障害年金請求の手続き|必要書類、請求の種類、認定方法は?【令和6年版】障害年金講座第4回:障害年金請求の手続き編
【令和6年版】障害年金講座を全5回に分けてお届けします。第4回の内容は「障害年金請求の手続き」です。障害年金請求のための必要書類、請求の種類、認定方法について詳しく解説します。ご相談はページ内の「フリーダイヤル」または「メールフォーム」からお寄せください。
このコラムの推奨対象者
・障害福祉事業所の経営者または職員の方で、利用者の障害年金のサポートが必要な方
・ご自身またはご家族に障害年金の受給可能性がある方
・障害年金請求のための必要書類について知りたい方
障害年金の請求に必要な書類
初めに、障害年金の請求に必要な書類をご説明します。障害年金は書類審査の為、請求者は様々な書類を準備する必要があります。必要書類のうち主なものは以下のとおりですが、請求者の状況に応じてこれら以外の書類の提出を求められる場合もあります。
請求者(本人・家族・代理人)が作成する書類 | ・障害年金裁定請求書 ・病歴・就労状況等申立書 |
医師に依頼する書類 | ・医師による診断書 ・受診状況等証明書 |
その他の必要書類 | ・年金手帳 ・預金通帳 ・戸籍謄本・住民票 等 |
これらの書類を、一般的には次の手順で準備・提出し、審査にかけることになります。
ここからは、上記書類の中でも審査上で特に重視される書類について解説します。
障害年金裁定請求書
裁定請求書は、障害基礎年金請求用と障害厚生年金請求用の2種類があり、請求に際する基本事項を記入する書類です。住所や生年月日等の基礎情報の他、年金受取機関、加算額の対象者の有無、他の年金の受給状況、年金加入記録等を記載する必要があります。
病歴・就労状況等申立書
病歴・就労状況等申立書は、障害状態を確認するための補足資料として、請求者本人(又はその家族や代理人)が作成するもので、発病から現在までの病歴・就労状況・日常生活の支障を記載します。医師の作成する診断書のような医学的・専門的な記載は必要ありませんが、本人や家族の側から見た日常生活の様子やその困難の度合いを、具体性や客観性をもって記載することが重要となります。
診断書
医師が作成する診断書は、障害年金裁定請求上、最も重要な書類です。
障害年金の審査は各種提出書類から総合的に判断されます。ただし、障害の程度は日本年金機構の認定医が医学的見地から審査・判断する為、請求者自身の申告内容よりも医学的根拠が重視されます。
診断書の項目のなかには障害の状態を記す項目だけでなく、「障害によって日常生活にどんな支障が出ているのか」「仕事上の制限」等を記載する項目があります。これらの項目を主治医に正しく評価してもらう為には、主治医に症状や生活上の問題を的確に伝えておくことが重要です。
障害の状態を正確に把握してもらうための材料や日常生活の状況をメモにして渡す等し、診断書に記載された内容と実際の状況に乖離がないようにする必要があります。
診断書は傷病の種類により8種類の書式があり、障害認定日より3ヶ月以内の現症のものが必要です。障害認定日と年金請求日が1年以上離れている場合は、直近の診断書(年金請求日前3ヶ月以内の現症のもの)も併せて必要です。診断書に併せて、レントゲンフィルムや心電図のコピー等の提出が必要な場合もあります。
受給状況等証明書
「初診日」を証明するための書類で、初診の医療機関に作成を依頼します。
ただし初診日から現在まで同じ病院を継続して受診している場合等、初診日と現在の病院が同じ場合は診断書により初診日を証明できる為、受診状況等証明書を提出する必要はありません。
ここで、初診の医療機関から受診状況等証明書を入手できない場合の対応策についてご説明します。
まずは、初診の医療機関受診後に受診した医療機関から証明を入手する手法を試みます。次のような流れで後続の医療機関から証明書類を入手することで初診日を特定・証明していきます。
