成年後見制度|法定後見のしくみ、任意後見のしくみ、制度改正の内容

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タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。介護保険制度と同時にスタートした、成年後見制度が大きな転換点を迎えています。今回のコラムでは成年後見制度をテーマに取り上げ、法定後見のしくみ、任意後見のしくみ、制度改正の内容について詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・法定後見のしくみについて理解したい方
・任意後見のしくみについて理解したい方
・制度改正の内容について理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで965社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【成年後見制度】をテーマに取り上げ、法定後見のしくみ、任意後見のしくみ、制度改正の内容について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
成年後見制度の概要
はじめに、成年後見制度の概要について解説します。成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分となった方を法的に支援する仕組みであり、2000年に介護保険制度と同時に施行されました。
介護保険の導入により、福祉サービスの利用方式が、行政処分による「措置型」から、利用者が自ら事業者を選ぶ「契約型」に転換されました。判断能力が低下した方が自ら契約を締結するのは困難であるため、本人の権利を擁護する制度として、成年後見制度が整備されたという経緯があります。
制度は「法定後見」と「任意後見」の2つに分かれます。法定後見は、判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選任する制度です。一方、任意後見は、判断能力が十分なうちに本人が後見人を選び、公正証書で契約しておく制度です。


法定後見人には代理権と取消権とが与えられます。ただし日用品の購入などは取消しの対象外です。これは、日常生活に不可欠な行為まで取り消せるとすると本人の自立した生活が成り立たず、また取引関係も混乱するためです。
一方、任意後見人には代理権のみが認められ、取消権は与えられません。これは、任意後見が本人の自由意思による委任契約を基礎とする制度であり、委任の法理論からは取消権が導かれないためです。そのため、悪質業者に狙われた場合、任意後見だけでは十分な防御壁とならず、法定後見への移行が必要となる場面が生じ得ます。
法定後見制度
続いて、法定後見制度について解説します。申立権者は本人、配偶者、四親等内親族、市区町村長などです。管轄は本人の住所地の家庭裁判所です。申立実費の総額は、概ね1万~1万5,000円程度です。鑑定が必要な場合は5万~10万円が追加されますが、鑑定の実施率は約3.8%にとどまっています。審理期間は約7割が2か月以内に終了しており、以前に比べて迅速化が進んでいると言えます。
法定後見には「後見」「保佐」「補助」の3類型があります。


後見は判断能力を欠く常況にある方が対象で、後見人に包括的代理権と取消権が与えられます。保佐は判断能力が著しく不十分な方が対象で、重要な法律行為について、保佐人に同意権・取消権が与えられます。補助は判断能力が不十分な方が対象で、補助人に対して個別に権限が設定されます。
なお、補助開始には本人の同意が必要です。これは、補助の対象者は相当程度の判断能力を保持しており、本人の意に反して制度を強制的に開始することは自己決定権の尊重に反するためです。
後見人の報酬は家庭裁判所が審判で決定します。


東京家庭裁判所の公表目安では、管理財産額1,000万円以下で月額約2万円、1,000万円超5,000万円以下で月額3万~4万円、5,000万円超で月額5万~6万円とされています。ただし、これは法令上の統一基準ではない点にご留意ください。
任意後見制度
続いて、任意後見制度について解説します。契約は公証役場で公正証書により締結します。実費総額は概ね2万~3万円程度です。後見人は親族、友人、専門家、法人など自由に選択できます。判断能力が低下した際に、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てることで契約が発効します。
実務では、見守り契約と財産管理委任契約を任意後見契約と組み合わせる「移行型」が広く用いられています。


見守り契約で判断能力低下の兆候を早期に把握し、適切な時期に監督人選任を申し立てる体制を構築できるためです。さらに死後事務委任契約を加えることで、本人の死亡後の事務まで一貫してカバーすることが可能です。
ただし、移行型の場合、受任者が意図的に任意後見への移行を遅らせるリスクがある点が指摘されている点にも注意が必要です。
制度改正の展望
続いて、制度改正の展望について解説します。令和6年12月末時点の制度利用者数は約25万人で、その内訳は成年後見70.6%、保佐21.6%、補助6.6%、任意後見1.1%です。認知症高齢者・知的障害者・精神障害者等を合わせた潜在的ニーズは推計約1,300万人に上ると言われており、実際の利用者割合は2%に留まります。


利用が進まない要因としては、一度始めると本人死亡まで終了できないこと、後見人報酬の継続的な負担、後見人を自ら選べないことへの不安が挙げられます。後見人による不正も深刻であり、令和6年の不正件数は188件、被害額は約7億9,000万円に達しています。
こうした課題を受け、2026年2月、法制審議会は要綱を法務大臣に答申しました。要綱では以下の内容が提案されています。
主な答申内容
①後見・保佐・補助の3類型を「補助」に一本化すること
②制度の途中終了を認めること
③法定後見と任意後見の併存を容認すること
④任意後見における監督人選任の申立権者を拡張すること
その他の課題
最後に、関連する2つの論点について解説します。
1点目は、成年後見人の医療同意権の問題です。後見人は民法第858条に基づく身上配慮義務を負いますが、現行法では医療行為への同意権があるか明確に規定されておらず、身寄りのない高齢者の医療現場で日常的に問題が生じています。立法的な対応が求められている分野です。
2点目は、成年後見制度利用支援事業です。この事業は、介護保険法に基づく地域支援事業と、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業の2つの制度を根拠として、各市町村において実施されており、申立費用や後見人報酬の助成などが行われています。ただし、自治体間の格差や事業の周知不足が課題として残っています。
まとめ
今回のコラムでは成年後見制度について解説しました。法定後見のしくみ、任意後見のしくみ、制度改正の内容についてご理解いただけたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
- (いのうえ ごう)
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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