介護・障害福祉事業所における個人情報保護|SNS投稿のトラブル事例、保護されるべき個人情報の内容、個人情報保護法の改正

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タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。介護・障害福祉事業所には数多くの個人情報が存在しますが、管理体制は適正でしょうか?今回のコラムでは介護・障害福祉事業所における個人情報保護をテーマに取り上げ、SNS投稿のトラブル事例、保護されるべき個人情報の内容、個人情報保護法の改正について詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・SNS投稿のトラブル事例について理解したい方
・保護されるべき個人情報の内容について理解したい方
・個人情報保護法の改正について理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで972社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【介護・障害福祉事業所における個人情報保護】をテーマに取り上げ、SNS投稿のトラブル事例、保護されるべき個人情報の内容、個人情報保護法の改正について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
SNS投稿のトラブル事例
はじめに、介護・障害福祉の現場で実際に社会問題となったSNS投稿のトラブル事例について解説します。
事案1
事案1では、訪問介護員が、個人ブログに利用者の認知症の症状や日常動作の困難さを投稿したもので、裁判所がプライバシー侵害と名誉毀損を認定し、事業者に130万円の損害賠償を命じています。
事案2
事案2では、入浴介助中の高齢者を動画撮影しSNSで共有した職員の行為が虐待と認定され、事業所に改善勧告が出されました。
ここで特に注意すべきは、業務連絡用のLINEグループであっても、投稿が「外部提供」や「尊厳侵害」に該当し得るという点です。
事案3
事案3では、特養入所者のオムツ姿をLINEで職員に送信した行為が心理的虐待・性的虐待と認定されました。
事案4
事案4では、障害福祉事業所の利用者の排せつ中の写真を業務連絡用LINEグループに投稿し、市が行政指導を行っています。
「閉鎖型のグループだから問題ない」「仲間内だけだから大丈夫」という認識は、法的には通用しない点に注意が必要です。
他業界でも同種の問題は起きています。
他業界
コンビニエンスストアや飲食チェーン店において、アルバイトスタッフが勤務時間中に店内で不適切な動画を撮影し、SNSに投稿した結果、炎上して苦情が殺到し、多額の営業損失が発生した事例は記憶に新しいところです。
ただし、福祉現場と他業界には決定的な違いがあります。それは、対象者が自ら権利を主張することが困難な方であることが多い点、そして、情報が漏えいした場合に利用者の生活の安全そのものが脅かされる点です。
保護されるべき個人情報とは何か
続いて、個人情報保護法における「個人情報」の定義と、福祉現場で特に注意すべきポイントについて解説します。
個人情報とは?
個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、個人を特定できるものを指します。氏名や住所だけでなく、要介護度、ケアプラン、介護記録、病歴、服薬情報なども、すべて個人情報に該当します。
なお、氏名を伏せた情報であっても、他の情報と容易に照合して個人を特定できる場合は、個人情報として扱われます。例えば、「要介護5、90歳代、〇〇町在住」という情報だけでも、地域が狭ければ個人の特定につながります。研修や事例検討でケースを紹介する際、氏名を消しただけでは匿名化にならない場合がある点にもご留意ください。
要配慮個人情報とは?
病歴や障害の有無など、不当な差別や偏見につながり得る情報は「要配慮個人情報」として特別な保護を受けます。介護サービスや障害福祉サービスを受けていること自体も、要配慮個人情報に該当します。
例えば、写真に利用者の顔と送迎車両のロゴや施設の外観が写り込めば、その方が要介護状態や障害のある方だと分かります。介護・障害福祉の現場では、常に要配慮個人情報と隣り合わせだと考えて対応する必要があります。
あわせてご注意いただきたいのが、「撮影の同意」と「投稿の同意」はまったく別であるという点です。ご家族から撮影の同意を得ていたとしても、それはSNSへの掲載や広報パンフレットへの使用を含むものではありません。
広報掲載、研修利用、第三者提供などの目的ごとに、同意を分離して取得することが求められます。加えて、同意の撤回手続もあらかじめ定めておく必要があります。
個人情報保護法改正
最後に、令和8年度に予定されている個人情報保護法の改正について解説します。個人情報保護委員会は、令和8年1月9日に制度改正方針を公表しました。以下の解説は、この改正方針に基づくものである点にご留意ください。
内容は主要12項目で構成されていますが、介護・障害福祉事業所に特に関係する3項目を抜粋して解説します。
罰則の強化
1点目は、罰則の強化です。まず、加害目的での個人情報の提供行為が新たに処罰対象に加わります。
現行法
現行法では、名簿を売って金銭を得るような「不正な利益を図る目的」での提供だけが処罰対象でした。
改正後
改正後は、利用者への嫌がらせや勤務先とのトラブルに対する報復として情報を漏らす行為も、刑罰の対象となります。
次に、不正な手段による個人情報の取得そのものに対しても、直接の罰則が新設される見込みです。
現行法
現行法では、取得段階には罰則がなく、その後の情報漏えいのみが対象でした。
改正後
改正後は取得の時点で刑罰が科されることになります。
また、法定刑自体も引き上げられます。
「個人関連情報」の不適正利用の禁止
2点目は、「個人関連情報」の不適正利用の禁止です。
現行法
現行法では、不適正利用や不正取得の禁止は「個人情報」のみが対象であり、電話番号やメールアドレスなど、それ単体では個人を特定できない、いわゆる「個人関連情報」には及ばない場合がありました。しかし、電話番号がわかれば直接連絡が取れますし、住所がわかれば訪問もできます。
改正後
改正後は、こうした「特定の個人に働きかけが可能となる情報」についても、不適正な利用や不正な取得が禁止される見込みです。
子どもの個人情報に係る規制の強化
3点目は、子どもの個人情報に係る規制の強化です。
現行法
現行法には、子ども固有の個人情報保護の規定がほとんどありません。
改正後
改正後は、16歳未満の個人情報について、同意取得や通知の対象を法定代理人とすることが明文化される見込みです。
放課後等デイサービスや児童発達支援事業所では、利用契約書や各種同意書の見直しが必要となります。
まとめ
今回のコラムでは介護・障害福祉事業所における個人情報保護について解説しました。SNS投稿のトラブル事例、保護されるべき個人情報の内容、個人情報保護法の改正についてご理解いただけたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
- (いのうえ ごう)
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
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