⑤介護保険改正 一定資産がある人の食費補助を打ち切り

大阪の介護設立_食費補助の打ち切り

 

介護保険をめぐる食費・部屋代の取扱い

特別養護老人ホーム、ショートステイなどを利用する方の場合、食費と部屋代は介護保険の対象外です。

つまり、食費と部屋代については全額自己負担が原則です。

しかし所得が低い方の場合、食費と部屋代の全額自己負担を強いるのは経済的に過酷。

そこで、これまでの制度では所得の低い方に対しては、

自己負担限度額

を設定し、それを越える部分については介護保険で補助をしていました。

次の表は、所得に応じた自己負担限度額を表したものです。

 

介護保険利用者における自己負担限度額一覧表

段階 対象者 負担限度額(1日あたり)
部屋代 食費
第1段階 ・世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方で  老齢福祉年金を受給されている方 ・生活保護等を受給されている方 多室型 ¥0 ¥300
従来型個室 特養等 ¥320
老健・療養等 ¥490
ユニット型準個室 ¥490
ユニット型個室 ¥820
第2段階 ・世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方で  合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間  80 万円以下の方 多室型 ¥370 ¥390
従来型個室 特養等 ¥420
老健・療養等 ¥490
ユニット型準個室 ¥490
ユニット型個室 ¥820
第3段階 ・世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方で 多室型 ¥820 ¥650
従来型個室 特養等 ¥1,310
老健・療養等 ¥1,310
ユニット型準個室 ¥1,310
ユニット型個室 ¥1,310
第4段階 上記・上記以外の方第2段階以外の方 負担限度額なし(全て自己負担)

 

所得要件だけでなく資産要件も追加

ここでミソになるのが、所得の低い方という表現。

つまり、一定の資産を持っている方でも定期収入が低い方の場合、食費と部屋代の補助を受けることが出来ていました。

極論すると、預貯金が3000万円あり、定期所得がなく住民税が課税されていない方などです。

「これは不公平である」、という事で2015年の皆保険制度改正では、一定資産を持つ方については食費と部屋代の補助を打切る事になりました。

具体的には単身で1000万円、夫婦で2000万円の金融資産です。

不動産については換金性が乏しいため、保有していても補助の打ち切りはありません。

 

夫婦別世帯の場合も審査の対象に

さらにもう一つ。

夫婦が別世帯になっている場合を検証します。

なんらかの理由で夫婦が別世帯になっている場合で、

夫・・・低所得・住民税非課税
妻・・・一定所得・住民税課税

この場合で、夫が特養等へ入所しているとき、食費・部屋代の補助を得ることが出来ていました。改正では、世帯が別の配偶者の所得も勘案して、食費・部屋代の補助を決定することになります。

改正のポイントをフロー図にまとめると次のようになります。

介護保険食費補助の資産要件

(厚生労働省資料)

2015年介護保険制度改正時の措置

とは言え、急な制度改正で全ての世帯を画一的に処理するのは問題が生じる。ということで、次の3条件全てに該当する第4段階の方の場合、第3段階として扱うことができます。

・2人以上の世帯の方

・世帯の年間収入から施設の利用者負担(介護サービスの利用者負担、食費・部屋代)の見込額を除いた額が80 万円以下

・世帯の現金、預貯金等の額が合計450 万円以下

 

市町村が各世帯の資産をどうやって把握するのか?

制度改正で一つ疑問に思うことがあります。

食費・部屋代補助に、これまでの所得要件に資産要件が加わりました。

金融資産の把握を、市町村がどのようにして行うか?との疑問です。

答えは、

原則自己申告。必要に応じて市町村が銀行へ照会。

虚偽申告の場合、補助を受けた額の返金はもちろんの事、補助額の2倍を加算金として納付することになります。

制度改正直後は、水面下で様々な問題が発生するのではないかと容易に予測できます。

これらの問題に対して、マイナンバーの金融口座紐付きが、将来体に威力を発揮するのでしょう。

 

労務専門コラム 2015年介護保険制度改正編

>>①2015年 介護保険改正の骨子
>>②介護保険改正 利用者負担を1割から2割へ
>>③介護保険改正 要支援者向け予防給付の介護保険外し
>>④介護保険改正 特別養護老人ホームの新規入所を要介護3以上に
>>⑤介護保険改正 一定資産がある人の食費補助を打ち切り
>>⑥介護保険改正 高額介護費負担の上限をアップ
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