障害年金の対象者と支給年金額|対象者、傷病、等級ごとの年金額は?【令和6年版】障害年金講座第2回:障害年金の金額編
【令和6年版】障害年金講座を全5回に分けてお届けします。第2回の内容は「障害年金の対象者と支給年金額」です。障害年金の対象者、傷病、等級ごとの支給年金額について詳しく解説します。ご相談はページ内の「フリーダイヤル」または「メールフォーム」からお寄せください。
このコラムの推奨対象者
・障害福祉事業所の経営者または職員の方で、利用者の障害年金のサポートが必要な方
・ご自身またはご家族に障害年金の受給可能性がある方
・障害年金の対象者と支給年金額について理解したい方
障害年金の対象となる傷病
初めに、障害年金の対象となる傷病についてご説明します。障害年金の支給対象は特定の傷病に限定されるものではなく、ほとんどの病気やけがが対象となります。
眼・聴覚・肢体の障害といった外部障害の他、呼吸器疾患・心疾患・糖尿病・がん等の内部障害、統合失調症・知的障害・発達障害等の精神障害も障害年金の対象となります。ここでは代表的な傷病を例示します。
部位等 | 傷病名 | |
精神障害・知的障害 | うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、気分障害、発達障害(広汎性発達障害、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム)、アルコール依存症、知的障害、ダウン症、てんかん、高次脳機能障害、非定型精神病、若年性アルツハイマー、認知症、トゥレット症候群(チック症)など | |
内部障害 | 呼吸器疾患 | 中皮腫、肺気腫、間質性肺炎、肺結核、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、肺がん、じん肺、肺胞のう症、 気管支喘息、気管がん、気管支炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、慢性呼吸不全、酸素療法など |
循環器疾患(心疾患) | 慢性心不全、弁疾患、心筋症、心筋梗塞、狭心症、難治性不整脈、心房細動、大動脈解離、先天性心疾患、CRT、CRT-D、ペースメーカー、ICD装着 | |
腎疾患 | 慢性腎不全、ネフローゼ症候群、人工透析施行 | |
肝疾患 | 肝硬変、慢性肝炎、肝がん、肝臓移植 | |
糖尿病 | 糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽 | |
血液・造血器疾患 | 難治性貧血、血小板減少性紫班病、凝固因子欠乏症、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、HIV | |
悪性新生物(がん) | がんそのものによる障害、がんによる全身の衰弱、がん治療により起こる全身衰弱 | |
高血圧症 | 降圧剤非服用下で最大血圧140mmHg以上最小血圧90mmHg以上の高血圧 | |
その他疾患 | 人工肛門・新膀胱造設、遷延性意識障害、その他の難病 | |
外部障害 | 眼 | 白内障、緑内障、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、視野狭窄眼球委縮、網膜脈角膜委縮、 網膜はく離、両錐体ジストロフィー、黄斑変性症、レーベル視神経症、ベーチェット病(眼に症状が出る場合)、多発性硬化症(眼に症状が出る場合)、外傷性網脈絡破裂・眼球破裂、低酸素脳症による失明など |
聴覚 | 感音性難聴、特発性難聴、メニエール病、真珠腫性中耳炎、音響外傷、内耳障害、失語症、咽頭腫瘍、上顎腫瘍、咽頭がん、舌腫瘍、舌がん、外傷性鼻科疾患、咽頭摘出や脳梗塞による言語機能の消失など | |
鼻腔機能 | 感音性難聴、特発性難聴、メニエール病、真珠腫性中耳炎、音響外傷、内耳障害、失語症、咽頭腫瘍、上顎腫瘍、 咽頭がん、舌腫瘍、舌がん、外傷性鼻科疾患、咽頭摘出や脳梗塞による言語機能の消失など |
|
平衡機能 | ||
そしゃく・嚥下機能 | ||
音声又は言語機能 | ||
肢体 | 腕や脚あるいは手足、指の欠損、関節の障害、偽関節、ジストニア、上肢・下肢障害、脳梗塞・脳出血後遺症、脳血管疾患、脳腫瘍、脳挫傷、頭部外傷後遺症、脊髄小脳変性症、頚椎症性脊髄症、頸髄損傷、パーキンソン病、脊柱管狭窄症、筋ジストロフィー、ヘルニア、関節リウマチ、人工関節、人工骨頭、変形性股関節症、膝関節屈曲位拘縮、脳性麻痺、頚椎性麻痺、腰椎分離すべり症、大腿骨頭壊死、上肢・下肢・指の切断、糖尿病性壊疽、糖尿病性神経障害、多発性骨髄腫、多発性硬化症(肢体に症状が出る場合)、線維筋痛症、多系統萎縮症(オリーブ小脳萎縮症)、アルコール性末梢神経障害、脳脊髄液減少症、ポリオ、ポストポリオ、膠原病、ジストニア、ミトコンドリア脳筋症、筋委縮性側索硬化症(ALS)、脊柱管狭窄症、骨肉腫(骨のがん)、ミエロパチー、ビュルガー氏病、ホジキン病、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、胸椎黄色靱帯骨化症、後縦靭帯骨化症など |
近年の障害年金裁定の傾向
近年の障害年金の新規裁定件数をみると、受給者の割合が最も多いのは「精神障害・知的障害」で、全体の約65%を占めています。
障害年金の認定対象とされる精神疾患
・統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
・症状性を含む器質性精神障害(高次機能障害を含む)
・てんかん
・知的障害
・発達障害
また、令和元年からの3年間の推移を見ると、内部障害や外部障害の支給件数(新規裁定件数)がほぼ横ばいであるのに対し、精神障害・知的障害の支給件数が大きく伸びています。
障害年金の認定対象外(人格障害・神経症)
あらゆる傷病を対象とする障害年金ですが、 例外として「人格障害・神経症」については、「原則として障害年金の認定の対象とならない」とされています。その為、たとえこれらの症状が重く長期間に渡って日常生活や就労に支障が出ていたとしても、現在の制度上は原則障害年金の受給はできません。