上記の作業を繰り返しても初診日を証明する書類が入手できない場合は、「第三者証明」という手法を検討します。これは、「初診日当日の状況を知っている第三者による証言」を申し立てる書類(「初診日に関する第三者からの申立書」)を提出し、初診日の裏付け書類として扱ってもらう制度です。
第三者証明の第三者
・なれる人 ⇒ 医師、看護師、民生委員、病院長、施設長、事業主、隣人等
・なれない人⇒ 請求者本人の三親等以内の親族、生計維持認定対象者や生計同一認定対象者
第三者証明により請求をする場合は、「第三者からの申立書」と「初診日を合理的に推定できる具体的な参考資料」を併せて提出します。
請求の種類
続いて、障害年金の請求方法についてご説明します。請求の方法は、障害基礎年金・障害厚生年金ともに次4つに大別されます。
認定日請求
「本来請求」とも呼ばれる基本的な請求方法です。この請求は、初診日から1年6か月を経過した時点(又は1年6カ月以内にその病気やけがが治った日)の時点での診断書を取得し、その障害認定日から1年以内に請求する方法です。障害認定日時点の状態が障害認定基準に該当するか審査されます。
遡及請求
障害年金を知らなかった等の理由で、請求をしないままに障害認定日から1年以上経過してしまった場合に、障害認定日にさかのぼって請求をする方法です。過去の分の診断書(障害認定日以後3か月以内の診断書)と現在の病状の診断書の2通を添付して過去の分の年金も含めて障害年金を請求します。ただし、障害認定日が5年以上前にある場合、さかのぼれるのは時効により5年分のみとなります。
事後重症請求
障害認定日には障害等級に該当する状態ではなかったものの、その後障害の状態が重くなり障害等級に該当することとなった場合に請求する方法です。
実務上は、カルテ廃棄や廃院等により障害認定日当時に通院していた病院の診断書が使えない場合にも事後重症請求をすることがあります。
事後重症請求の場合には、必ず65歳の誕生日の2日前までに請求をしなければなりません。障害認定日請求の場合には、書類の提出の日付に関わらず、障害認定日に遡って受給権が発生しますが、事後重症請求の場合には、書類を提出した月に受給権が発生し、その翌月から障害年金が支給されます。
基準傷病請求
最初の傷病による障害では2級に該当しなかったものの、新たに後発の障害(基準障害)を併発した場合に、前後の障害を併せると初めて1級又は2級に該当する場合の請求方法です。「初めて2級請求」とも呼ばれます。
障害年金の認定方法
続いて、障害年金がどのように審査・認定されるかご説明します。提出された書類は、日本年金機構が①初診日要件、②保険料納付要件、③障害等級該当要件を満たすか否かを次の流れで審査をしていきます。
受付・点検(機構職員・委託業者)
・受付処理
・添付資料有無等の形式要件審査
・被保険者記録確認
・認定調書作成
認定審査(認定医・機構職員)
・適用する認定基準の確認
・職員による事前確認
・認定医による初診日の確認・障害等級の診査
別の認定の意見を訊いて判断する必要がある場合はセカンドオピニオン、障害認定審査委員会へ
裁定審査(機構職員)
・納付要件確認
・氏名・住所・金融機関情報等の診査
・生計維持等の確認(加算・加給年金)
・障害年金請求書に付随する他届出書の診査
裁定業務(委託業者)
・年金給付システムへ の裁定情報入力
面談による聞き取り調査、調査員の訪問、認定医による診察等は基本的になく、審査は書類に書かれた内容だけですべて判断される為、現況が伝わるように正確に書類を整えることが重要です。
障害年金 請求代行のお問い合わせ
第4回「障害年金請求の手続き」は以上です。タスクマン合同法務事務所では、障害年金専門の社会保険労務士が障害年金請求代行にご対応しています。障害年金の受給可能性がある方はこちらからお問い合わせ下さい。
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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