなります。

ちなみに、土地には経年劣化(減価償却)という考えはありません。

居住用建物の相続税評価額は、「固定資産税評価額」をそのまま使います。

7.貸家の評価

先に説明した、

貸家建付地はあくまでも、「賃貸物件が建っている土地」の事です。

その賃貸物件そのものの評価が「貸家の評価」です。

貸家も相続人が自由に利用することができないため、次の計算式により評価を下げます。

「固定資産税評価額」×「1-借家権割合×賃貸割合」
借家権割合は原則30%です

賃貸割合は全体に占める賃貸部分の割合のことです。

仮に固定資産税評価額2000万円、賃貸割合80%の場合

2000万円×(1-30%×80%)
=1520万円となります。

■その他財産の評価

1.上場株式の評価

上場株式は次の4つのうち、一番低い価格で評価します。

①相続開始(=死亡)日の最終取引価格
②相続開始月の最終取引価格の平均
③相続開始前月の最終取引価格の平均
④相続開始前々月の最終取引価格の平均

2.非上場株式の評価

被相続人が、非上場会社のオーナーだった等の場合です。

非上場株式は一般に取引されることがありませんので、「時価相場」という概念がなじみません。

そこで、税法では会社規模等に応じて、株価の評価方法を選択・併用する仕組みを採っています。

①類似業種批準方式

当会社の内容と類似する上場会社の株価と比較して決定する方法です。

②純資産方式

当会社の資産を、相続税評価額に評価し直します。
例えば帳簿上2000万円の建物を固定資産税評価額に直すような作業です。
その上で負債を引くことで、「相続税計算上の純資産」が計算できます。
相続税計算上の純資産を株数で割ることで株価を算定します。

③配当還元方式

当会社の配当額に基づき株価を算定します。

3.ゴルフ会員権の評価

プレー権のみの会員権は相続税の課税対象にはなりません。
ここでは「取引相場のあるゴルフ会員権」を説明します。

評価方法は次の通りです。

「通常の取引価格」×70% + 預託金(ある場合のみ)

4.一般動産

1個5万円を超える動産は、それぞれ個別に「中古売却相場」で評価します。

1個5万円以下の動産は、一くくりにして「その他動産」として「中古売却相場」で評価します。

以上が相続税の最大の関門である、「財産評価の概要」でした。