障害年金の認定対象外とされる人格障害の例
パーソナリティ障害(妄想性、シゾイド、統合失調型、反社会性、境界性、演技性、自己愛性、回避性、依存性、強迫性)、病的賭博(ギャンブル依存症)、性同一性障害
障害年金の認定対象外とされる神経症の例
恐怖症性不安障害(広場恐怖症、社会恐怖症等)、恐怖症性(パニック)障害、全般性不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、解離性障害、身体表現性障害、摂食障害
ただし、神経症については、「臨床症状から判断して統合失調症等の精神病の病態を示しているもの」は対象となるケースがあります。
障害年金の等級
ほとんどの傷病を対象とする障害年金ですが、一方で、民間のがん保険のように傷病名が確定しただけで受給できるものではありません。これは、障害年金が「病気やけがそのもの」を対象にしているのではなく、「病気やけがが原因で日常生活や就労に困難が生じている人」を対象としている為です。
この為、障害年金では、「病気やけがにより日常生活や就労にどの程度支障があるか」という困難の度合いが等級の判断基準となります。どのような状態のときに障害年金のどの級の対象になるかは、日本年金機構が定めた「障害年金認定基準」を指標として判定されます。
「障害年金認定基準」は等級認定の基準を体の部位ごとに細かく定めている為、認定のポイントはそれぞれの傷病により異なりますが、その基本となる考え方は以下のとおりです。
等級 | 障害状態の目安 |
1級 | 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方。 |
2級 | 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害。家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)。入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方。 |
3級 | 労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方。 |
障害年金の対象者
続いて障害年金の対象者についてご説明します。障害年金は、保険料の納付状況や病気やけがの発生時期に関する一定の要件を満たした人が、「障害年金認定基準」に照らした際に障害等級に該当すると認められた場合に支給されます。受給要件については下記のページを併せてご確認ください。
障害年金は、障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保険福祉手帳・療育手帳)と混同されがちですが、これらはそれぞれ異なる制度です。したがって、障害者手帳の交付基準と障害年金の認定基準は異なるものであり、障害者手帳の交付を受けていない人でも障害年金の対象となり得ます。
一方で、逆に障害者手帳の交付を受けていても障害年金は受給できないケースもあります。また、等級分けも異なる為、例えば、3級の障害者手帳を持っている人が自動的に障害厚生年金3級に該当するという訳ではありません。
また、障害年金は就労していると受給できないと誤解されることがありますが、「障害年金受給者実態調査(令和元年)」によると、障害年金の受給者の就業率は約35%であり、およそ3人に1人は働きながら障害年金を受給しています。
ただし、就労の有無が審査にほとんど影響を及ぼさない傷病が多数ある一方で、がんや精神疾患等、就労の有無が審査に影響を及ぼすものがあります。申請しようとしている傷病毎に必ず確認が必要です。
障害年金の金額
続いて、障害年金の支給金額について解説します。障害年金の支給金額は等級によって異なり、それぞれの金額は年度(4月から翌年3月)ごとに見直されます。
障害厚生年金1級・2級の場合は、同時に障害基礎年金1級・2級に該当する為、「障害基礎年金1級・2級の金額」と「障害厚生年金1級・2級の金額」を合わせた金額が支給されます。
障害基礎年金は加入期間の長さ等にかかわらず、上記の金額が一律に支給額されます。
一方、障害厚生年金は、加入期間や過去の報酬の額等に応じて支給額が変わります。障害厚生年金の支給額の計算式は以下のとおりです。
障害厚生年金額の算定式
【1級】 (報酬比例部分の年金額)× 1.25 + 〔配偶者の加給年金額〕
【2級】 (報酬比例部分の年金額)× 1.00 + 〔配偶者の加給年金額〕
【3級】 (報酬比例部分の年金額)
報酬比例部分の計算式
報酬比例部分= A + B
A:平成15年3月以前の加入期間:
平均標準報酬月額(※1)×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数
B:平成15年4月以降の加入期間:
平均標準報酬額(※2)×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
(※1)平均標準報酬月額:平成15年3月以前の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額。
(※2)平均標準報酬額:平成15年4月以降の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額。
障害年金 請求代行のお問い合わせ
第2回「障害年金の対象者と支給年金額」は以上です。タスクマン合同法務事務所では、障害年金専門の社会保険労務士が障害年金請求代行にご対応しています。障害年金の受給可能性がある方はこちらからお問い合わせ下さい。
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
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