介護・障害者福祉事業の設立 決算月を決める

1.決算月の設定に制約はありません

良く聞く「決算セール」。12月や3月が多いですね。しかし商法・会社法・税法では決算月についての制約はありません

上場会社に12月や3月決算が多いのは、いわゆる総会屋対策であると言われています。

一定の条件を満たせば、だれでも定時株主総会(以下総会)に参加できるため、上場会社の総会に出席して様々な要望、無理難題を投げかける方々があり、一般的に総会屋と呼ばれます。(場合によっては、金銭を要求する場合もあります)

しかしいわゆる総会屋も、同日にいくつもの総会に出席することは出来ないため、上場会社は揃って12月や3月に決算月を設定し、定時株主総会の実施日も統一して足並みを揃えるのです。

株式(出資)の保有が外部の第三者に渡っていない中小企業の場合、総会屋対策をする必要性が無いため、決算月に制約は殆どないわけです。

2.設立日と決算月の関係に注意しよう

例えば5月を決算月に設定する例で検討します。毎年6月1日~5月31日の期間の収支で決算申告することになります。

しかし設立1期目に限っては、以下の事例のようになるため注意が必要です。

【5月決算法人 設立1期目の決算事例】
①法人設立日が10月10日の場合 10月10日~5月31日の収支で決算

②法人設立日が3月20日の場合   3月20日~5月31日の収支で決算
③法人設立日が5月15日の場合   5月15日~5月31日の収支で決算

③の場合などは設立して15日間の活動収支でいきなり決算申告を迎えるわけです。多大な労力がかかりますね。

と考えると、決算月の設定は、実際の法人設立日から1年近く先で設定するのが効率的だといえます。

なお、法人設立日はすなわち、法務局への登記申請日です。(年末年始、土日祝等を除く開庁日)

大安や何らかの記念日を狙って登記申請する方が多いです。

登記簿謄本(登記事項証明書)に記載される項目の多くは後日変更が可能ですが、いったん法人が成立した後は、法人設立日の変更はできません。

3.納税資金の確保に注意しよう

会社を運営する場合、避けて通れないのが納税資金。主な納税である法人税は、決算月から2ヶ月後の月末に納める必要があります。

さらにその納税から半年後には、中間納税として前年実績に応じた法人税を前倒しで納税する必要があります。

3月決算法人の例で示すと、次のようになります。

【3月決算法人の法人税】
 5月・・・法人税(本申告) 3月+2カ月
11月・・・法人税(中間申告)5月+6カ月

次に大きな納税としては、従業員に支払う給与から源泉徴収する、源泉所得税

原則としては給与支給日の翌月10日に納税する必要がありますが、従業員数が10名未満の場合、「源泉所得税の納期の特例」の届出を行うことで、源泉所得税の納付を1月20日と7月10日にまとめる事が出来ます。

整理しましょう。3月決算法人の納税資金必要時期をまとめると、次のようになります。

【3月決算法人の納税時期】
 1月・・・源泉所得税
 5月・・・法人税(本申告)
 7月・・・源泉所得税
11月・・・法人税(中間申告)

上手く納税月が分散できますね。

しかし決算月は任意であるため、検討不足で決算月の設定をすると次のような現象が起こり得ます。

【5月決算法人の納税時期】
1月・・・源泉所得税、法人税(中間申告)
7月・・・源泉所得税、法人税(本申告)

 

【11月決算法人の納税時期】
1月・・・源泉所得税、法人税(本申告)
7月・・・源泉所得税、法人税(中間申告)

 

1月、7月に極端な資金難に陥ることが予測されるため、5月決算と11月決算は避けたほうが良いでしょう。

 

介護・障害者福祉事業の設立 資本金を決める

(資本金制度のない社団法人に関しては考慮不要です)

1.消費税の課税問題は考慮しなくても大丈夫

法人を設立して1期目、2期目の消費税は、たとえ顧客から消費税を受け取ったとしても、納税の義務がありません

ただし、資本金が1000万円以上の場合は、その特例が適用されず、設立1期目から消費税の納税義務が生じます。

しかし介護・障害者福祉事業におけるメインの売上げ(介護報酬)はそもそも消費税の課税対象外であるため、消費税の問題を気にする必要性がないのです。

2.財務諸表(貸借対照表)への影響に注意する

上場会社と異なり中小企業の場合、一度資本金を出資すると、原則としてそれを取り戻す術がありません。

例外的に可能な場合と言えば、あなたの出資金(株式)を誰かが全部または一部を買い取ってくれる場合などです。

参考までにオーナー(=経営者)が会社の運転資金を補う方法としては、次の2つがあります。

【運転資金の補い方】
資本金(増資)・・・会社から返還するのは手続き上困難
役員借入金・・・会社に資金余裕が出ればいつでも返還可能

役員借入金というのは、会社から見た場合の表現です。つまり、「会社が役員からお金を借りている」という状態です。

資本金は財務諸表(貸借対照表)で言うと、次の部類に位置づけられます。(単位千円)

 

