【令和6年度法改正対応】重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書|ひな型様式ダウンロード可!|訪問介護の開業講座⑦

【令和6年度法改正対応】重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書|ひな型様式ダウンロード可!|訪問介護の開業講座⑦
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第7回のテーマは「重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書」です。それぞれの内容を詳しく解説しつつ、ひな型様式のダウンロード先もご案内します。

このコラム推奨対象者

・訪問介護の重要事項説明書、運営規程、契約書について理解したい方
・重要事項説明書、運営規程、契約書のサンプル(ひな型)をダウンロードしたい方
・訪問介護利用契約書の収入印紙について理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数70名、累積顧客数は北海道から沖縄まで777社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは訪問介護事業所の重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書について詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

訪問介護事業の重要事項説明書

初めに訪問介護事業所の重要事項説明書について解説します。

重要事項説明書は、訪問介護サービスの提供に先立って、利用者または家族に交付して説明するための、契約上の重要ポイントを記載した文書です。

ワードファイルやPDFファイル等で提供することも認められていますが、その場合には事前に利用者または家族の同意が必要です。

01訪問介護の従業事項説明書の事前提供

重要事項説明書の記載事項は、

・運営規程の概要
・訪問介護員の勤務体制
・事故発生時の対応
・苦情処理の体制
・第三者評価の有無等

であり、利用者または家族に交付して説明する場面以外にも、常に事業所の見やすい場所に掲示するか、またはいつでも自由に閲覧できるデータファイルで保存しておく必要があります。

訪問介護の「重要事項説明書」サンプル(ひな型様式)がダウンロードできる行政庁

また令和7年4月1日からは、重要事項説明書を自社のWEBサイトまたは厚生労働省が管理する「介護サービス 情報公表システム」に掲載する義務が生じます。

02令和7年4月から重要事項説明書をWEB公開する義務

次の項目では、重要事項説明書の記載事項のうち、特に詳細の検討が必要となる、事業所の「運営規程」について詳しく見ていきます。

訪問介護事業の運営規程

ここでは訪問介護事業所の運営規程について解説します。訪問介護事業所の運営規程に記載が必須とされる内容は、9項目あります。1つずつ確認します。

事業の目的及び運営の方針

1点目は事業の目的及び運営の方針です。事業所運営上のポリシー、経営理念等を具体的に記載します。

職員数、職種、職務内容

2点目は職員数、職種、職務内容です。管理者、サービス提供責任者、訪問介護員のそれぞれについて、常勤と非常勤に区分した上で、その人数と職務内容を記載します。稼働する職員は日々変動するため、具体的な人数を記載する必要はなく、「何名以上」とすることが認められています。

営業日と営業時間、サービス提供時間

3点目は営業日と営業時間、サービス提供時間です。営業時間とは事業所が開いている時間帯を指し、サービス提供時間とは訪問介護サービスの提供が可能な時間帯を指します。仮にサービス提供を24時間体制で行う場合は、「24時間対応」等と記載します。

訪問介護の内容

4点目は訪問介護の内容です。身体介護と生活援助について、それぞれの具体的な内容を例示して記載します。

通常の事業の実施地域

5点目は通常の事業の実施地域です。市区町村単位で記載しますが、あくまでも目安であるため、実施地域を超えてサービス提供をしてはならない、というわけではありません。逆に実施地域内の利用申し込みについては、原則としてサービス提供を拒否することができないため、現実的な範囲で記載しましょう。

利用料金

6点目は利用料金です。3年に1度の報酬改定に伴って利用料金が変動するため、仮に運営規程に具体的金額で利用料金を記載してしまうと、3年ごとに運営規程の変更届を提出する必要性が生じます。そのため運営規程には「介護報酬告示上の額による」と記載するのが一般的です。

交通費

7点目は、交通費です。先に説明した「通常の事業の実施地域内」の交通費については、訪問介護報酬の単位数の中に含まれる、との考え方に立つため、利用者に交通費を請求することはできません。

そのため、ここでは「通常の事業の実施地域外」の交通費を記載します。「実施地域を超えてから1kmあたりいくら」といった計算式を記載するのが一般的です。

03通常の事業の実施地域を超えた場合交通費請求が可能に

緊急時等における対応方法

8点目は緊急時等における対応方法です。訪問介護サービスの提供中に、利用者の体調に急変があった場合等に、主治医・管理者・ケアマネジャー・家族等へ連絡する旨を記載します。

