障害年金制度の基礎知識|障害基礎年金と障害厚生年金の関係は?【令和6年版】障害年金講座第1回:障害年金の基礎知識編
【令和6年版】障害年金講座を全5回に分けてお届けします。第1回の内容は「障害年金の基礎知識」です。日本の公的年金制度の中の障害年金の位置づけ、障害年金の全体像、障害基礎年金と障害厚生年金の関係、障害手当金について詳しく解説します。ご相談はページ内の「フリーダイヤル」または「メールフォーム」からお寄せください。
このコラムの推奨対象者
・障害福祉事業所の経営者または職員の方で、利用者の障害年金のサポートが必要な方
・ご自身またはご家族に障害年金の受給可能性がある方
・障害年金制度の全体像について理解したい方
日本の年金制度と障害年金の概要
初めに、日本の年金制度の全体像についてご説明します。日本の年金制度は「公的年金」と「私的年金」の2種類に大別されます。公的年金は国が社会保障制度の一環として管理運営するものです。一方、私的年金は公的年金の上乗せとして企業が独自に実施したり、個人が任意で加入するものになります。
公的年金は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3本の柱で成り立っています。このうち、障害年金は原則として20歳から65歳になるまで請求できる年金で、病気やけがで日常生活や就労に支障がある人の所得補償を目的としています。
公的年金の種類
①老齢年金:老後の生活を支える目的で一定の年齢に達すると支給される年金
②遺族年金:家計の支え手が亡くなったときに残された遺族に支給される年金
③障害年金:病気やけがが原因で障害の状態になり、日常生活や就労等が制限されるようになった場合に支給される年金
公的年金の全受給者数に対する各年金の受給者数が占める割合は、老齢年金が約88%、遺族年金が約8%、障害年金が約4%です。老齢年金の受給者数が圧倒的で、障害年金の受給者数は最も少なくなっています。
障害年金の全体像
続いて、障害年金の全体像についてご説明します。日本の公的年金は、1階部分は「国民年金(基礎年金)」、2階部分は「厚生年金」という2階建ての構造となっています。公的年金の一種である障害年金も、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類の年金からなる2階建ての制度です。
障害基礎年金・障害厚生年金は何れも障害の程度により等級が定められています。障害基礎年金の等級は1~2級、障害厚生年金の等級は1~3級に分かれており、支給される年金額や基本の年金額に付加される加算・加給年金の有無が等級毎に異なっています。
なお、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらが適用されるかは、障害の原因となった病気やけが原因で初めて診療を受けた日(初診日)にどちらの被保険者であったかによってのみ決まり、過去の加入実績等は考慮されません。
初診日に国民年金の被保険者であった人には障害基礎年金、厚生年金の被保険者であった人には障害厚生年金が支給されます。この為、例えば長年会社勤めをしていた人が体調不良により退職し、退職後に初めて病院を受診した場合は、それまで長く厚生年金の被保険者であったとしてもその病気で障害厚生年金を受給することはできず、障害基礎年金のみの対象となります。
障害基礎年金(国民年金)
ここからは年金の種類別に制度の体系をご説明します。まずは障害基礎年金です。
国民年金被保険者は属性により次の3区分に類別されていますが、日本国内在住の20歳以上60歳未満の人は国民年金への加入が法的に義務付けられている為、全ての人が障害基礎年金の対象となり得ます。
第1号被保険者
日本国内在住の20歳以上60歳未満の人のうち、自営業者、学生、厚生年金が適用されていない被用者、無職者等、第2号被保険者や第3号被保険者とならない人
第2号被保険者
70歳未満の会社員、公務員、私立学校の教職員(厚生年金の被保険者となると同時に、国民年金の第2号被保険者として扱われる。)
第3号被保険者
厚生年金の被保険者(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者
国民年金第1号被保険者と第3号被保険者は厚生年金の被保険者とはなりません。その為、初診日に国民年金第1号被保険者又は第3号被保険者であった人は、障害基礎年金のみの対象となります。
なお、障害基礎年金には、20歳より前に初診日がある病気やけが、或いは先天性の病気等により初診日に障害基礎年金の被保険者ではなかった場合であっても年金を受給できる制度が設けられています。この制度は「20歳前の傷病による障害基礎年金」と呼ばれており、障害厚生年金にはない制度です。
また、「障害基礎年金を受給する人によって生計を維持されており、18歳到達年度の年度末までにある子供(若しくは1級又は2級の障害状態にある20歳未満の子供)」がいる場合には「子の加算」が加給されます。
インターネット等を通じて障害年金制度が広く知られるようになったこと、発達障害を含む精神疾患の認知度が向上したこと等を背景に、障害基礎年金の受給者数は近年増加傾向にあります。
障害厚生年金(厚生年金)
続いて、障害厚生年金です。障害厚生年金は、会社員、公務員、私立学校の教職員として厚生年金に加入している間に初診日があれば対象となります。厚生年金の被保険者は原則として国民年金の第2号被保険者にもなることから、障害の程度が1級・2級であれば障害基礎年金も併せて支給されます。
また、障害厚生年金1級・2級の場合、その受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいると、配偶者加給年金が加算されます。なお、3級は障害基礎年金にはない等級で、配偶者がいても加算はありません。
障害厚年金の受給者数も障害基礎年金と同様に年々増加傾向にあります。
障害手当金(厚生年金)
障害の程度が1~3級に該当しない程度の障害に対しては障害手当金が支給される場合があります。障害手当金は障害厚生年金のみの制度で、厚生年金に加入している間に初診日のある病気・けがが初診日から5年以内になおり、3級の障害よりやや程度の軽い障害が残ったときに一時金として支給されます。障害手当金を支給される人の数は年金を支給される人と比べるとごく少数です。
障害年金 請求代行のお問い合わせ
第1回「障害年金の基礎知識」は以上です。タスクマン合同法務事務所では、障害年金専門の社会保険労務士が障害年金請求代行にご対応しています。障害年金の受給可能性がある方はこちらからお問い合わせ下さい。
【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
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