資産の部 負債の部
現金・預金 1,000 買掛金・未払金 1,000
売掛金・未収入金 300 銀行借入金 3,000
前払金・仮払金 20    
車両 2,500 負債合計 4,000
土地建物 5,000 資本の部
貸付金 100 資本金 5,000
権利金 300 繰越利益 520
敷金 300 資本合計① 5,520
資産合計 9,520 負債・資本合計② 9,520

会社の繰越利益とともに資本合計①が会社の底力を表します。ここがマイナスになるといわゆる債務超過です。

①÷②を自己資本比率と呼び、高い=底力があり、安定しているという指標になります。

事例では①5520千円÷②9520千円=57.9%。非常に良好です。(30%以上が望ましい)

 

一方で、設立時に資本金を1000千円しか入れなかったため、途中で資金が不足するケースを想定します。

4000千円をオーナー(経営者)が負担した場合の財務諸表(貸借対照表)は次のようになります。

資産の部 負債の部
現金・預金 1,000 買掛金・未払金 1,000
売掛金・未収入金 300 銀行借入金 3,000
前払金・仮払金 20 役員借入金 4,000
車両 2,500 負債合計 8,000
土地建物 5,000 資本の部
貸付金 100 資本金 1,000
権利金 300 繰越利益 520
敷金 300 資本合計① 1,520
資産合計 9,520 負債・資本合計② 9,520

自己資本比率は、①1520千円÷②9520千円=15.9%となり、先の事例に比べ大幅に低下することが分かります。

結論として、十分な必要資金額を予測して、資本金の設定を行うことが望ましいと言えます。

>>初期投資・運転資金に関してはこちらもご参照下さい。

 

介護・障害者福祉事業の設立 出資者と役員を決める

1.法人の支配、最高意思決定者に注意する

株式会社、合同会社では出資者、社団法人では理念に賛同する人(社員と呼びます)が最高意思決定者です。

実務運営上の意思決定は、後で述べる役員や代表者が行うわけですが、その役員自体を選ぶ権限が出資者(社団法人では社員)にあります。

意思決定は通常「2分の1以上」「3分の2以上」の議決で可決するため、なるべく主たる経営者とその親族で3分の2以上の比率を確保しましょう。

なお、設立時の出資者・社員は定款に記載する必要がありますが、事後的にも変更できます。出資者・社員の氏名が外部に公開されることはありません。

2.役員の給与に注意する

役員(取締役や理事)は、前述の最高意思決定機関である出資者・社員によって選ばれます。その中から代表者が選ばれるわけです。

注意が必要なのが役員の給与。税務上では役員報酬と呼びます。役員報酬は原則として、1年間固定です。

意図的な増減により、会社に残る利益コントロール(納税コントロール)を制限するためです。

また賞与を支給しても構いませんが、役員の賞与は経費に落ちないため、中小企業では役員賞与は支給しません。

よって、しっかりとした業績予測を行い、完全固定で給与を設定する必要があるのです。

なお、非常勤役員に給与(役員報酬)を設定することも可能ですが、役割に対してあまりに高額な設定をすると、税務上否認される恐れがあります。

3.一般社団法人の収益課税問題に注意する

(収益法人である株式会社・合同会社に関しては考慮不要です)

まずは下の図をご覧下さい。

   一般社団法人 株式会社 合同会社
非営利法人 普通法人
法人税課税 収益事業課税 全所得課税

 

一般社団法人のうち、非営利型と認定される法人は、収益事業課税つまり、外部から得る収益を①収益事業、②非収益事業に分け、①収益課税のみに課税されます。

逆にいうと、一般社団法人(普通法人)、株式会社、合同会社などは外部から得る全ての収益に課税される全所得課税となります。

では、簡単に非営利型に認定される要件と、非収益事業の例をご説明しましょう。

【非営利型に認定される要件】
①親族など、特殊関係にない理事が3名以上(名義だけ借りるのはNG)
②剰余金の分配禁止を定款で定める
③解散したとき、残余財産を国等に帰属させる

 

【非収益事業の例】
①助成金・補助金
②会費・寄付金
③障害者が半数以上を占める事業

 

介護保険事業における介護報酬は、次の通り通達が出ており、収益事業であると定められています。

【介護サービス事業に係る法人税法上の取扱いについて(法令解釈通達)】

課法2ー6 平成12年6月8日

当庁は、公益法人等が行う介護サービス事業は、照会に係る事業内容等を前提とすれば、法人税法施行令第5条に規定する収益事業に該当する旨回答しました。

 

役員の構成をうまく工夫すれば、就労移行支援・就労継続支援の事業で法人税非課税を目指せるかもしれませんね。

 

労務専門コラム 介護・障害者福祉 設立編

>>①介護・障害者福祉事業所の法人設立手続き
>>②会社設立形態 法人の種類と比較一覧表
>>③設立法人の種類を比較しよう
>>④会社設立~会社名称、本社住所、事業目的を決めよう
>>⑤会社設立~決算月、資本金、出資者、役員を決めよう
>>⑥会社設立後に必要な届出手続き
>>⑦障害者作業所 就労移行支援・就労継続支援(A型B型)
>>⑧就労移行支援、就労継続支援(A型B型)の事業者要件
>>⑨雑記 宗教法人と非営利型社団法人の比較
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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)