虐待防止措置

最後に9点目、虐待防止措置です。令和6年4月の運営基準改正により、虐待防止に関する取り組みが義務化されました。具体的には、

・対策検討委員会の定期開催
・虐待防止指針の整備
・研修の定期実施
・虐待防止担当者配置

などです。虐待防止措置を講じていない事業所には1%の未実施減算が行われるため注意が必要です。運営規程には事業所が取り組む虐待防止措置の「概要」を記載する必要があります。

以上9項目が訪問介護事業の運営規程の必須記載事項となります。この他、事業所が重要と考える項目を記載し、運営規程を完成させます。

訪問介護の「運営規程」サンプル(ひな型様式)がダウンロードできる行政庁

勤務体制・勤務形態一覧表

続いて勤務体制・勤務形態一覧表について解説します。

訪問介護事業所は、職員の職種、日々の勤務時間、常勤・非常勤の区別、他職種との兼務関係を、1カ月単位の勤務表として作成する必要があります。

04勤務表(1カ月単位)

指定申請の際には、開業1カ月目の「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」を作成し、添付する必要がありますが、その様式と同等レベルのものを毎月作成しなければならないわけです。

先に説明した通り、重要事項説明書と運営規程にも「職員の勤務体制」を記載する必要がありますが、重要事項説明書と運営規程には職員の氏名まで記載する必要はなく、職員数、職種、職務内容、常勤・非常勤の人数の記載までで問題ありません。

訪問介護の「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」サンプル(ひな型様式)がダウンロードできる行政庁

重要事項説明書の交付と説明義務

続いて重要事項説明書の交付と説明義務について解説します。

ここまで見てきた通り、重要事項説明書には運営規程の内容を中心に記載します。

訪問介護事業者は、サービス提供に先立って利用者または家族に、重要事項説明書を交付して説明を行い、同意を得る必要があります。

重要事項説明の後、実際の契約締結へ進む場合には、利用者または家族が事前に重要事項説明書の内容に同意した事実を記録として残すべきことが、解釈通知で推奨されています。

具体的には、

・重要事項説明書の説明年月日
・説明を行った事業者の名称と担当職員の氏名

を記載した上で、利用者が署名します。利用者による同意・署名が難しい場合には、同居家族などの代理人が同意・署名する等の方法も考えられます。なお、押印は省略可能である旨が、国により示されています。

このような方法によって、訪問介護事業者は確かに重要事項説明書を交付し説明した記録を残しておくわけです。

なお、重要事項説明書の交付・説明場面を含め、訪問介護事業者は訪問介護員に身分証を携帯させる必要があります。具体的にはネームプレートや名刺等に、所属事業所名、職名、氏名等を記載する方法が考えられます。

訪問介護サービス利用契約書

続いて、訪問介護サービス利用契約書について解説します。

介護保険法、施行規則、施行令、運営基準いずれにおいても、訪問介護サービス利用契約書の締結について定める条項は存在しません。

しかし、運営指導の際に確認を受ける「確認文書一覧」の中に「利用契約書」が含まれることから、事実上契約書は必須文書であると理解すべきでしょう。

訪問介護サービス利用契約書には、契約期間、契約内容、サービス利用料金、契約解除条件などを記載します。

訪問介護の「サービス利用契約書」サンプル(ひな型様式)がダウンロードできる行政庁

訪問介護サービス利用契約書の収入印紙

本編の最後に、訪問介護サービス利用契約書の収入印紙について解説します。

訪問介護サービス利用契約書は、「訪問介護計画」に従って、利用者が適切なサービス提供を受けるために作成されます。したがって印紙税の課税文書における請負契約の定義である、

当事者の一方が仕事の完成を約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う

という性格を持ちません。

以上のことから、訪問介護利用契約書は印紙税の課税文書に該当せず、収入印紙を貼る必要はない、との結論になります。

まとめ

「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第7回は「重要事項説明書、運営規程、訪問介護利用契約書」について解説しました。それぞれのひな型様式のダウンロード先もご案内していますので、併せてご参照下さい。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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