令和9年度介護報酬改定|職場環境改善と生産性向上|介護人材採用に関する都道府県の支援、生産性向上に関する加算項目の見直し、カスハラ対応の義務化

職場環境改善と生産性向上_コラムサムネ
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。このシリーズでは令和9年度介護報酬改定を複数回に分けて深掘りしていきます。今回取り上げるのは【主要4テーマの第3、職場環境改善と生産性向上】です。介護人材採用に関する都道府県の支援、生産性向上に関する加算項目の見直し、カスハラ対応の義務化について詳しく解説します。

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・介護人材採用に関する都道府県の支援について理解したい方
・生産性向上に関する加算項目の見直しについて理解したい方
・カスハラ対応の義務化について理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで996社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【主要4テーマの第3、職場環境改善と生産性向上】をテーマに取り上げ、介護人材採用に関する都道府県の支援、生産性向上に関する加算項目の見直し、カスハラ対応の義務化について詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

介護人材確保の現状と課題

はじめに、介護人材確保の現状と課題について解説します。厚生労働省の集計によると、介護人材の必要数は、2040年に約272万人に達し、2022年と比べて約57万人もの新たな確保が必要とされています。

01介護人材必要数2040年

一方で、実際の介護職員数は、その2022年から減少に転じています。介護関係職種の有効求人倍率も、2025年9月時点で4.02倍と、全職業の1.10倍を大きく上回る水準です。

国はこれまで様々な対策を講じてきました。しかし、他産業が大幅な賃金改善を進める中、介護分野の処遇改善が十分でなければ、さらなる人材の流出を招きかねないとの懸念が示されています。以下では、介護人材の確保と職場環境の改善に焦点を当てて、解説を続けます。

福祉人材確保協議会の設置

続いて、福祉人材確保協議会について解説します。

人材確保の課題には地域差や地域固有の問題があるため、都道府県が主体となり、地域の関係者が協働して課題解決に取り組むための福祉人材確保協議会を設置することとされました。

協議会には、市町村、ハローワーク、福祉人材センター、養成施設、職能団体などが参加し、福祉人材センターがコーディネーター的役割を担うことが想定されています。

02福祉人材確保協議会

ここで注目されるのが、福祉分野における有料職業紹介の利用割合が、全産業平均と比べて高い水準にあるという点です。有料職業紹介事業者に支払う紹介料が経営の圧迫要因となっているという課題についても、福祉人材センターがコーディネーターの役割を担うことにより、一定程度緩和されることが期待されます。

職場環境改善、生産性向上に関する制度改正

続いて、職場環境改善、生産性向上に関する制度改正について解説します。

介護現場の生産性向上のためには、テクノロジー等を活用してタスクシフトやタスクシェアを進め、業務負担の軽減により生み出した時間を、直接的なケアや職員の福利厚生などに充てる取組が重要となっています。

実際に、令和7年6月の「省力化投資促進プラン」では、2040年に向けて介護分野全体で20%の業務効率化を目標とし、2029年度までの5年間で集中的な支援を行うこととされました。今後も、職場環境改善と生産性向上は、介護経営の重要なテーマであり続けることが想定されます。

そこで以下では、厚生労働省の審議会で議論されているテーマに基づき、令和9年度の介護制度改正の方向性を、5つの項目に絞って確認していきます。

①生産性向上に関する加算項目

1点目は、生産性向上に関する加算項目です。具体的には、処遇改善加算の区分ロ、ならびに施設介護における生産性向上推進体制加算の再評価、介護助手の活用やタスクシフトを評価する加算項目など、新たな評価の仕組みが追加される可能性が考えられます。

介護給付費分科会の資料においても、見守りセンサーの導入により、夜勤職員一人あたりの対応時間が平均で約17分減少し、介護記録ソフトの導入により、職員一人あたりの記録業務時間が平均で約6分減少したとのエビデンスが報告されています。

②LIFE関連加算の再評価

2点目は、LIFE関連加算の再評価です。LIFE関連加算の届出は、施設系で約70%、通所・居宅系で約40%にとどまっていることが課題として認識されています。そのため、LIFE関連加算の要件見直しや、対象サービスの拡大を含めた再評価が行われる可能性があります。

③カスタマーハラスメント対応の義務化

3点目は、カスタマーハラスメント対応の義務化です。これまでもセクハラ・パワハラへの対応が義務付けられてきましたが、令和7年6月に成立した改正労働施策総合推進法により、新たに、全ての事業主に対して、カスハラの防止措置が義務付けられました。これにともない、運営基準においても、カスハラへの対応が義務化される見込みです。

④社会福祉連携推進法人制度の活用促進

4点目は、社会福祉連携推進法人制度の活用促進です。事業者が協働して行う職場環境改善への支援は、現在12都道府県にとどまっており、さらなる取組が求められています。事業者間の連携・協働化の代表的な施策である社会福祉連携推進法人制度については、現在認められていない訪問介護等の第二種社会福祉事業を、地域の福祉ニーズを充足できていない場合等に実施可能とする見直しが行われる見込みです。

あわせて、構成法人間で土地・建物等の貸付支援業務を、新たに実施できるようにすることとされています。

⑤自治体のローカルルールの解消

5点目は、自治体のローカルルールの解消です。行政手続や提出書類、人員配置等における自治体のローカルルールは、事業者の生産性を阻害する要因となっていることが指摘されてきましたが、引き続き、その解消と標準化が進められる見込みです。

以上の5項目は、令和9年度の介護制度改正における大きなテーマになることが予測されますので、引き続き注目が必要です。

まとめ

今回のコラムでは主要4テーマの第3、職場環境改善と生産性向上について解説しました。介護人材採用に関する都道府県の支援、生産性向上に関する加算項目の見直し、カスハラ対応の義務化についてご理解いただけたかと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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