障害年金受給の3要件|初診日要件・保険料納付要件・障害等級該当要件【令和6年版】障害年金講座第3回:障害年金の受給要件編
【令和6年版】障害年金講座を全5回に分けてお届けします。第3回の内容は「障害年金受給の3要件」です。初診日要件・保険料納付要件・障害等級該当要件と加算額・加給年金の各要件について詳しく解説します。ご相談はページ内の「フリーダイヤル」または「メールフォーム」からお寄せください。
このコラムの推奨対象者
・障害福祉事業所の経営者または職員の方で、利用者の障害年金のサポートが必要な方
・ご自身またはご家族に障害年金の受給可能性がある方
・障害年金を受給するための要件について理解したい方
障害年金を受給するための3要件
初めに、障害年金の受給要件の全体像について解説します。障害年金は一定の障害があるというだけで自動的に受給されるものではありません。日本年金機構に対して請求手続きを行い、以下の3要件を“すべて”満たしていることが審査で認められて初めて受給が開始されます。
ここからはこの3要件を一つずつご説明します。
受給要件①初診日要件
1つ目の要件は「初診日要件」で、病気やけがの「初診日」が次の何れかの期間にあることが必要とされています。
障害基礎年金の初診日要件
①初診日が国民年金の被保険者期間中である人
②初診日が20歳前の人
③過去に国民年金に加入していた人で、初診日の時点で、60歳以上65歳未満であり日本国内に住所を有している人
障害厚生年金の初診日要件
初診日が厚生年金の被保険者期間中である人
障害年金における「初診日」とは「病名が確定した日」ではありません。「障害の原因となった傷病で初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」を指します。初診日がいつになるかを特定することは障害年金の請求にあたり最も重要な作業の一つですが、一般的に「初診日」と言われてイメージする日と障害年金で定義される「初診日」が異なり、判断を間違いやすいケースがある為、注意が必要です。
いつが初診日になるか注意が必要な事例 | 初診日となる日 | |
同一傷病で転院した場合 | ・診療を受けたが、その傷病に関する診療科や専門医による診療ではなかたっため、専門医を紹介された ・最初に受診した医院と異なる傷病名を転院先で告げられた ・最初に受診した医院での診断名は誤診で、転院先で正しい傷病名が分かった |
最初の受診先で初めて医師の診療を受けた日 |
過去の傷病が治癒して、再度傷病を発症した場合 | ・一度医学的に治癒した後、同じ病気を再発し治療を再開した(医学的治癒後に治療を再開) ・医学的に完治はしていないが、軽快と再度の悪化の間に外見上治癒していると認められる状態が一定期間継続した後、再び悪化し治療を再開した(社会的治癒後に治療を再開) |
再発後に最初に診療を受けた日 |
障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係があると認められる傷病がある場合 | ・肝炎が進展し、肝硬変に移行した ・手術等の輸血により肝炎を併発した ・肺疾患の手術を行い、その後呼吸不全が生じた ・事故または脳血管障害による精神障害がある ・ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性質壊死が生じた ・結核の化学療法による副作用として聴力障害が生じた ・糸球体腎炎、多発性のう胞腎、慢性腎炎にり患し、その後慢性腎不全を生じた ・転移性悪性新生物(がん)で原発とされるものと組織上一致するか否かを診断し、 転移であることが確認できた |
最初の傷病の診療を受けた日 |
先天性の知的障害 | ・幼少期は知的障害であることが分からず、成人してからの受診で 初めて知的障害があることが分かった | 出生日 |
発達障害 | 自覚症状があって初めて診療を受けた日 |
「初診日」は、原則、初診の医療機関による客観的な証明が必要となります。
しかし、初診日から長期間が経過してから障害年金を請求する場合等は、すでにカルテが廃棄されていたり(カルテの法律上の保管年限は「診療が完結した日から5年」)、医療機関そのものが廃院しているケース等があり、客観的な証明の入手が困難となる事例が少なくありません。
このようなケースで、初診の医療機関による証明書類が入手できない場合でも、別途の初診日証明書類を用意することで、本人が申し立てた日を「初診日」と認定する救済策が設けられています。
初診の医療機関による証明書類が入手できない場合の対応については下記のページを併せてご確認ください。
受給要件②保険料納付要件
2つ目の要件は「保険料納付要件」で、初診日がある月の前々月までに基準以上の保険料を納めていることが求められます。具体的には、下記の基準①又は②のどちらか一つを満たしている必要があります。
基準①
「初診日の前日」の段階で、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間・保険料納付猶予期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
基準②
「初診日の前日」の段階で、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと(初診日の時点で65歳未満の人に限る)。
(基準②は、①よりも緩やかな要件ですが、現時点では、初診日が令和8年4月1日前の場合のみに限られる時限的な措置です)
「初診日」ではなく「初診日の“前日”」が基準日とされているのは、保険料納付要件を満たさない人が、病気やけがをした後で障害年金受給の為に未納分を納付する、いわゆる「後出し」を認めないようにする為です。
例えば、突然大きな事故に遭い緊急搬送された場合に、家族が慌てて緊急搬送当日に年金事務所に駆け込んで未納分の保険料を納付しても、その事故での障害年金の要件としては認められません。
なお、例外的に、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不問とされています。
受給要件③障害等級該当要件
3つ目の要件は「障害等級該当要件」で、「障害認定日に障害等級に該当しているか」が審査されます。障害認定日は次の①②の何れかを指します。
障害認定日
①初診日から1年6ヶ月経過した日
②1年6ヶ月以内に治った日(症状が固定し治療効果がない状態となった日)
なお障害認定日には障害等級に該当する程度の障害になかった場合でも、その後、「65歳に達する日の前日」までの間において障害が重くなり、障害等級に該当する状態になった場合には、「事後重症請求」という形で障害年金を請求することができます。(事後重症請求については下記のページを併せてご確認ください:「第4回:請求手続き編:障害年金とは」)
加算額・加給年金額が加算される為の要件
ここで、障害年金の加算・加給年金を受ける為の条件についてご説明します。障害年金の加算・加給年金は、障害等級1級や2級の障害年金の受給権を得た時点で、受給している人に生計を維持される加算対象者がいた場合に加算されます。
既に障害年金の支給を受けている人が結婚や出生により加算・加給年金の要件を満たすことになったときには、届出によりその時点から加算が開始されます。
障害基礎年金 加算要件(受給者により生計を維持される以下の子がいる場合)
①18歳になった年の年度末(3月31日)までの子
②障害等級1級または2級の障害状態にある20歳未満の子
障害厚生年金 加給年金要件(受給者により生計を維持される以下の配偶者がいる場合)
①65歳未満の配偶者
②その配偶者の年収が850万円未満または所得で655.5万円未満であること。ただし、退職を予定している場合等、収入や所得が基準額未満となることが確実な場合は加算の対象となる。
上記の要件を満たさなくなったときは、その加算や加給年金は支給停止(権利停止)や失権(権利消滅)となります。
障害年金 請求代行のお問い合わせ
第3回「障害年金受給の3要件」は以上です。タスクマン合同法務事務所では、障害年金専門の社会保険労務士が障害年金請求代行にご対応しています。障害年金の受給可能性がある方はこちらからお問い合わせ下さい。
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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