変形労働時間制|変形労働時間制と残業の関係、3種類の変形労働時間制、導入手続きと注意点

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スクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。変形労働時間制を導入すれば残業代の支払いが不要になると誤解していませんでしょうか。今回のコラムでは変形労働時間制をテーマに取り上げ、変形労働時間制と残業の関係、3種類の変形労働時間制、導入手続きと注意点について詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・変形労働時間制と残業の関係について理解したい方
・3種類の変形労働時間制について理解したい方
・導入手続きと注意点について理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで981社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【変形労働時間制】をテーマに取り上げ、変形労働時間制と残業の関係、3種類の変形労働時間制、導入手続きと注意点について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
変形労働時間制とは何か
はじめに、変形労働時間制の意味について解説します。労働基準法は、1日8時間・1週40時間という法定労働時間の原則を定めています。しかし、介護・障害福祉事業、製造業、小売業など、仕事の量が日や月によって大きく変動する現場では、この原則を厳格に適用すると非効率が生じます。閑散期に余剰時間が発生する一方で、繁忙期には恒常的な残業が必要になるためです。
ここで活用できるのが変形労働時間制です。変形労働時間制を法律に基づいて定義すると次のようになります。
変形労働時間制
一定期間を平均して週あたりの労働時間が40時間以内に収まる限り、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることを認める制度
分かりやすく言うと、原則的な法定労働時間が1日8時間・1週40時間という綺麗な長方形の枠であるのに対して、例外的位置づけである変形労働時間制は、その面積つまり総枠を変えないことを前提に、いびつな形を取ることができるわけです。


つまり、業務の繁閑に合わせて労働時間の配分を柔軟にする仕組みであると言えます。
根拠規定は、1カ月単位が労働基準法第32条の2、1年単位が第32条の4および4の2、1週間単位が第32条の5です。詳細は後ほど解説します。
なお、変形労働時間制を導入すれば残業代を払わなくてよくなる、という考え方は大きな誤りです。変形労働時間制で定めた所定労働時間を超える場合や、変形期間の法定労働時間の総枠を超える場合には、通常どおり25%以上の割増賃金の支払義務が生じます。この点にご留意ください。
3種類の変形労働時間制
続いて、3種類の変形労働時間制について解説します。先ほど、変形労働時間の前提は、1日8時間・1週40時間の面積、つまり総枠を変えないことであるとご説明しました。
この総枠を測る期間の違いに応じて、1年単位、1カ月単位、1週間単位の3種類の制度が用意されています。法定労働時間の総枠は、40時間に対象期間の暦日数を掛けて7で割る計算式で算出されます。例えば、31日の月であれば177.1時間、30日の月であれば171.4時間が総枠となります。種類ごとに活用例をお示しします。
1カ月単位の変形労働時間制
介護事業所で最も広く導入されている制度です。他の2つの種類と異なり、1日の労働時間に法定上限がないため、特養やグループホームにおける、いわゆる16時間夜勤のシフトに対応できます。介護以外では、病院の看護師交代制や警備業、コンビニエンスストアの24時間体制などで活用されています。
1年単位の変形労働時間制
1年間という長い期間で見たときに、時期によって繁閑の差がある業務に適しています。介護では報酬改定期における事務作業の集中への対応などが活用場面です。ただし、1日の上限が10時間のため、夜勤には対応が困難です。一般事業では、製造業の季節生産や建設業の年度末工事集中が代表例です。
1週間単位の変形労働時間制
対象業種が常時30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店に限定されています。介護事業は保健衛生業に分類されるため、事業所の規模にかかわらず、この制度を適用することはできません。
このほかにもフレックスタイム制がありますが、この制度は、始業・終業の時刻を労働者自身が決める制度であり、使用者が労働時間を配分する変形労働時間制とは性質が異なります。介護サービスでは、利用者の生活リズムに合わせたケア提供や、人員配置基準の遵守が求められるため、フレックスタイム制の導入は極めて困難であると言えます。
制度の導入手続き
続いて、制度の導入手続きについて解説します。1カ月単位は、就業規則への記載のみで導入でき、労使協定の締結は任意です。手続きの簡便さという点で、3つの制度の中で最も優れています。
これに対し、1年単位と1週間単位は、いずれも労使協定の締結が必須であり、過半数代表との書面合意が求められます。
労働基準監督署への届出は、1年単位と1週間単位は事業場規模を問わず必須です。1カ月単位は、労使協定を締結した場合はその届出が必要となりますが、就業規則への記載により導入する場合、常時10人以上の事業所では就業規則の変更届のみで足り、10人未満の事業所では届出不要です。
シフトの確定時期については、いずれの制度を採用する場合でも予め労働日と労働時間、つまり勤務シフトを確定して通知する必要があります。つまり『変形労働時間の総枠で働けば残業が生じない』のではなく、『予め決定した変形勤務シフト内で働けば残業が生じない』という意味です。ここが最も誤解が生じやすい点ですのでご注意ください。
対象労働者の範囲は、いずれの制度でも職種や部署ごとに限定することが可能です。ただし、妊産婦が請求した場合は、変形労働時間制の適用にかかわらず、1日8時間・週40時間を超えて労働させることはできません。この点にもご留意ください。
制度導入時の留意点
最後に、制度導入時の留意点について解説します。変形労働時間制の運用においては、残業代の計算が1日、1週、変形期間全体の3段階判定となり、通常の残業代計算と比べて格段に複雑になります。計算ミスは賃金未払いという法令違反に直結するため、変形労働時間制に対応した勤怠管理システムの導入をご推奨します。
繰り返しになりますが、変形労働時間制を導入しても、残業代を払わなくてよくなるわけではありません。介護施設では急な欠勤対応や利用者の急変対応など、計画した勤務シフト外の労働が日常的に発生します。これらはすべて時間外労働として割増賃金の対象となります。
このことを踏まえると、介護事業所で推奨できる場面は限定的です。1カ月単位は入所系施設の夜勤対応に、1年単位は事務部門の季節変動に導入余地がありますが、1週間単位は対象業種外のため適用できません。


罰則についても確認します。制度の要件不備により無効と判断された場合、通常の法定労働時間制が適用され、8時間超・40時間超のすべての時間に対して割増賃金が発生します。違反には6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます。さらに裁判所は、労働者の請求により、未払額と同額の付加金の支払いを命じることができます。実質的に支払額が2倍になるリスクがある点にも、ご留意ください。
まとめ
今回のコラムでは変形労働時間制について解説しました。変形労働時間制と残業の関係、3種類の変形労働時間制、導入手続きと注意点についてご理解いただけたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
- (いのうえ ごう)
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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