【令和6年度法改正対応】運営指導(実地指導)に備えて記録保存!訪問介護計画、サービス提供記録等|訪問介護の開業講座⑧
タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第8回のテーマは「訪問介護事業者の記録保存義務」です。訪問介護計画、サービス提供記録、身体的拘束記録、利用者に違反があった場合の通知記録、苦情記録、事故発生記録等について詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・訪問介護事業者の記録保存義務について理解したい方
・運営指導の際に確認される文書記録のポイントを理解したい方
・介護報酬管理システムの概要を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数72名、累積顧客数は北海道から沖縄まで785社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは訪問介護事業所の訪問介護計画、サービス提供記録、身体的拘束記録、利用者に違反があった場合の通知記録、苦情記録、事故発生記録について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
記録保存義務の全体像
初めに、訪問介護事業者の記録保存義務の全体像について解説します。
個別の内容については後ほど順を追って見ていきますので、ここでは全体像を理解してください。合計6項目あります。
訪問介護事業者の記録保存義務の全体像
①訪問介護計画
②サービス提供記録
③身体的拘束記録
④利用者に違反があった場合の通知記録
⑤苦情記録
⑥事故発生記録
いずれも2年間の保存義務があります。運営指導の際に確認を受けますので、ここから先の解説に従ってしっかりと記録し、保存してください。
訪問介護計画
ここでは訪問介護計画の保存義務について解説します。
訪問介護計画とは、訪問介護事業所のサービス提供責任者が利用者ごとに作成する、サービス提供計画です。ケアマネジャーが作成するケアプランに沿って作成します。
訪問介護計画には、援助の方向性、訪問介護員の氏名、提供するサービス、所要時間、日程など具体的項目を記載します。
訪問介護計画はケアプランとの整合性を図る必要があるため、ケアプランの内容と比較して、過不足がないように作成し、保存する必要があります。
サービス提供記録
続いて訪問介護事業所のサービス提供記録について解説します。
近年、介護報酬管理システムが進歩し、訪問介護員が持つスマートフォンと事業所のシステムが連動する方式が普及しつつあるため、それらを前提に解説します。
まず訪問介護員はスマートフォンにより、訪問先住所や時刻、申し送り事項等を確認します。訪問先では体温、血圧などの記録に始まり、入浴・排せつ・食事等の身体介護の実施記録、調理・洗濯・掃除等の生活援助の実施記録を、スマートフォンにより行います。
全ての訪問介護員が、スマートフォンによるサービス提供記録を行うことで、訪問介護事業所にそのデータが集約されることになります。
事業所のシステムでは、個々の利用者について、支給限度基準額の残額、保険給付の額、利用者負担額等を記載した、サービス提供票の別表が自動生成されます。
ここで解説したサービス提供記録とサービス提供票別表については、利用者の求めに応じて情報提供する必要があります。
紙のサービス提供記録に比べて、職員の事務作業時間を大幅に短縮することができるため、当社でも介護報酬管理システム導入をご推奨しています。詳しく知りたい方はご遠慮なくご相談下さい。
身体的拘束の記録
続いて身体的拘束の記録について解説します。
訪問介護は利用者の生活空間でのサービス提供であることから、身体的拘束を行うという状況が想定されておらず、運営基準にも明記されていませんでしたが、令和6年度の運営基準改正で、訪問介護事業所における身体的拘束についての規制が運営基準に明記されました。
身体的拘束を行うことができる要件として、3点定められています。
①切迫性 (差し迫った状況であること)
②非代替性(身体的拘束を行う以外に方法がない)
③一時性 (臨時的な措置であり常態化させない)
これら3つの要件を満たした場合に限り、身体的拘束を行うことができますが、実施する場合にはこれらの要件を満たすことを記録し、かつ実際の拘束の状況についても詳しく記録し、保存する義務があります。
利用者に違反があった場合の通知記録
続いて、利用者に違反があった場合の通知記録について解説します。
市町村等の保険者は、介護保険法第22条により「不正行為によって保険給付を受けた利用者からは、保険給付額を徴収する」ことができます。
また第64条により、「犯罪行為または介護サービスに関する指示に従わずに、要介護度を悪化させた者に対しては保険給付を制限する」ことができます。
このようなケースに該当する利用者に関して、訪問介護事業者は意見を添えて、保険者である市町村へ通知し、その通知記録を保存する義務があります。
苦情処理に関する記録
続いて、苦情処理記録について解説します。
訪問介護事業者は、重要事項説明書に苦情処理窓口、連絡方法、苦情対応方法などを記載し、常に事業所の見やすい場所に掲示するか、またはいつでも自由に閲覧できるデータファイルで保存しておく必要があります。
また令和7年4月1日からは、苦情処理体制を含む重要事項説明書を自社のWEBサイトまたは厚生労働省が管理する「介護サービス情報公表システム」に掲載する義務が生じます。
このような制度の下、実際に利用者または家族から苦情を受け付けた場合には、具体的な苦情内容を記録し保存する義務があります。
事故発生時の対応記録
最後に、事故発生時の対応記録について解説します。
訪問介護サービスの提供中に事故が発生した場合、市町村・家族・ケアマネジャーへ必要な連絡を行い、適切な事故対応を行った上で、事故の内容と実際に採った対応について記録する義務があります。
このような事故に備えて、予め損害賠償保険に加入する等の対策をとり、事故発生時には速やかに損害賠償を行う必要があります。
まとめ
「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第8回は「訪問介護事業者の記録保存義務」について解説しました。訪問介護計画、サービス提供記録、身体的拘束記録、利用者に違反があった場合の通知記録、苦情記録、事故発生記録についてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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