労働時間の定義と把握義務|タイムカード打刻と労働時間の関係、訪問サービスに伴う移動時間、労働時間の把握義務に関する罰則

労働時間の定義と把握義務コラムサムネ
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。労働時間の把握は事業者の義務ですが、何が労働時間に当たるのか正しく理解していますでしょうか?今回のコラムでは労働時間の定義と把握義務をテーマに取り上げ、タイムカード打刻と労働時間の関係、訪問サービスに伴う移動時間、労働時間の把握義務に関する罰則について詳しく解説します。

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・タイムカードと労働時間の関係について理解したい方
・訪問サービスに伴う移動時間について理解したい方
・労働時間の把握義務に関する罰則について理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで974社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【労働時間の定義と把握義務】をテーマに取り上げ、タイムカード打刻と労働時間の関係、訪問サービスに伴う移動時間、労働時間の把握義務に関する罰則について詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

労働時間の把握義務

はじめに、労働時間の把握義務の法的根拠について解説します。労働基準法そのものには労働時間の把握義務を定める直接の条文は存在しません。しかし、法定労働時間を定める第32条、割増賃金を定める第37条、賃金台帳の記録を定める第108条、記録の保存を定める第109条などの規定を遵守するためには、使用者が労働時間を正確に把握していることが大前提となるため、労働基準法においても事実上の労働時間の把握義務があると解されています。

01労働基準法における労働時間把握

さらに、2019年4月施行の働き方改革関連法により、労働安全衛生法が改正されました(第66条の8の3を新設)。この改正は、医師の面接指導を適切に実施するため、事業者は労働者の労働時間の状況を、客観的な方法で把握しなければならないと定めたものです。具体的には、タイムカードやパソコンの使用時間の記録等とされています(安衛則第52条の7の3)。

ここで重要なのは、事業所の管理監督者、裁量労働制の適用者、固定残業代の支給対象者であっても、労働時間の把握は必須であるという点です。厚生労働省が平成29年1月に策定したガイドラインでも、すべての労働者に対する適正な労働時間管理の責務を明記しています。

労働時間の把握義務から除外されるのは、高度プロフェッショナル制度の適用者のみであり、具体的には投資会社のファンドマネジャー等が、条件付きで認められる場合に限定されます。

何が労働時間に当たるのか

続いて、何が労働時間に当たるのかについて解説します。最高裁は以下の通り基準を示しています。

最高裁

労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指し、就業規則等の形式的な定めではなく客観的に判断される(三菱重工長崎造船所事件)

この基準に照らすと、事業所内で制服に着替える必要がある場合には、着替え時間も労働時間に該当します。朝礼や研修に関しても、参加義務がある場合や、参加しないと一定の指導注意や処罰を受ける場合には、労働時間に該当すると考えられます。

ここで、訪問系の介護・障害福祉サービスについて、訪問介護を例にとって考えます。

02訪問介護における労働時間と休憩時間

訪問介護においては、利用者宅間の移動時間は、その途中に完全に業務から離れる自由時間を除いて、労働時間に該当します。

次の訪問までの間に生じる空き時間は、一般的に「待機時間」や「手待ち時間」と呼ばれますが、この時間は、使用者からの連絡に応答する義務がある場合、すなわち使用者の指揮監督下にあれば労働時間に該当します。一方、完全に業務から解放され自由に利用できる時間であれば、休憩時間として扱われます。

報告書の作成時間も、業務上義務付けられている場合は労働時間に該当します。介護記録や業務日誌の作成を自宅に持ち帰る場合も同様です。これらの時間を労働時間および賃金の対象に含んでいない場合は、未払賃金の発生に直結しますので注意が必要です。

なお、タイムカード打刻後、業務を開始せず飲食・雑談を行っている時間は労働時間ではありません。退勤打刻前の飲食・雑談も同様です。ただし、タイムカードで労働時間管理を行っている事業所では、原則としてタイムカード打刻時刻が労働時間であると推定されます。使用者がこの推定を覆すには、客観的な反論の証拠が必要となります。

労働時間の把握方法

続いて、労働時間の具体的な把握方法について解説します。ガイドラインは、始業・終業時刻の確認方法として二つの原則的方法を定めています。

労働時間の把握方法(ガイドライン)

1. 使用者が自ら目で確認し出勤簿に記録する方法

2. タイムカード、ICカード、パソコンのログ等の客観的な記録を基礎として確認する方法

『使用者が自ら』というのは、一見非常にアナログですが、法律上、「労働時間の把握は使用者の義務」とされているため、この義務を果たすためには、労働者の出勤と退勤を、自ら確認する必要があると考えられているわけです。ただし、それにも限界があるため、タイムカード、ICカード、パソコンのログ等「仕組に頼る」という方法が示されています。

一方、労働者本人による自己申告制は、客観的把握が困難な場合にのみ認められる例外的方法です。自己申告制は残業申告の躊躇に繋がる恐れがあるためです。

なお、賃金台帳、タイムカード等の帳簿保存期間は、法令上は5年間(当分の間3年)です。

罰則

最後に、罰則について解説します。労働時間の把握を行わず、その結果として医師の面接指導を実施しなかった場合には、50万円以下の罰金が科されます。賃金台帳、タイムカード等の記入義務違反は30万円以下の罰金の対象です。帳簿の保存義務違反も同様です。

法定労働時間、つまり1日8時間・1週40時間を超えて労働させた場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という重い罰則が科されます。

03労働時間に関する罰則

とはいえ、法定労働時間を超える状況が生じる場合もあり、そのために必要となるのが、いわゆる36協定の締結と届出です。つまり、36協定には、法定労働時間違反の刑事罰を免除する効果があります。

ただし、36協定は、割増賃金の支払義務そのものを免除するものではありません。36協定によって適法に時間外労働をさせた場合であっても、使用者は必ず割増賃金を支払わなければなりません。この点にご注意ください。

まとめ

今回のコラムでは労働時間の定義と把握義務について解説しました。タイムカード打刻と労働時間の関係、訪問サービスに伴う移動時間、労働時間の把握義務に関する罰則についてご理解いただけたかと思います。

介護障害福祉事業の会社設立・指定申請開業相談_税理士社労士顧問契約相談ヘッダー

会社設立・運営をサポート!

タスクマン合同法務事務所では、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化した社労士、税理士、行政書士、司法書士がお客様を強力にバックアップしています。詳細は画像をクリックしてご確認下さい。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538